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炎の技卵……想い人と結ばれます 水の技卵……健康的な一年になります 風の技卵……風が吹き荒れます 光の技卵……商売繁盛します 闇の技卵……悩み事が解決します 無の技卵……白紙のおみくじに願いを刻め
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あなたにはディバインゲートが見えていたのね。母は大切にしまっていた甲型ドライバ【イグナイト】をアカネに手渡した。やっぱり、親子ね。それじゃあ、行ってらっしゃい。そして炎の少年のディバインゲートを目指す長い旅路は始まったのだった。
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少年は真実を拒み続けていた。ディバインゲートが見えたという事実さえも。だが、そんな少年に気がついた男がいた。そして水の少年は刀型ドライバ【ワダツミ】を受けとる覚悟を決めたとき、ディバインゲートを目指す長い旅路が始まるのだった。
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少女は信じていた。ディバインゲートへ行けば、もう一度会うことが出来ると。だってあの日、私にはディバインゲートが見えたんだから。風の少女は棍型ドライバ【フォンシェン】を手に、ディバインゲートを目指す長い旅路を走り出したのだった。
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お守りのように大切にしていた剣型ドライバ【リュミエール】が放つ光。そして、少女には見えた。その眩い光の果てのディバインゲートが。この光を辿れば、いつか。そして光の少女は、ディバインゲートを目指す旅路へと光に導かれたのだった。
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少女の最古の記憶、それは目の前のディバインゲート。そして手にしていた鎌型ドライバ【アビス】から感じる懐かしさは、更に古い記憶である気がしてならなかった。その答えを知る為に、闇の少女はディバインゲートを目指す旅路を始めたのだった。
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ディバインゲートが見えたかもしれない。だがそんなことは少年にとって、どうでもいい話だった。道端に転がっていた斧型ドライバ【ヤシャヒメ】を振り回す毎日。無の少年がディバインゲートを目指す旅路、それはやり場のない思いの行き先だった。
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明けまして、おめでとうございますっ。家族の団欒、少女が浮かべた無邪気な笑顔。テーブルの上に伸ばした手。狙いはオレンジ色のみかん。あんまり食べ過ぎると、手が黄色くなっちゃうわよ。そこには、確かに、どこにでもある家族の輝きがあった。
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午前0時、少女は窓辺から月を見上げていた。どうしてかしら、私の知っているお月様は、こんな色じゃなかった気がするの。だが、そんな少女の思考をかき消した声。にゃあ。この部屋は冷えるわ。少女は猫を抱え、コタツで一緒に丸くなっていた。
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右から金、銀、銅、そんな三つの色の頭が並んだ夜の道。そして、その真ん中の少年は、自分が真ん中にいることに疑問を覚え始めていた。兄のように面倒見がいいわけじゃない、弟のように可愛げがあるわけじゃない、じゃあ自分はなんだろうか、と。
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ほら、お前にお届けものだよ。その日、ジンソクはいつものように配達をしていた。ふんっ、呑気な奴だな。そんな言葉を返したのは同胞でもある神、ダンテ。そして、この時ジンソクはまだ知らなかった。自分の身に訪れていた完全なる不幸を。
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度重なる仕事を終え、家路を辿っていたジンソクは、ふと立ち上る煙に気がついた。なんだ、焼き芋か。それか、焼き鯖だな。食べ物のことで頭はいっぱいだった。そして、この時ジンソクはまだ知らなかった。自分の身に訪れていた完全なる不幸を。
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ついにジンソクは気がついた。なんだ、あの煙は俺ん家の方じゃん。珍しいな、BBQなんて。そう、まだジンソクの頭の中は食べ物のことでいっぱいだった。そして、この時ジンソクはまだ知らなかった。自分の身に訪れていた完全なる不幸を。
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ようやく辿り着いた自宅。だが、そこは家と呼ぶには変わり果て過ぎていた。なんでだ。ジンソクには崩壊した教団本部という現実を受け入れることが出来なかった。そして、この時ジンソクは知ることとなる。自分の身に訪れていた完全なる不幸を。
