神々が暮らすという神界。だが、神とはいったいどのような意味を持つ存在なのだろうか。幾度と繰り返されてきた歴史、その歴史が始まるとき、必ず神々が存在していた。それは聖暦という時代も例外ではなかった。そして、創炎神スルトは新しい時代へと跪く。そう、新しい時代を始めんとする聖神へと跪くのだった。
マハザエルが目を覚ましたとき、それまでの記憶は存在していなかった。だが、それでも二重螺旋に刻まれていた存在理由。それは真教祖の為に生き、そして死ぬこと。そして、前北魔王の首を狩ること。なんだ、そんな簡単なことなのか。聖戦後の統合世界にて、再び、とある教団は動き出そうとしていたのだった。
これで、四つ目の柱も揃いました。執事竜が迎えたのは北魔王マハザエル。完全になれなかった彼らと違い、彼らは完全なる存在となることでしょう。そうだね、彼らは不完全だったんだ、二度と顔も見たくないよ。紅茶を舐めながら、真教祖が下した命令。それじゃあ、手始めに抹殺してもらえるかな、ひとり残らずね。
僕は人形。ドロッセルは、ただ、雪降る街で記録をし続けるだけの存在だった。いつから存在していたのか。いつから体が与えられたのか。そう、体などは器に過ぎない。だから、僕は人形なんです。そんな彼に与えられた命令。ちょっと、くるみを割ってきてもらえるかな。それは無聖人の一声。そう、僕はただの人形。
運命を必然と呼ぶのであれば、ふたりの出会いは運命であり、そして必然だった。どうして出会えたのか、どうして出会ってしまったのか、どうして出会わされてしまったのか。無雪徒ドロッセルはただ記録を続ける。雪降る夜に出会えたふたりを。雪降る夜に出会わされてしまったふたりを。すべては、無聖人の掌に。
体を切り裂く爪もあれば、かじられる爪、磨かれる爪も存在する。そして、ただ見つめられるだけの爪も存在していた。その見つめられた爪が意味するのは、刹那の切なさ。だが、その感情を理解する心など、彼には残されていなかったのだった。
聖戦を終え、氷刑者が帰ってきた家。彼の口からただいまの言葉はない。だが、それでも笑顔で出迎えたのは燃恋乙女エキドナ。愛してる、だなんて言葉はいらない。私のことを愛してくれなくてもいい。ただ、私は側にいたいからいる。それが彼女の決めた生き方。ふたりの関係は、言葉で言い表すことは出来なかった。
そっか、彼女は頑張ってくれたんだね。萌森乙女アルラウネは聖戦でぶつかり合った風の戦いを翠妖精へと報告していた。それじゃあ、私も償わなきゃいけないね。都合の良い犠牲により、引き裂かれた友情。そして、後悔し続けていた翠妖精。これからは、私に協力してもらえるかな。未来の為に、過去は清算しなきゃ。
やっぱり、あなたって悪い女ね。妖精でありながら、真妖隊に属することとなった極悪乙女サキュバス。なんの話かな、私がここにいるのは隊長さんが気になるからなのに。同性へと向けられた興味。それは、真妖隊の将が、同性である実姉への愛をつらぬいていたからだった。女性を愛するその気持ちを知りたいだけよ。
ふわふわ。浮霊乙女ゴーストは目を覚ますと浮かんでいた。彼女は自分がいままでどこにいたのか、なにをしていたのか。その記憶は定かではない。が、そのことを大して気にしていなかった。そんな彼女が気にしていたのは、極東国の枯れない桜の木の下、誠の文字を背負いし、頭に尻尾を生やした男のことだった。
晴れ空の下で行われた授業。語られたのはサニィの幼い日の話。照りつける太陽の下で、元気いっぱいで遊んでいた時代。きっと、あの頃の私がいまの私を形成しているんだと思います。だから、家で勉強ばかりしてないで、お外で遊ぶことも大切です。
心が晴れたからといって、それは決して正しいことではない。サニィが否定したのは自分自身。曇りや雨があるからこそ、晴れを嬉しく思うんです。それが人間の感情だと云う。彼ら、彼女らは、私たちとはまた別の価値観で生きているんです。
講師から伝えられたのは、精霊士官学校入学から卒業までの出来事。名前を失うことの不安。名前を得ることの名誉。それはひとりの妖精ではなく、兵として生きることを選んだからこそ。正しいかどうか、あのときの私はまだわかりませんでした。
