私はずっとひとりだった。そして、ドライはひとりで散った。だけど、目を覚ましたとき、彼らは、彼女らは私の手をとってくれたの。だから、私はいまここにいる。そう、私はひとりの女になったんだから。ナンバーズと呼ばれていた少年少女たちは神才の元を離れ、自らの足で自らの道を歩み始めていたのだった。
私たちは捨てられた。使い捨てられました。私たちは人ですらなかった。道具に過ぎなかった。フィアが打ち明けた胸中。だから私たちは、あなたに感謝しています。聖導院に差し込んだ温かい光。これは、私たちなりの恩返しです。あなたが守りたいすべてを、私たちが守ります。私たちを、人にしてくれてありがとう。
どうやら、彼らも動き出したみたいなんだ。闇通竜テンゲンへと伝えられた動向。やはり、やっかいな存在ですね。常界を襲う神々による災厄、その裏側には分かたれたふたつの道。どちらが正しいか、その証明をしなきゃいけないね。そう、黄金の夜明けを手にするのは我々だ。もうすぐだね、世界に夜が訪れるのは。
例外なく発生していた風の災厄。神々の猛威に対抗するのは人々の想い。私たちはあの日、みんなの居場所を奪った。ドライの後悔。だけど、いまは違う。この世界で、私たちは生きていくって決めたんだ。この場所を、あんたたちの好きにはさせない。
おばちゃん、もうあんまり体力ないから長引かせないでね。オーディンは自嘲しながらも、楽しげな笑みを浮かべていた。今回のは命令だから、思う存分やらせてもらうよ。だとしたら、私も思う存分やらせてもらいます。フィアの瞳に光が宿る。
私は従ってるだけ。ヘズが巻き起こす風が奪う沢山の命。そこに、理由なんてない。だから、あなたたちの言葉を聞く理由もないの。なぜ、世界が生まれたか。そこに理由はない。そして、始まりに理由がなければ、また、終わりにも理由などないのに。
いいな、みんなキラキラしてて。オーディンが見渡すと、そこには四人の女が立っていた。いいよ、四人相手で。私ってモテるねー。そうだ、一度これ言ってみたかったんだ。死にたい子から、前に出ておいで。そして四人は一斉に飛び出したのだった。
いくら老い先が短くても、死ねない理由が出来てしまったのでな。ブラウンが求めたのもまた、新たな道を示してくれたひとりの王の帰還だった。そして、今度こそ彼が帰ってくる場所を、守らなければいけないのだ。そこには、戦士の魂が宿っていた。
やっぱり、私は指揮官の器じゃないみたいね。槍を構えたミレンは楽しそうだった。どうして、そんなに楽しそうなのかな。オーディンの純粋な疑問。どうしてわからないのかしら。だって、あなたを討つことが出来れば、あの人へ近づけるじゃない。
あのときの借りを、まだ返せてなかったしね。雨降る王都で儚く散った想い。私はべつに、あいつの為なんかじゃない、私の為だから。あいつの口から、あいつの言葉で理由を聞かなきゃ、納得出来ないのよ。ヒルダは無数の矢を宙へと放つのだった。
アタシが知りたかったのはこんな世界じゃない。オリナが抱き続けてきた想い。なにを言ってるの、これは君たちの王様だった男が選んだ世界だよ。違う、アタシは認めない。もし、これがあの人の本心だとしたら、アタシがお説教してあげるんだから。
あなたを討つべきは、きっと私じゃない。だけど、あの人がいないいま、あなたを討つのは私でありたい。ミドリは棍を構え、宙へと空を蹴る。もう、私はあの頃の私じゃない。沢山の涙を見てきた。だから、もう誰かが悲しむ顔は見たくないんだ。
君たちの言い分はわかったけどさ、君までここにいちゃっていいのかな。オーディンが槍を向けたのは天界を統べる女王でありながらも、常界へと降り立ったヒカリだった。あなたがいま、ここにいる。それが、私がいまここにいる理由になるんだ。
いいよ、そういうの。ヘズが飼いならした風へと届くことのない想い。あと、もう一歩。ミドリたちが募らせる想い。ここは、私たちだけで、どうにかしなきゃいけないんだから。私たちはまだ終わらないんだ、まだ終わらせたりなんかしないよ。