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目深にかぶりなおした帽子。俺の服が、俺の飯が、俺の寝床が。そこには何も残ってはいなかった。溢れ出る涙を、帽子などで隠せるわけもなかった。そして、この時ジンソクは実感することとなる。自分の身に訪れていた完全なる不幸を。
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自分の部屋だった場所で膝を抱えるジンソク。どうしたらいいんだよ。いつもより風通しがいい、いつもの居場所。そう、風を遮る壁など残ってはいなかった。だが、そんなジンソクの背後から声が聞こえた。ここは風通しがいい部屋だな、ベイベ。
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お前には、ここが部屋に見えるのか。ジンソクは振り返らずに問いかける。風が教えてくれたぜ、お前の思い出をな。二人の間を流れたのは心地よい風。一曲歌わせてくれないか、ベイベ。かき鳴らすギター、響き渡る歌声、廃墟はステージへと変わる。
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観客は一人。だが、それでも風のバラードを歌い上げたウィンディ。だから元気だせよ、ベイベ。そんな歌に笑顔を取り戻したジンソク。なんとかなりそうな気がしてきた。オレの歌はどうだい、ベイベ。そしてジンソクは笑顔で答えた。へたくそだな。
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起きてもらえるかな。起きてます。寝てるよね。寝てません。もう、立ちなさい。立ってます。終わりのない押し問答。横たわったままのイッテツ。その隣で呆れ返る精参謀長。こうなったら、奥の手を使うしかないわね。そして部屋に咲き誇る蓮の花。漂う目覚めの香り。わかったってば。そして二人の会話は始まった。
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で、ワシになんの用だ。受け答えを始めたイッテツ。あなたの後輩たちも、持ち場に着きはじめたわ。その一言は、彼の意識を引くのに不十分だった。じゃあ、みんなに任せよう。呆れた精参謀長は部屋を後にした。そして、来客の去った部屋で、彼は一人立ち上がる。が、すぐに座った。やっぱり、みんなに任せよう。
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イコかな、ネヌかな。それはただの好奇心。うーん、でも、どっちでもいいや。水聖人の興味の対象は、すぐに違うものへ移り変わっていた。だけど、せっかくだから手伝ってよ。そして、彼女は助手として迎え入れられた。やっぱり、助手といえばワトソンだよね。だが、それが勘違いであることに気付いていなかった。
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そっか、助手じゃなかったんだね。だが、それはどうでも良かった。着々と改造が施される大きな尻尾。これは機械かな、それとも尻尾かな。それもまた、どうでもいいことだった。先生、最近働きすぎですよ。心配の絶えないワトソン。だが、水聖人は楽しそうだった。だってほら、戦争には新兵器が必要になるでしょ。
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行動をすれば、そこには必ず隙が生じる。そして、男はとある結論に達した。それなら、動かなければよいのではないか、と。始まった引き篭もり生活、衰える体力。いや、ワシは力を温存しているだけだ。それは、ただの引き篭もりの言い訳だった。
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ハッピーバレンタイン。それは一年に一度、ヒカリにとって大切な日。そんな日をみんなで過ごそうと、チョコ作りにいそしんでいた。きっと、私は幸せなんだ。少女がこぼした一言。それは純粋な言葉であり、そして誰かに似た一言だった。私はみんなを連れて行きたい、幸せな世界へ。たとえ、絶望が待っていても。
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誕生日を祝ってくれる人がいる。それはどれだけ幸せなことだろうか。少女はそれを知っていた。だからこそ、そんな少女の隣には一人の男がいたのだった。嬢ちゃん、教えてやってくれよ。生まれたときから世界の敵なヤツなんて存在しない、って。
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天界に響き渡る警戒音、発せられた避難勧告。だが、その勧告が届き渡ることなく、辺境の街は終わりを告げた。燃え上がる炎が消えたとき、そこに伸びた影は赤い頭巾。戦場に現れたのは、民を引き連れた女王ではなく、兵を引き連れた将だった。私は私の日常を取り戻す。そう、そこには紅炎魔将アカズキンがいた。
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私があなたを止める。紅炎魔将の前に立ち塞がった美炎精将ヘレネ。そして、彼女が説くのは解消された歪な平和と、いまの天界の在り方。だが、そんな言葉は届きはしない。私たちの女王の考えは、理解出来ないでしょうね。じゃあ、なんのために。動き出した聖戦、その裏にはいくつもの思惑が存在していたのだった。