天候術を使うときには、その天候と同じ気持ちにならなくてはならないと云う。だから、私は戦場で泣くことは許されない。それは感情を殺すのと同義。晴れ渡る心の裏側、そこでは、その天候とは程遠い感情を押し殺さなけばならないのだった。
私は私を殺し、そして出会うことが出来ました。授業を再開したサニィ。隣には、本来いるはずのない魔物がいた。今日は、特別講師に来てもらっちゃいました。聖戦を終え、晴れ渡った空の下で、自分の道が正しかったと笑うサニィがいたのだった。
レイニィは幼い日から雨の降る日が好きだった。子供ながらの可愛さとはかけ離れていた。どうして私は雨が好きなんだろう。外で遊ばないで済むから。心が落ち着くから。そのとき、答えに辿り着くことは出来なかった。だから、私は探しました。
その濡れた心は、ある種の才能であると士官学校への進学を勧められたレイニィ。迷いながらも、理解することの出来ない幼い日からの感情と向き合う為に、名前を捨てる道を選択した。そして、私の居場所は生まれたのでした。私は、私と出会う為に。
少し、横にそれますね。話し始めたのは水を司る友人たちの思い出。私を遊びに誘ってくれるときは決まって雨が降りました。自嘲交じりの告白は自分が雨女だということ。だけど、私が本当に伝えたいのは、それでもそばにいてくれた友への感謝です。
雨に関する天候術の講義で伝えられた大切なこと。心の雨を受け入れると、頬を伝う涙を見失ってしまうんです。そして、どんどん自分がわからなくなる。悲しい、その感情を忘れてはいけない、わかっているはずなのに忘れてしまうことがあるんです。
私は聖戦で沢山の涙雨に打たれました。そして、ようやく辿りつけました。雨がもたらす安らぎ。私は温かさを感じていたんです。そして、降り続ける雨のなかで笑顔を見つけることが出来ました。だから、私は真雨精将として胸を張らせてもらいます。
Ah あの日の出会いを覚えているかい 君は唐突にオレの頬を撫でたね Ah いまでもすぐに思い出せるぜ 触れた心 ロンリーウルフ ダイナマイト Wow Wow Wow Yeah! Wow Wow Wow Baby!
Ah あの日の出会いを忘れてないかい 君はいつもワガママだったね Ah いまも居心地は変わらないさ 揺れた瞳 ストレイウルフ ナイスバディ Wow Wow Wow Yeah! Wow Wow Wow Baby!
さぁ 共に羽ばたこう 翼なんかいらないさ オレが君の翼 さぁ 共に走り出せ 風に乗った俺のハイスピードディストラクション テンション アテンション コングラッチュレイション Love Me!
Dear my wind 風の行方 so sweet 少しだけほろ苦いぜ Dear my wind オレの行方 so sweet 本当は甘いぜ オレにだけは 聞こえる風の声 静かに Shake it! Shake it!
Dear my wind 風の涙 so sweet だから泣き止めよ Dear my wind オレの涙 so sweet 君の為に流し続けよう 『DEAR MY WIND』 作詞・作曲・編曲:ウィンディ
正の感情か、負の感情か。目が眩むというのは、ふた通りの意味をはらんでいた。目の前の欲に目が眩む。それは誰しもに訪れる感情。大切なのはその先さ。シャイニィが説く教え。そして、決して目を逸らしちゃいけねぇ。ありのままを見つめるんだ。
目の眩む幸せな天界と、目の眩むほどの崩壊を。それはかつての聖戦の始まりと終わり。俺たちはあの日、目を逸らしちまったんだ。天界を支配した歪な平和。そう、俺たちは、目の前の平穏に目が眩んじまったまま、長い年月を歩むことになったのさ。
精霊士官学校の成り立ちの背景には、かつての聖戦が関係していた。発起人はひとり残された美しき妖精王。私たちが、あの人を守れる強さを持っていたら。そして、その考えに賛同したシャイニィも、精霊士官学校の立ち上げに協力していたのだった。
俺たちは遠回りをしすぎたみたいだ。明日へ手を伸ばし、明後日を見失う。それが天界の在り方だった。きっと、目が眩む未来が待っているだろう。逸らしたくもなるだろう。そういうときは、一度目を閉じればいい。そして、思い浮かべればいいんだ。
