-
本気出さなきゃ失礼だろ。その言葉に笑顔を返す光竜将。オマエは帰って、報告でもしてろよ。立つだけで精一杯の水仙卿。で、オマエはひとりじゃ立てないのか。傷だらけの流水竜。早くガキを連れて帰れ。流水竜を抱きかかえていた竜神。俺たちは俺たちらしくやらせてもらう。だからオマエも、オマエらしくやれよ。
-
探したぜ、久しぶりだな、お姫様。現れたヴェルンはカナンを見つめる。棍を構えたミドリの背後、突きつけられたファブラの刃。安心しろ、危害は加えねぇよ。俺達は連れて行って欲しい場所があるだけだ。だから、少し道案内をしてくれねぇかな。
-
私は、それでも諦めない。だから、行ってくるね。ドロシーはひとり奥へと。ミドリとカナンはヴェルン達と共に。そして五人が辿り着いた場所。鳴り響いた避難警報。さっさと道を開けろ、俺様の帰還だ。そこは王も、竜神も不在の古神殿だった。
-
かつての暴君、ヴェルンの登場に震える古神殿。な、なにをしに来た。立ち塞がるのは、立ち上がることすらままならないリヴィア。怪我人は寝とけって。俺に勝てると思う愚か者がいるなら今すぐ出て来い。古神殿は物音一つ立てず静まり返っていた。
-
満場一致、ってことでいいんだな。そしてヴェルンが腰をかけた玉座。それじゃあ、俺様からの最初の命令だ。いいか、よく聞けよ。ただ、口を閉ざして聞くことしか出来ない古神殿の竜達。いまこの時をもって宣戦布告をさせてもらう。さぁ、戦争だ。
-
俺の目的の為、あいつらにはひとつになってもらわなきゃいけなかっただけさ。余裕の表情を浮かべるヴェルン。その目的を言えと言ってるんだ。落ち着いたヒスイ。きっとオマエの思っている通りさ。だが、やり方が違う。そう、これが俺のやり方だ。
-
女を痛めつけるなんて、随分と悪趣味な小悪党じゃねぇか。クロウリーの許、助けに現れたのは裏古竜衆を引き連れたヴェルンだった。どうも、元決定者さん。そう、決定者を裏切ったヴェルンを前に、ひるむことのないメイザース。君はもう、過去さ。
-
そして、ヴェルンは左手を天高く掲げる。裏も表も関係ねぇ。俺たちは古に生まれ、そしてイマを生きる。そうさ、創竜衆だ。そしてヴェルンの左手が地面を叩きつけるのを合図に、一斉に飛び掛る5人の竜。塵ひとつ残すんじゃねぇーぞ、殲滅だ。
-
みんな、ありがとな。全身から昇るのは殺気にも似た湯気。沸騰した、決定者であり最古の竜の血。そう、すべてはヴェルンの一撃の為に。そして、左手を振り上げたヴェルンは一直線にメイザースへと。これが俺様たちから、裏切り者への制裁だッ!
-
あー、疲れた。両手を広げ、そのまま地面へと倒れたヴェルン。そして、地面に倒れていたのはウロアス、ファブラ、リヴィアも同じだった。ヴェルンへと歩み寄るクロウリー。ありがとう、助かったよ。そう、交されていた密約は果たされたのだった。
-
俺たちは俺たちのやりたいように、ただ俺たちがすべきことをしただけだ。そう返したヴェルン。だが、俺たちはここまでみたいだな。未だ息の整わないヴェルン。決定者にも等しい存在との戦いで、ヴェルンはすべての力を出し切っていたのだった。
-
引き続き、竜界の新たな王として迎え入れられたヴェルン。だが、俺様は本来ここにいちゃいけない存在なんだ。そう、新たな王が覚悟を決めるまでの間だけ、それがヴェルンの想いだった。