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しばらくウチに泊まりな。竜神と共に訪れた竜界、風咎棍士はキャリバンの道場に身を寄せていた。伝えられたのは聖王奪還の失敗、魔界から天界への進軍、各世界の往来手段の封鎖。だけど、私がここにいたら。想いを馳せたのは離れ離れの友達。だが、その想いを遮った一言。いまのキミに、なにが出来るのかな。
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世界と世界の争いに、民は口を挟めない。風咎棍士が気づかされた己の無力さ。キミはどちらかを選べるのかな。詰まる言葉。だけど、ウチの王様は不在なんだ。だから探してきてよ、出来損ないのアイツの本当の姿を。告げられた希望。それに、彼女ももう一度会いたいみたいだしさ。そこには、懐かしい笑顔があった。
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差し出した一通の封書。坊ちゃんは誰の差し金だ。その問いに答えることもせず、男は姿を消した。文通なんざ、趣味じゃねぇっての。その封書を開くことなく破り捨てた男。そして、そんな姿を見届けたデオンは再び夕闇へと溶ける。やっぱりあなたって人は、そういう人なんですね。その言葉は喜びにも似ていた。
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無事に届けてくれたのね。魔参謀長から受け取った報酬。これは仕事だから。そんな言葉を残し、不夜城を後にした密者デオン。その足で向った屋敷。で、奴の様子はどうだった。伝えた一部始終。それでこそ、王の秘密機関だ。サングラス越しの瞳、葉巻を咥えた口元、そんな彼もまた、満足気な笑みを浮かべていた。
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竜道閣はかつて、竜界の脅威と恐れられた綴られし存在が封じられし場所だった。だが、綴られし存在に罪があるのだろうか。それは後任の竜王が説いた優しさ。そしてまた、その裏の真意は、竜王家でもごく僅かな者にしか伝えられていなかった。
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トレーニングを終え、自室へと戻ってきたギンジの目の前にはケーキが置かれていた。そういや、忘れてたわ。そう、今日は四年に一度のギンジにとって大切な日。だが、少年はすぐに違和感に気がついた。このケーキ、生臭ぇな。そして、ソファの後ろに隠れた人影に気づかないフリをして、そっと呟いた。ありがとな。
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こうやって、俺たちは歳をとっていくんだな。少年は離れ離れの仲間へ想いを馳せていた。一緒に過ごした時間は決して長くはない。だが、そこには確かな絆があった。そして、そんな少年の元に現れた神の威を狩る狐。それじゃ、そろそろ始めようか。
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進軍、開始。不思議の国の全勢力が従うのは、王という地位を捨て、戦場へと降り立った蒼水魔将アリスだった。それでも彼らが彼女に付き従うのは、地位ではなく、彼女そのものへの信頼。さぁ、パレードを始めましょう。響き渡る歓喜は悲鳴、兵隊が閉ざす退路。閉じ込められた多くの妖精。楽しんでもらえるかな。
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蒼水魔将の前へと立ち塞がった美水精将オノノコマチは問う。なぜ、誰も殺さない。天界の辺境の街は氷で閉ざされた。だが、そこに住まう妖精は誰一人、命を落としてはいなかった。それは紅炎魔将が焼き払った街も同様に。そして、その問いへの返答。善悪を生死に重ねる、キミたちがそんな浅はかな考えだからだよ。
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統合世界に紛れ込んだ男、ミスター☆ディバイン。彼のツイッターフォロワー数が10万人を突破した。何故なら、彼の職業は四次元広報だったからだ。そして『趣味はプリントシール機』という初期設定があったことを覚えている者はいるだろうか。
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決して勘違いしてはならない。10万人のフォロワーが求めているのは、ミスター本人のプリントシールではなく、ミスターが発表する新情報だということを。だが、本日に限り、ツイッターにて最新のプリントシールがアップされることは間違いない。
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ミスターは深く傷ついていた。どうして、私を求めてはくれないのだ。そして、ついには闇へと手を伸ばしていた。そんな想いは彼をエビル☆ディバインへと生まれ変わらせた。ふっ、これで人気間違いなしだ。だが、この時の彼は、まだ知らない。