だから、私はここであなたを討つ。ヒカリが振り下ろした大剣。へぇ、立派な覚悟だね。だが、それをオーディンはいなしてみせた。いったい、その覚悟は誰に似たんだろうね。少なくとも、私が知ってるあなたの兄は、そんな善人なんかじゃないよ。
均衡する風のぶつかり合い。そして、そんな均衡を崩したのもまた一筋の風。邪魔をしないで。感情を顕にしたのはヘズ。どうして、あなたがここに。戦場での再会、かつてミドリへと吹いていた向かい風は時を経て、追い風へと変わっていたのだった。
そう、いまの彼は世界の敵なんだ。オーディンの口からこぼれた言葉。そっか、やっぱり血って争えないんだね、ちょっと妬いちゃうかな。ヒカリは悲しそうに、だけど嬉しそうに笑ってみせた。それなら、やっぱり私は負けるわけにはいかないよ。
仕方ないから、仕事してやってんのよ。ヘグニが引き起こした闇の災厄。あたり一面は闇に包まれた。ありがとう、私の味方をしてくれて。その闇に乗じて、忍び寄る人影。さぁ、ここは誰にも見えない。だから、世界で一番残酷な争いを始めましょう。振り上げられた闇魔女王の大鎌。あなただけは、私が葬り去るのよ。
まさか、君が来るなんてね。無の災厄を引き起こしたヘルヴォルと対峙していたのは、長い髪をひとつに束ね、鞭を構えた女だった。彼は、偽り続ける道を選んだ。そう、偽りの王の為に。だから、代わりに私が相手になる。偽りの英雄に仕立て上げられた少年は青年になり、そして、偽りの王への道を開こうとしていた。
私は知っている。フュンフが立ち向かった暗闇。人はね、誰しもが朝に生まれ、光を授かる。やがて訪れる暗闇。だけど、その暗闇を抜けた先には光差す未来が待っているの。私たちはまだ、生まれたばかり。そして、光を授かった。そして、暗闇が訪れた。だから、私たちは一歩を踏み出す。未来への一歩を踏み出すの。
俺はすべてを否定しない。ゼクスが背負ったのは、過去の自分の生き方。だから、きっといまに通じたんだ。どんなに憎くても、辛くても、それはすべてひとつの未来へと繋がっている。だけどな、俺はあんたを否定する。視線の先に浮かぶ創無神。すべてを無に帰すだなんて、馬鹿げている。すべてに、意味があるんだ。
黄金の夜明けの果てに、焼け落ちた千年書庫。だが、大切な本だけは、タシンの腕の中にあった。やはり、いつの時代も、歴史は繰り返されるの。その呼び名は時代と共に代わりながらも、世界を統べる「王」という存在は、いつの時代も存在していた。そうよ、いつの時代も王は「偶像」でしかない。すべて、偽りなの。
ずいぶんと、わかりやすいことをしてくれる神様なんだね。フュンフが立ち向かったのはヘグニ。あなたたちは、この時代に存在しちゃいけない。だから、歴史の闇に消えてくれるかしら。光が失われた闇の中、フュンフの瞳にだけは光が宿っていた。
なにを言っているのかしら。常に、歴史の裏側には神サマが存在していたっていうのに。だから、私の前にひざまずきなさい。振り下ろされた大剣が壊す世界。この災厄の意味は、すべての人間の為なのよ。ま、私にとってはどうでもいい話だけどね。
ヘルヴォルの力により引き起こされた無の災厄。そこにはなにも存在していなかった事実。そう、僕らは過去を否定して、未来を再創するんだ。どんなに辛い過去があっても、人はそれを乗り越えるんだ。ゼクスは自らの過去に立ち向かったのだった。
みんな、怖がらなくていいんだよ。僕たちが楽にしてあげるから。辛い過去は消せばいい、より良い未来にだけ縋って生きればいいんだよ。一太刀が切り捨てた過去、一太刀が生み出した未来。そう、もうなにも悩まなくていいよ。ただ、縋ればいい。
これが人の為だとしたら、俺はアイツを許すわけにはいかないな。闇に浮かぶ人影。アイツは、いつだって光輝いていた。だから、俺はアイツの闇になれたんだ。ランが構えた銃が撃ち抜こうとしていたのは、遠く離れてしまったあの日の心だった。
