彼はもう、この世界に必要ないのよ。狙いすましたかのように現れた人影。この数を相手に、いつまでも持つほどの力はないわよね。開かれていたのは大きな扇子。それに、もう役目は果たしたんでしょう。だから、これ以上の戦いに意味はないわ。
そこをどいて。アオトたちの背後、放たれたのは水龍を纏いし大きな一太刀。左右へと飛びのくアオトたち。そして、その一太刀はシグルズへと向かう。ふふふ、アンタもいい男になったじゃない。シグルズの頬は、さらなる紅潮をみせるのだった。
そう、今日の私は追い風なの。予期せぬ加勢と、変わった風向き。そうね、思う存分目立たせてもらえるかな。だって、このときのために、私たちはずっと活動してきたんだから。神サマなんて完全な存在は、この不完全な世界に必要ないのよ、けひひ。
ヘルヴォルへと撃ち込まれる無数の弾丸。はじけ飛ぶ薬莢が盛り上げるクライマックス。いいか、よく見とけよ。その銃声は、いつかの瓦礫を粉砕した銃声と同じ歓声だった。さぁ、始めようぜ。これが俺たちの選んだ進むべき道さ、レッツ、ハッピー。
常界へ無数の被害をもたらした炎の災厄。そして、その炎の災厄はアカネたちによって食い止められた。だが、常界の人々の心には、神々への恐怖が植え付けられ、それと同時に、その場を救った「正体不明の女」へと、賞賛が向けられたのだった。
また会える日を、楽しみにしているわ。そう遠くない未来に会いましょう。食い止められた水の災厄。その最後の一太刀は「正体不明の男」によるものだった。だが、人々は知っていた。その正体不明の男が聖戦の二次災害から人々を守っていたことを。
風が止んだとき、そこには災厄の爪あとが残されていた。まぁ、あんたたちもよく頑張ったわよ。そんな言葉を残したのは、風の災厄を阻止する最後の風を放った「正体不明の女」だった。そして、その女へは数え切れないほどの賞賛が集まるのだった。
止んだ無の災厄。お前たちだったんだな。ギルガメッシュがついた溜息。二次災害の被災地に現れ、名乗ることなく消え、報告書に記載されなかった「正体不明の男」の存在。だが、そんな男もまた、救われた被災者たちの記憶に刻まれていたのだった。
私も戦わせてもらうね。神を前に、傷だらけのヒカリへと手を差し伸べたヴィヴィアン。これはあの日の続きじゃない。新しい始まりなの。そんなヴィヴィアンの背後に降り立つ六つの光。私たちもいますよ。そこには真精将たちが杖を構えていた。
ユカリがついた膝。格好悪い姿をみせないで頂戴。そんなユカリの手をとったひとりの女。彼女があなたの敵なら、それは私たちの敵でもあるの。ユカリが背中を預けたのはファティマ。そして、そんな彼女たちの背後には六人の真魔将が控えていた。
始まりが存在するから、終わりが存在するのか。終わりが存在するから、始まりが存在するのか。それは表裏一体の存在。私の役目は、イマの世界の終わりを観測すること。胸の奥底へ抑え込む想い。どうか、幸せな道を。統合世界に下された世界の決定。少し早いけど、オヤスミナサイ。さぁ、終わる世界へ。
お時間ですよ。細い足へとはかせた白い靴下。これからが楽しみですね。洗い立ての身体に羽織らせたのは白いシャツ。そして、その白を包み込むように、黒い靴と黒いジャケットを着せた執拗竜ティルソン。やっぱり、あなたって方は悪趣味ですね。私はそんなあなたを愛おしく思います。差し出された右手に口付けを。
人って生き物はね、いつだって誰かに従いたいんだよ。潜在的な拘束願望。そこには選択が生じなければ、責任も生じることはない。そう、だから僕が使ってあげようと思うんだ。名も無き教祖は再び砂上の楼閣へと。だけど、勘違いしないでね。僕は君に従うわけじゃないから。僕は僕、誰にも従うことのない神様さ。