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闇に染まったその先に待っていたのは大いなる絶望。だが、ミスターがその決められた道から逸れることが出来たのは、彼がさらなる人気獲得を企てていたからだった。信仰心こそがすべてだ。そして、手を伸ばしたのはとある教団の教祖の衣装だった。
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信仰せよ。キョーソ☆ディバインに進化を遂げたミスター。だが、そんなミスターの信者になったのは1匹の猫だった。いや、猫に信仰心などあるのだろうか。結果、ミスターはいつまでもひとりぼっちだったのだ。そして、ミスターは再び考え始める。
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どうすれば人気を獲得することが出来るだろうか。ミスターはとある紙束へ手を伸ばした。その紙束に記載されていたのは『あなたの好きなユニット』。なるほど、今年はこのキャラか。シソ☆ディバイン、そんなユニットが生まれてしまうのだろうか。
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ミスターの暴挙を止めるべきだろうか。それとも、野放しにすべきだろうか。ミスターが目指す明日とは。だが、そこにユーザーの興味はなかった。頑張れ、ミスター☆ディバイン。負けるな、ミスター☆ディバイン。さよなら、ミスター☆ディバイン。
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魔界のとある街で囁かれていた噂話。それは幸福の羊。だが、その羊はどうみても幸せそうにはみえなかった。三つの炎を灯した燭台。闇夜にまぎれる黒いコート。そして、大きな角の生えた羊の頭。どこからどうみても、悪魔の使いのような姿をしていた。だが、確かに彼は、幸福の羊マトンと呼ばれていたのだった。
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脱ぎ捨てられた羊の仮面。そして、ついに明らかになった幸福の羊の素顔。その素顔は何かに怯えていた。自白した噂の真相。生まれつきのアフロ頭と角を隠すための羊の被り物、夜が怖いが為に手に持った燭台。いつも逃げていたのは、極度の恥ずかしがり屋な為。そう、彼に罪はなかった。ただの臆病者だったのだ。
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いくつかの区画に整備された神界の一区画では、とある情報が駆け巡っていた。下位なる世界で続く争い、そして、そんな下位なる世界の生まれでありながらも、神界へと招き入れられた一人の男がいる、と。アオイデも、そんな男へと興味を抱いていた。彼の体に流れる血を辿れば、必ず創醒の聖者にたどり着く、と。
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芸唱神アオイデがたどり着いた創醒の聖者。そして、その血を受け継ぐ男。だから彼は、この世界に招き入れられた。それと同時に、その男が人間として生きていた頃のことを調べ始めた。どうして、彼みたいな存在が。存在していた相反する思想。そして、彼女は神界にもたらされる災厄に震え、救いの詩を歌い始めた。
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自分が自分であるために、そして、自分という存在の肯定のために、自分だけの王を欲した神がいた。そんな神が神界に連れてきたのは王ではなく神だった。自分にすがる王がいない神は、神でいられるのだろうか。ムネーメの興味はそこに向いていた。ってことは、つまり。これから始まるドラマに期待を隠せずにいた。
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張り込みを開始した芸憶神ムネーメ。これは素敵なドラマになるっす。だが、あっさりつまみ出された。彼女が考える次の一手。だが、実行に移すまでもなく、彼女の前に現れた神。ボクを追い掛け回しているのはキミかい。そして、すぐに彼女は問う。追い求めた男に、こんな形でフラれるって、どんな気持ちっすか。
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メレテが気になる情報は、姉二人と異なっていた。かつて、ひとつの世界を滅ぼしてしまいかねないほどの力を手に入れた男。そんな男が、役目を終えた自分を裏切った世界への、戦争の指揮をとっているという情報。だが、その男はどうして、そのような力を手に入れたのか。事情を知るものはみな、口を閉ざしていた。
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芸演神メレテがかつて見た悲しみの記録。それこそが、自分の世界に裏切られた男の記録だった。あの時、彼は自分の世界を守りたかっただけなのに。そして、その深い悲しみは長い時を経て、深い憎しみに変わっていた。彼らの争いに、なんの意味もない。だが、その争いは止まる気配を見せようとはしていなかった。
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アンタたち、もうちょっと真面目に仕事しなさいよ。ジャンヌは六聖人の間で言葉を発した。特にアンタ、なに考えてんのよ。その言葉は炎聖人に向けられていた。なにを企んでるか知らないけど、アタシも口を挟ませてもらうよ。言っとくけど、これは異常事態。泳がせるには度が過ぎてるわ。例え世界の決定でも、ね。