眩しいほどの未来。そんなものは存在しないかもしれない。だが、手を伸ばさなきゃ掴むことも出来ない。シャイニィは小さな光が歩むべき道になるべく、その教えを説く。これからの俺たちは、肩を並べて歩くんだ。決して、目を逸らすことなく。
雨が降るわけでもなく、晴れ渡るわけでもない、そんな中途半端な空模様。私が生まれたのはそんな中途半端な日だった。そして、私という中途半端な存在が生まれてしまったの。曇り空の下、クラウディは伏目がちに小さな声で講義を始めたのだった。
天界の長い歴史の中で、闇の力は妖精たちから異質だと思われていた。そう、闇は相反する魔界の象徴だからと。なにも、私は望んでこの力を得たわけじゃない。クラウディが持っていた資質。私のような血筋の存在は、生きづらい世界だったのよ。
私は無理しながら普通に生きることは出来なかった。だから、仕官学校に入った。ここでなら、私のような存在でも、力さえ手にすれば生きていけるから。誰かを怨むでもないクラウディは、自らの資質を怨み、そして、その怨みを力へ変えたのだった。
いつまでも晴れなくていい、雨も降らなくていい、このもやもやした感情を抱えて生きていく。それがクラウディの選んだ道。それに、曇り空はどっちに転がるかわからないの。次は晴れるかもしれない、雨が降るかもしれない、そういうものなのよ。
聖戦が終わったいま、クラウディに訪れた心境の変化。私は晴れなくていい、雨も降らなくていい、ずっと曇り空でいい、そう思ってた。だけど、いまはどっちに転んだとしても、別に構わないわ。その心境の変化は彼女なりに成長した証だった。
一年のほとんどが雪に覆われている街で生まれ育ったスノウィは、その純白の景色が当たり前になっていた。どこまでも白は続き、そして煌びやかな街並みに鳴り響く鈴の音。だけど、大人になるにつれて、みんな染まってしまう運命にあるんだ。
幼き日から、あまり感情を表に出すことのなかったスノウィ。彼の心に積もり続けたのは真っ白とは異なる感情。どうして、彼らはあんなに楽しそうなんだろう。どうして、彼らは変わらずにいられるんだろう。並んだ三つの雪だるまを眺めていた。
どこまでも白くならなければ、僕は僕でいられないんじゃないか。そして、名前を捨て、士官学校への入学を果たした幼き日のスノウィ。僕は彼らとは違うんだ。彼らのようになってはいけない。だから、もっと白く。どこまでも、白くならなきゃ。
だが、スノウィは自分で気づいていた。自分がつまらない存在になろうとしていることに。違う、僕は正しいんだ。そんな彼の耳に入り続けるのは、染まることなく生き続ける同郷の三人の存在。彼らこそ、幼き日から染まらずに生きていたのだった。
様々な感情がぶつかり合った聖戦。僕はなにが正しかったのかはわからない。だが、誰かの感情にゆれ、そして誰かの為に染まる。その事実を前向きに受け入れ始めていた。みんなはどうなるのかな。そんな新しい想いに染まり始めていたのだった。
それじゃあ、みんな最後に手を伸ばしてみようか。サニィは晴れ空へと手を伸ばしてみた。私たちはこの晴れ渡る空に感謝を伝え、そして力へと変える。だから、どんなに辛いときでも、心を晴らしていきましょうね。きっと最後は、晴れるはずだから。
降り続く雨は、決して悲しみだけじゃありません。静寂を包む雨音、その音色は心を落ち着かせた。だから、心に降る雨を大切に。無理に晴らす必要はないんです、私たちは私たちらしく、それが私たちの心模様なんです。それを肯定してあげましょう。
きっと、そう遠くないうちに、オマエらは戦場へと出ることになるだろう。シャイニィは静かに語り始める。沢山の輝きに出会うだろう。だが、決して目を逸らしちゃいけねぇ。俺たちは変わっていく、そう、ひとりひとりが変わらなきゃいけないんだ。
どう転ぶかわからない、私たちの曇り空。だけど、私たちはそれでいいのよ。無理に晴らさなくていい、無理に悲しまなくていい。もやもやとした感情。言葉で言い表せない感情。私たちはそれでいいの、だって私たちは、初めからそういう存在だもの。
これは僕の言葉じゃないよ、教えろって言われたから。スノウィが講義の最後に残した言葉。僕たちはもう一度歴史を始める。真っ白なページに刻んでいくんだ、って。過去を否定するわけじゃない、すべてを受け入れて、新たに刻むんだ、ってさ。