そう、僕は奇跡やドラマを必要としていた。それは、その先の未来を見据えて。だけど、いまはもう、そんな陳腐な涙は必要ないんだ。それは、その先の未来を見捨てて。ありがとう、これが世界の決定なんだね。そうさ、もう考える必要はないんだ、明日とか、明後日とか、未来とか、幸せとか、悲しみとか、イラナイ。
だけど、ありがとう。僕がこうして、もう一度立ち上げることが出来たのは君のおかげでもあるんだよ。そう、初めからこうしていればよかったんだよ。あのときの争いのように、僕は裏切る存在なんだ。いくつもの刻を遡り、辿りついたのは神竜戦争の終結日。僕は僕で、あの頃の続きを始めさせてもらうとしようか。
彼女が偽りの王への道を進むのであれば、僕は偽りの神への道を進むだけさ。そう、だから彼女は、彼女たちは、僕に、僕たちに縋るしかないんだから。だけど、これは僕たちだけの密約さ。さぁ、だから素顔を見せてごらんよ。外されたのは左半分の仮面。とても綺麗な瞳をしているじゃないか、まるで、――のような。
この不完全な世界は、ありもしない完全を求めることしか出来ない。だから、私が偽り抜いてみせよう。私は偽り続けることしか出来ない偶像なのだから。切り落とした髪は覚悟の証。これが、私達の選んだ償いの道だ。しばらくの間不在だった常界の玉座。そこには、偽りの王、聖常王クロウリーが鎮座していた。
各地で発生した災厄は、咎人であった3人の少年少女たち、そして消えた常界の王の元部下たち、そして名前を得たばかりの少年少女たちの活躍と、天界魔界からの応援により鎮火の一途を辿っていた。だが、そんな彼らの活躍を誰が認めただろうか。
世界評議会広報局の発表はこうだった。聖戦より続く二次災害の対処及び、六つの災厄は名も無き4人の存在により鎮火した、と。そして、そんな4人を統べるひとりの少年。まるで少女のような彼こそが、新たな常界の王に相応しいのではないか、と。
翻訳っていうのは、人によって意味が変わるんだよ。そして、そのすべてが正解なんだ。だから、僕は新たな解釈をしようと思う。黄金の夜明けが訪れた統合世界の裏側には、完全な夜が訪れている。そう、いつだって世界はそういうものなのだから。
そして、そんな少年の推薦者として名乗り出たのが、現最高幹部として君臨していたギンジだった。俺はこいつを信じる。だからどうか、みんなも信じてやってくれ。突如現れた英雄に、常界の不安に怯える人々は歓喜した。そう、王が再誕したと。
これはアイツが私に教えてくれたことだ。人は悲劇を乗り越え、強くなる。そう、だから利用させてもらっただけさ。こうして生まれた「偽りの王」。皮肉なものだな、私は結局、偽ることしか出来ない。だが、今度は最後まで偽り抜いてみせようか。
僕は世界中の誰よりも幸せなんだ。あの雪降る日に、肯定された命。そして、彼へ向けられる笑顔は、歳を重ねるにつれ増えていった。やっぱり俺は幸せものだ。そう、だから俺こそが、世界の悲しみを背負うべきなんだ。そんなアーサーへ捧げられた祝福。誕生日、おめでとう。どうか、みんなの言葉が届きますように。
そして、常界の王の間に集められた数々の人影。咎の汚名がそそがれた3人、天界、魔界からの代表として来た女王ふたり。また、かつての王の部下であった円卓の騎士たち。その他、大勢の実力者たち。そこには、常界の最高勢力が勢ぞろいしていた。
では、王としてここに宣言させてもらう。口を開いた聖常王。私の目的はたったひとつ、そう、神界へと消えたかつての王、アーサーを常界へ連れ戻すことだ。それこそが、すべての災いから、ディバインゲートから統合世界を救う唯一の術なのだから。