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アタシ達はね、旗を振ることしか出来ないの。だから、彼女は光聖人ジャンヌと名乗っていた。その旗すら、まともに振らなくてどうすんのよ。そして、視線を投げかけた先にいた最後の聖人。アンタだって、放っとけないんじゃないの。だが、問いかけられた聖人は微動だにしなかった。ったく、それでも親なのかしら。
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幽闇街ドリードで囁かれる噂。夜道に出現する漆黒の羊。だが、その噂話には、ひとつの大きな疑問があった。その羊と遭遇したとしても、その羊は逃げ出してしまう。人を襲うことはなかった。ゆえに、漆黒の羊は、幸福の羊と呼ばれていたのだった。
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自分が王から将へと成り代わった事実に、翠風魔将イバラは気づいているのだろうか。寝惚け眼をこすりながら見つめたのは天界の辺境の街。そして、彼女は一言も言葉を発することなく、その街は茨に覆われた。これは、ただの時間稼ぎにしか過ぎないんだから。そして、彼女は再び深い眠りにつこうとしたのだった。
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眠られてちゃ、困るのよ。無数の茨を掻き分けながら、美風精将ヨウキヒは姿を現した。ウチらだって、無益な争いをしたいわけじゃない。だが、すれ違い続ける両陣営。勝利の先に、なにを求めるの。その問いへの答え。勝利、敗北、それを語るのなら、私達は敗北で構わない。無益な戦いが、ここでも始まるのだった。
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新たな活動の為の資金が必要だ。その言葉を受けた北従者は、Tシャツをデザインした。ヘアメイクは私に任せて。東従者のセンスが光る。どの角度が美しいか、それは私が一番知っている。南従者が持ち出したカメラ。僕、興味ないから。ただ傍観する西従者。そして、カリスマモデル・クロウリーは完成したのだった。
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もっとこっちを向いて下さい。こうか。あぁ、素敵です、今度は少し見下すように。こ、こうかな。うーん、メイクもばっちりね。慣れないものだな。Tシャツだって、似合ってるぜ。そ、そうか。……。なにか言え。そんな、平和で幸せな時間だった。
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『俺の指揮に従えと言っているんだ!いいから言うこと聞け!』いつも頭痛に悩まされている音楽教師のダンテ。その頭痛の原因は、ろくに授業に参加しない生徒達のせいだった。気がつけば喧嘩をし、早弁をする。こんな学園、間違っている。そして、さらなる頭痛の原因に、いつも悪戯を仕掛けてくる生物教師がいた。
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『あぁ、俺こそが聖門学園の王だ。聖学のルールは俺が創る』 聖学の風紀を乱さんと、ついに「聖学の王」を名乗り始めたアーサー。そして『聖学バトルロワイヤル』の幕が開かれようとしていた。どよめきだす聖門学園。だが、そんなイベントは早速中止された。その理由には、彼の身近な二人の人間が関係していた。
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『みんな、頑張ってね! 私は、みんなを応援するからね!』 聖学の一大イベントへ向け、チアリーディング部を設立したヴィヴィアン。聖学の全生徒を平等に扱う彼女だが、唯一、ひとりの生徒だけひいきしているとの噂が。そしてその噂の真相は、そのひいきされていると噂の生徒のお弁当を見れば一目瞭然だった。
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『ほらほらっ! 早くしなきゃ、置いてっちゃうからねー!』 陸上部に所属する彼女は走ることが好きだった。よく道路に飛び出しては止まれず、そして車にぶつかり、晴空の星になるの。あぁ、あれはいつものことだから。心配ひとつしないお下げ髪の幼馴染。そして次の場面、なに食わぬ顔でミドリは笑っていた。
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『みんなで一緒に食べたら、きっと、もっと美味しいよっ!』 料理部のファンタジーと呼ばれる彼女は、いつも笑顔を絶やしはしなかった。そして、その笑顔はみんなを笑顔にする。だが、そんな笑顔の彼女を悩ませる人物が。どうしたら、お姉ちゃんと仲良くなれるかな。聖学にはヒカリと半分血の繋がった姉がいた。
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『少し、静かにしてくれるかしら。今は二人で過ごしたいの』とある日の放課後、まだ利用可能時間であるにも関わらず図書室の鍵はかけられた。今日は、二人きりで過ごしましょう。夕日に浮かぶ並んだシルエット。ユカリが大好きな少女に読み聞かせるのは、世界でたったひとつの物語。二人だけの、秘密の物語。