そして、そんなランから伸びた影より現れたのはリオ。いい加減、彼を楽にしてあげましょう。リオの心は変わらなかった。彼はもう、王じゃない。そして、あなたたちの道具でもない。彼はひとりの人間なの、だから、すべてを許してあげましょう。
なにもかもが失われ行く空間に立ち上る狼煙。過去を消せるなら、それもまた素敵かもしれないな。ローガンが許せなかった過去、それは聖神への道を選んだ聖王のことだった。だが、いまならまだ、俺たちが正してやれることも出来るんだからな。
君にはまだまだ未来が残されている、だからより良い未来へ生きたいでしょ。だが、フェリスはヘルヴォルの言葉を否定した。私の生きる未来は、隣にパパがいて欲しいんだ。それじゃあ、とても残酷な話だね。これは君の大好きな彼の命令なんだよ。
あんたらじゃ暇さえ潰れないわ。だが、そんなヘグニの尖らせた口から次に出た言葉は違っていた。そうよ、私はあんたみたいな子の相手をしたかったのよ。ヘグニの瞳に映りこんだユカリ。そう、あんたみたいな、復讐心に染まった顔が見たかったの。
振り上げられたのは常闇の死神の大鎌。ねぇ、見えるかしら。ユカリが見上げた闇に染まる空。やっと、この日が来たの。だけど、やっぱり見ないで欲しいかな。そこには女王の責務を忘れ、そして、ただあの日の闇に捕らわれたユカリがいたのだった。
いつの時代も、王様ってのはよくわからない生き物だな。ギルガメッシュでさえ、理解に苦しむアーサーの思考。この常界は、彼が愛していた世界なんじゃないのか。そして振るわれた鞭を合図に、無数の刃がヘルヴォルへと飛びかかるのだった。
さすがに、相手が悪かったかな。ヘルヴォルの顔はゆがみ始めていた。だが、かろうじてすべての刃を叩き落としたとき、再び無数の弾丸がヘルヴォルを襲う。そう、無数の弾丸が。そろそろ、俺たちの出番だ。このときを、ずっと待っていたんだぜ。
くっ、くっ。不思議な部屋に響き渡る笑い声。私の見立ては間違ってなかったみたいじゃな。イネスは指先で書を記す。いつ来ても、この部屋は趣味が悪いですわ。壁に立てかけられた人体模型と人体標本。薄暗い明かりは灯された蝋燭。偽物の蜘蛛の巣。そして部屋の中心には、ぐつぐつと煮立った大釜が置かれていた。
間違いない、私の研究の成果により、教祖様は完全なる復活を遂げる。瞑想竜イネスは夢を見る。長かった、だけど短かった。それはかけた情熱と時間。もう、わたくしに気づかないなんて、本当にお間抜けさんですね。そっと閉じられた入口。でも、これで道を見つけましたよ。その道は、偽りの道へと通ずるのだった。
この世に起きる難事件をまるっとズバッと解決しちゃう名探偵、その名はラパン。依頼報酬は決まって遊園地の一日無料券。それ以外の報酬は大金が積まれようと絶対に受け取らないという噂。遊園地でしか買えないキャラメルポップコーンが大好物で、それを食べるために遊園地に入り浸っている。 デザイン:スノウ
リスネコのお面を外したら、探偵兎ラパンの本領発揮。虫眼鏡型ドライバ【フォーカス:セカンド】で塵すら見逃さない。彼女がそのレンズ越しに見つめるのは真相であり、悪に染まった心。私にかかればズバっと解決。あなたの心、見透かしちゃうわっ。そんな掛け声と共に、事件は終わりを告げる。 デザイン:スノウ
彼はもう、この世界に必要ないのよ。狙いすましたかのように現れた人影。この数を相手に、いつまでも持つほどの力はないわよね。開かれていたのは大きな扇子。それに、もう役目は果たしたんでしょう。だから、これ以上の戦いに意味はないわ。
そこをどいて。アオトたちの背後、放たれたのは水龍を纏いし大きな一太刀。左右へと飛びのくアオトたち。そして、その一太刀はシグルズへと向かう。ふふふ、アンタもいい男になったじゃない。シグルズの頬は、さらなる紅潮をみせるのだった。
そう、今日の私は追い風なの。予期せぬ加勢と、変わった風向き。そうね、思う存分目立たせてもらえるかな。だって、このときのために、私たちはずっと活動してきたんだから。神サマなんて完全な存在は、この不完全な世界に必要ないのよ、けひひ。