聖常王が明言したアーサーの救出。その言葉の真意を、教えてください。レオラが浮かべた不安な表情。なぜなら、聖常王の口角は1ミリも上がりはしなかった。無駄な質問は止せ。この言葉の意味に気づいているから、そんな顔をしているんだろう。
王の間に走る緊張。その場の誰しもが聖常王の言葉の真意に気づいていた。逸らされる瞳。みな、気づかないフリをしていた。もう一度、言わせてもらう。かつての王、アーサーを常界へ連れ戻せ。そして続く言葉。そう、聖神アーサーを処刑する。
その路地裏は迫害された獣たちのたまり場だった。俺たちはこの箱庭でしか生きることが出来ないんだ。だが、ここだけは俺たちの楽園だ。そう言い残し、姿を消してしまった親友。そして、エジィが再びその姿を目撃したのは、光聖人に敗れ、配下となる道を選んだあとのこと。俺たちは、別々の場所を見つけたんだ。
光剣徒エジィは光聖人の剣だった。この剣はアイツを守る為だけに振るう。たてた誓い。なら、丁度よかった。あなたのその剣は私の為であり、友の為にもなるってことね。別々の主君を選び、別々の道へと進んだニ匹の獣。そして、二匹の獣の道は再び交わる。そう、英雄っていうのはね、討たれて初めて英雄になるの。
チャッピー、おいで。声をかけたのは闇聖人。君は、いつまでも私のそばにいてね。そんな寂しそうな闇聖人へと寄り添うチャッピー。安心シテ、チャッピーハトモダチ。シオンノコト、守ルダヨ。いつも、ありがとう。ふたりの時間を壊した第三の言葉。忘れないでね、君は「聖人」という一種の生き物だということを。
もちろん、わかってます。闇聖人は声の主を確認することなく、落ち着いた口調で答えた。私が聖人としての責務を果たすことこそ、私をこの場所へと育ててくれた恩返しなんです。たとえ、大切な家族を傷つけることになったとしても、それらも受け入れてくれる、大切な家族たちなんです。だから、私は裏切りません。
しばらくぶりだが、大きくなったな。背後から呼び止めた無聖人ニコラス。もっと驚いてくれよ。振り向いた顔が証明する血の繋がり。いまさら、父親面してんじゃねぇ。青年の瞳に映るのは自分へと突きつけられた銃口。たまには父親らしくさせてくれよ、だから、オマエにプレゼントだ。鳴り響く銃声。グッドラック。
無事に、任務を果たしてくれたようだな。ダンテが賞賛を送ったのはグライフ。二択の三択かと思っていたが、まさか一択だったなんてな。そして、グライフが開いた神界への道を歩むダンテ。なんか物騒な場所だな。その少し後ろにはフォルテがいた。
だけど、なんでわざわざこんな場所を進むんだよ。その開かれた道は、他者からは観測出来ない特別な道だった。神であるアンタが、どうして隠れる必要があるんだい。そんなフォルテの疑問を解決したのは、無数の見えざる人影による襲撃だった。
悪いが相手をしてやってくれ。ダンテは立ち止まることなく、ただひたすら歩き続ける。そんなダンテを守るように、無数の人影へ大きな炎の拳を打ち込むフォルテ。いいね、準備運動かい。いいや、争いは終わりだ。そして、扉へ辿り着いたのだった。
開き始めた扉からこぼれだす光。その奥には玉座があった。高みの見物とは、いい身分になったものだな。歩み寄るダンテ。だが、こうしてようやく落ち着いて話をすることが出来るな。引き抜かれた刃に映る鋭い眼光。俺が問おう、貴様の見解を。
そして、刃を首元へ突きつけられようと、その玉座の主は動じることなく、ただ余裕の笑みを浮かべるのだった。俺を殺したところで、なにも変わらないさ。すべては世界の決定なんだ。そして、玉座の主、アーサーは立ち上がる。さぁ、時代は変わる。