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『ったく、なんで俺から行くんだよ、学園がこっちに来いって』意味のわからない理屈を並べては、ことごとく家を出ることを拒むサンタクローズ。慌てんぼうとか、あれ嘘だから。だが、妹と幼馴染に連れ出される運命。そっか、学園がなくなれば、行かなくてすむんだな。そして、学園の窓ガラスは音を立て始めた。
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『…………………………………………………………(ポっ)』 温かな春の日、期待と緊張で胸がいっぱいのトラピゾイドは新しい制服に袖を通し、新しい毎日へと歩き始めた。咥えた食パン、少しついた寝癖、始めての曲がり角。そこで聞こえた、恋に落ちる音。そう、その日初めて、彼女は桜色の恋をしたのだった。
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『当たり前だろう、私たちは共に季節を過ごしてきたのだから』学園のアイドルの親衛隊長であるパイモン。なぜ、彼女が学園のアイドルを守るのか。それは彼女にとって、妹のような存在であり、娘のような存在だったから。これからも、私が側にいよう。少し過保護とも思われるような態度も、すべては愛ゆえに。
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『だから僕は、兄さんが大嫌いだって言っているだろう!』 聖門学園の名物、それは優等生の兄と、劣等生の弟の双子。そして、そんな劣等生である弟のアリトンは、優等生な兄が大嫌いだった。それゆえ、渡り廊下ですれ違う度に行われる決闘。だが、どこからどうみても、兄に構って欲しい弟にしか見えなかった。
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『俺は犬じゃねぇ! 狂犬でもねぇ! 聖学のジャッカルだ!』だが、アマイモンは興奮すると、尻尾を振る癖があった。ジャッカルを自称するが、ジャッカルとは動物界、脊椎動物亜門、哺乳綱、ネコ目、イヌ科、イヌ亜科、イヌ属であり、犬である。一部からは聖学のアイドルの忠犬と揶揄され、本人だけが知らない。
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『悪いけど、半年先の放課後まで、予定は埋まってるからさ』 聖学で1、2を争う色男のランスロットは、自分の思うがままに女子生徒と楽しい時間を過ごしているが、そんな彼でも調子を狂わされる存在が二人いた。一人は聖門学園の『王』を自称し始めた男。そして、もう一人は『育ての親』を自称する女だった。
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『趣味ですか? そうですね、お兄様の一本釣りでしょうか』 聖学の神出鬼没の不思議少女シオン。なぜかいつも釣竿を持っているが、決して池で鯖釣りをして、副会長に怒られるというわけではない。ただ、大好きなお兄様を釣りたいだけである。だが、そんな美味しそうな肉まんを横取りしようと狙う狂犬もいた。
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『そうだな、特技は貧血だ。よく倒れる。だから介抱してくれ』聖学の中で誰よりも顔色の悪い養護教諭。貧血持ちで、一度死んでいる。数学教師と帰宅部顧問とは近所住まいであり、仲良しでもあり、ライバル同士でもある。そして、そんな三人の出会いは何年も前の聖学の入学式であり、聖学の卒業生との噂だった。
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『ふふふ、この世界はね、ボクの思い通りの世界なんだから』 聖門学園は理事長の絶対的な力により運営されていた。自分の思い通りの世界を作り、そんな箱庭で楽しそうにしている生徒を嬉しそうに眺めるロキはなにを思うのだろうか。本当は君も、参加したいんじゃないの。それは彼の隣に座る神童の言葉だった。
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もう少しだけ、夢を魅せてあげようか。そして、再び聖門学園への扉は開かれた。さぁ、好きなだけ酔いしれてくれて構わないよ。汚れた校舎、昼休みの購買、放課後の校庭。そこには、誰もが恋した、いつかの暖かな毎日が存在していたのだった。
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力を合わせなかった文化祭、汗水流さなかった体育祭、適当すぎる授業、そんな毎日が愛おしい。それは、その全てを失ったからこそ、抱く感情。だからこそ、いまだけは、泥にまみれた永遠の青い春を求めて。嫌いだった世界へ、世界で一番の恋を。
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僕達はいつか、大人になる。きっと、辛い毎日が巡ってくる。だから、思い出に溺れたっていいじゃないか。そんな、溺れられるくらいの思い出を作ろうよ。そして、聖門学園の生徒が一丸となり【一部除く】、とあるイベントが企画されたのだった。