ヘルヴォルへと撃ち込まれる無数の弾丸。はじけ飛ぶ薬莢が盛り上げるクライマックス。いいか、よく見とけよ。その銃声は、いつかの瓦礫を粉砕した銃声と同じ歓声だった。さぁ、始めようぜ。これが俺たちの選んだ進むべき道さ、レッツ、ハッピー。
常界へ無数の被害をもたらした炎の災厄。そして、その炎の災厄はアカネたちによって食い止められた。だが、常界の人々の心には、神々への恐怖が植え付けられ、それと同時に、その場を救った「正体不明の女」へと、賞賛が向けられたのだった。
また会える日を、楽しみにしているわ。そう遠くない未来に会いましょう。食い止められた水の災厄。その最後の一太刀は「正体不明の男」によるものだった。だが、人々は知っていた。その正体不明の男が聖戦の二次災害から人々を守っていたことを。
風が止んだとき、そこには災厄の爪あとが残されていた。まぁ、あんたたちもよく頑張ったわよ。そんな言葉を残したのは、風の災厄を阻止する最後の風を放った「正体不明の女」だった。そして、その女へは数え切れないほどの賞賛が集まるのだった。
止んだ無の災厄。お前たちだったんだな。ギルガメッシュがついた溜息。二次災害の被災地に現れ、名乗ることなく消え、報告書に記載されなかった「正体不明の男」の存在。だが、そんな男もまた、救われた被災者たちの記憶に刻まれていたのだった。
私も戦わせてもらうね。神を前に、傷だらけのヒカリへと手を差し伸べたヴィヴィアン。これはあの日の続きじゃない。新しい始まりなの。そんなヴィヴィアンの背後に降り立つ六つの光。私たちもいますよ。そこには真精将たちが杖を構えていた。
ユカリがついた膝。格好悪い姿をみせないで頂戴。そんなユカリの手をとったひとりの女。彼女があなたの敵なら、それは私たちの敵でもあるの。ユカリが背中を預けたのはファティマ。そして、そんな彼女たちの背後には六人の真魔将が控えていた。
始まりが存在するから、終わりが存在するのか。終わりが存在するから、始まりが存在するのか。それは表裏一体の存在。私の役目は、イマの世界の終わりを観測すること。胸の奥底へ抑え込む想い。どうか、幸せな道を。統合世界に下された世界の決定。少し早いけど、オヤスミナサイ。さぁ、終わる世界へ。
お時間ですよ。細い足へとはかせた白い靴下。これからが楽しみですね。洗い立ての身体に羽織らせたのは白いシャツ。そして、その白を包み込むように、黒い靴と黒いジャケットを着せた執拗竜ティルソン。やっぱり、あなたって方は悪趣味ですね。私はそんなあなたを愛おしく思います。差し出された右手に口付けを。
人って生き物はね、いつだって誰かに従いたいんだよ。潜在的な拘束願望。そこには選択が生じなければ、責任も生じることはない。そう、だから僕が使ってあげようと思うんだ。名も無き教祖は再び砂上の楼閣へと。だけど、勘違いしないでね。僕は君に従うわけじゃないから。僕は僕、誰にも従うことのない神様さ。
そう、僕は奇跡やドラマを必要としていた。それは、その先の未来を見据えて。だけど、いまはもう、そんな陳腐な涙は必要ないんだ。それは、その先の未来を見捨てて。ありがとう、これが世界の決定なんだね。そうさ、もう考える必要はないんだ、明日とか、明後日とか、未来とか、幸せとか、悲しみとか、イラナイ。
だけど、ありがとう。僕がこうして、もう一度立ち上げることが出来たのは君のおかげでもあるんだよ。そう、初めからこうしていればよかったんだよ。あのときの争いのように、僕は裏切る存在なんだ。いくつもの刻を遡り、辿りついたのは神竜戦争の終結日。僕は僕で、あの頃の続きを始めさせてもらうとしようか。
彼女が偽りの王への道を進むのであれば、僕は偽りの神への道を進むだけさ。そう、だから彼女は、彼女たちは、僕に、僕たちに縋るしかないんだから。だけど、これは僕たちだけの密約さ。さぁ、だから素顔を見せてごらんよ。外されたのは左半分の仮面。とても綺麗な瞳をしているじゃないか、まるで、――のような。