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生徒一同が乗り込んだのは理事長室。どうか私達に最後の思い出を作らせて下さい。だったら、条件を出させてもらおうか。そして出された条件とは。明日、全生徒、教師が遅刻をしなかったら叶えてあげる。イベントはあっけなく中止となった。
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鳴り響く24時の終わりの鐘。これは0時の始まりの鐘よ。定刻通り、黄光魔将は天界への進軍を開始した。そして、そんな彼女の前に立ち塞がる美光精将。ここで私が、食い止めます。それじゃあ、華麗に舞ってみなさいよ。舞踏会の幕はあがる。そうよ、踊り続けなさい。永遠に、永久に、私たちの手のひらの上で。
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美光精将カタリナは違和感を感じずにはいられなかった。あなた達の本当の狙いは、なんなのでしょうか。燃え上がる街並み、削られる大地。だが、絶えることのない命。あんたも知ってるでしょ。あの男が聖なる扉を手にしたことを。それでしたら、この争いは。そして、そんな二人の間に、招かれざる神が舞い降りた。
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これは戦争が始まる前の出来事。代々魔界の王家に仕えるナルキスは、新闇魔女王のことも、そして堕精王のことも受け入れられなかった。あなた様は、なぜ受け入れられるのでしょうか。問いかけられた魔参謀長。視野は広く持ちなさい。そんなあなたに、いい仕事があるの。そして、彼女が向かったのは竜界だった。
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なぜ、私がこのような場所に。竜界へと潜り込んでいた水仙卿ナルキス。そして、追いかける情報。かつて、神竜戦争で暴君と忌み嫌われた竜王家の紅蓮を纏いし竜と、王家を追い出された彼に付き従う三匹の古竜。なんで余所者の君が、裏切り者の彼らを追いかけるのかな。彼女の前に立ち塞がったのは流水竜だった。
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ぼ、ボクになんでもお申し付けください。頑張り屋なポタは、いつ、どんなときでも、風聖人の側を離れることはなかった。そして、そんな健気な少年を見つめ、風聖人は他の誰にも見せることのない、優しい笑みを浮かべる。緑茶をお願い出来るだろうか、砂糖は多めで頼む。数分後、湯飲みを載せたおぼんは宙を舞う。
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かかる緑茶、こぼれる笑い声。だが、その笑い声は皮肉にも似ていた。私はもう、熱を感じることもないのか。そんな風聖人を見つめ、風衛徒ポタは頬を撫でる。ご無理は、なさらないで下さいね。浮かべた無邪気な笑顔。あぁ、だが、今回ばかりは無理をしないわけにはいかないようだ。そして、一通の封書が残された。
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月が欠けた夜を泳ぐ魔女がひとり。そんなユカリに寄り添う一匹の猫。私はね、この日を絶対に忘れないわ。それは、誕生日であり、そして特別な夜が訪れる日だったから。どこにいるのかな。早く、捕まえに行きたい。散りばめられた星へと祈りを込めて。だから、見守っていてね。私だけが大人になる、そんな世界を。
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時計通りの世界は、最後に命を孤独へと誘う。だとしたら、私の世界はもう、終わったの。彼女はひとりだった。だからこその決断。必ず、私が手にいれる。そんな自信に満ちた言葉からは、言葉通りの決意と、そして、隠しきれない不安が溢れていた。
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魔王家への愛が憎しみへと変貌を遂げたとき、彼女の中で疑問が生まれた。いつか私への愛も、憎しみへと変わるのだろうか。そして、彼女はまだ気付かない。自分への劣等感こそが、憎しみであることに。故に彼女は、自分を許すことが出来なかった。
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ただいま、母さん。そんなアカネに、深くを尋ねない母。やっぱり、あなたはあの人の子供なのね。たくましくなった体に、胸をなでおろす。だけど、今日くらいはゆっくりしていきなさい。用意されていたホールケーキ。いつか、お父さんを追い越すのよ。それは、ただ流れる時間とは別の話。もちろん、そのつもりだ。
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少年は刹那の夢を見る。大き過ぎた父の背中。誕生日を祝ってもらったことなんてなかった。だが、いつも感じていた温かさ。そして、その炎はもう、ひとりだけではなかった。そして、少年は目を覚ます。もう一度、始めよう。これは俺の物語なんだ。
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『こんな贈り物など、いらないと言っているのがわからぬか?』聖門学園の絶対的アイドル、クロウリーにはいつも沢山の贈り物という名の貢ぎ物が届けられていた。だが、彼女はそのような物に興味を示すことはなく、放課後の怪しい教団クラブで、破天荒な仲間達と過ごす時間が、なによりの楽しみだったのだ。
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先に仕掛けてきたのは、あなた達の方よ。美闇精将を前に、唇をかみ締めていた菫闇魔将カグヤ。彼女が連れてきたのは、蓮の花に包まれ、深い眠りに堕ちた友の想い。待ってよ、わかるように説明して。いまさら、なにを言っているの。すれ違う想いと、行き違う解釈。あなた達はいつだって、知らないフリをするのね。
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その戦いは、夜に始まり、夜に終わる。だが、決して倒れることのない美闇精将クレオパトラ。そして、互いの想いを乗せた最後の一撃。そんな二人を天高くから見下ろす男達。そんなに真剣な顔して、なにを見ているんだい。少しだけ、古い友人の雄姿をと思いまして。それを見届けたら、そろそろボク達も始めようか。
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とある会議の場、いつも居たはずの二人が姿を消していた。始まった戦争。だが、最高幹部である男は違和感をぬぐえずにいた。まるで、初めから止めるつもりはなかったようだ。そして、その会議の場に現れたもうひとつの違和感。私は、初めからここにいましたよ。とある会議の場、そこにはロプトが存在していた。
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誰の差し金だ。男の口をついた言葉。いや、んな質問は要らねぇな。そう、愚者ロプトの姿から、なにかを隠そうとする気は微塵も感じられなかった。私はただ、声なき指令に従うだけ。どうぞお見知りおきを。評議会に入り乱れる思惑。そして、更なる違和感が場を包む。わたくしも、潜り込ませていただきましたよ。
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人は、人と意思を通じ合わせる為に言葉を生みだした。だが、人は、意思が通じれば通じるほど、言葉を必要としなくなる。であれば、声なき指令は、最上級の指令なのだろうか。それとも、誰かに悟られないようにと、意思を塞いだ指令なのだろうか。
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失われゆく自我。オレはいったい、誰を恨めばいいっていうんだよ。わかりきった自問自答。オレが失敗作なら、最高の失敗作になってやろうじゃねぇか。最後まで、失敗作らしくあがいてやるよ。そして、片翼で始める悪あがき。その日、刻の狭間から天狂獣グリュプスは姿を消した。このオレが、後悔させてやるよ。
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失敗に終わった聖王奪還作戦。それでも、僕は彼を信じます。それは、幼き日の聖王を知っているアサナだからこその想い。きっと、彼はいまでも戦っているんです。だから僕たちは、いつか彼が帰ってきた時に、彼が心から安らげる世界を創る為に戦いましょう。そして、円卓の騎士達は各地へと散っていくのだった。
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はじめまして、ですよね。無英斧士へと語りかけるのは、広報局員へと立場を変えたマリナだった。わたくしは、来るべき日の為に、ここへと参りました。そんな彼女が広報局員として追いかけるのは、戦争に乗じて常界の各地で起きる暴動を人知れず抑制する存在達。だからどうか、力を貸して頂けないでしょうか。
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聖戦はいわば、過去の再来。そして、それは過去ではなく未来。そんな絵を描くのであれば、それを塗りつぶすまでです。神虚狐ヤシロは動き始める。そして、この世界が求めているのは神ではない。彼らの好きにさせてはいけない。友の為にと、ひたすら我慢を続けた無英斧士の元に、心強い協力者達が集い始めていた。
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裏切り者だなんて、ずいぶんと酷い言い方じゃないか。水仙卿と流水竜が対峙する最中、間を割るように現れたのは裏古竜衆のファブラだった。君が会いたがってるから、来てあげたんだよ。それは水仙卿への言葉。だけど君は、会いたくなかったみたいだけどね。そして、それは憎悪で顔を歪めた流水竜への言葉だった。
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竜王家には、古の時代より仕える古竜衆と呼ばれる部隊が存在していた。だが、かつての戦争を機に、古竜衆の半数は竜王家から離反し、そして離反した者たちは、いつからか裏古竜衆と呼ばれるようになった。光竜将ファブラもそのひとりであり、そして彼が将でいたのはまた、仕えるべき者が存在していたからだった。