この不完全な世界は、ありもしない完全を求めることしか出来ない。だから、私が偽り抜いてみせよう。私は偽り続けることしか出来ない偶像なのだから。切り落とした髪は覚悟の証。これが、私達の選んだ償いの道だ。しばらくの間不在だった常界の玉座。そこには、偽りの王、聖常王クロウリーが鎮座していた。
各地で発生した災厄は、咎人であった3人の少年少女たち、そして消えた常界の王の元部下たち、そして名前を得たばかりの少年少女たちの活躍と、天界魔界からの応援により鎮火の一途を辿っていた。だが、そんな彼らの活躍を誰が認めただろうか。
世界評議会広報局の発表はこうだった。聖戦より続く二次災害の対処及び、六つの災厄は名も無き4人の存在により鎮火した、と。そして、そんな4人を統べるひとりの少年。まるで少女のような彼こそが、新たな常界の王に相応しいのではないか、と。
翻訳っていうのは、人によって意味が変わるんだよ。そして、そのすべてが正解なんだ。だから、僕は新たな解釈をしようと思う。黄金の夜明けが訪れた統合世界の裏側には、完全な夜が訪れている。そう、いつだって世界はそういうものなのだから。
そして、そんな少年の推薦者として名乗り出たのが、現最高幹部として君臨していたギンジだった。俺はこいつを信じる。だからどうか、みんなも信じてやってくれ。突如現れた英雄に、常界の不安に怯える人々は歓喜した。そう、王が再誕したと。
これはアイツが私に教えてくれたことだ。人は悲劇を乗り越え、強くなる。そう、だから利用させてもらっただけさ。こうして生まれた「偽りの王」。皮肉なものだな、私は結局、偽ることしか出来ない。だが、今度は最後まで偽り抜いてみせようか。
僕は世界中の誰よりも幸せなんだ。あの雪降る日に、肯定された命。そして、彼へ向けられる笑顔は、歳を重ねるにつれ増えていった。やっぱり俺は幸せものだ。そう、だから俺こそが、世界の悲しみを背負うべきなんだ。そんなアーサーへ捧げられた祝福。誕生日、おめでとう。どうか、みんなの言葉が届きますように。
そして、常界の王の間に集められた数々の人影。咎の汚名がそそがれた3人、天界、魔界からの代表として来た女王ふたり。また、かつての王の部下であった円卓の騎士たち。その他、大勢の実力者たち。そこには、常界の最高勢力が勢ぞろいしていた。
では、王としてここに宣言させてもらう。口を開いた聖常王。私の目的はたったひとつ、そう、神界へと消えたかつての王、アーサーを常界へ連れ戻すことだ。それこそが、すべての災いから、ディバインゲートから統合世界を救う唯一の術なのだから。
聖常王が明言したアーサーの救出。その言葉の真意を、教えてください。レオラが浮かべた不安な表情。なぜなら、聖常王の口角は1ミリも上がりはしなかった。無駄な質問は止せ。この言葉の意味に気づいているから、そんな顔をしているんだろう。
王の間に走る緊張。その場の誰しもが聖常王の言葉の真意に気づいていた。逸らされる瞳。みな、気づかないフリをしていた。もう一度、言わせてもらう。かつての王、アーサーを常界へ連れ戻せ。そして続く言葉。そう、聖神アーサーを処刑する。
その路地裏は迫害された獣たちのたまり場だった。俺たちはこの箱庭でしか生きることが出来ないんだ。だが、ここだけは俺たちの楽園だ。そう言い残し、姿を消してしまった親友。そして、エジィが再びその姿を目撃したのは、光聖人に敗れ、配下となる道を選んだあとのこと。俺たちは、別々の場所を見つけたんだ。
光剣徒エジィは光聖人の剣だった。この剣はアイツを守る為だけに振るう。たてた誓い。なら、丁度よかった。あなたのその剣は私の為であり、友の為にもなるってことね。別々の主君を選び、別々の道へと進んだニ匹の獣。そして、二匹の獣の道は再び交わる。そう、英雄っていうのはね、討たれて初めて英雄になるの。
チャッピー、おいで。声をかけたのは闇聖人。君は、いつまでも私のそばにいてね。そんな寂しそうな闇聖人へと寄り添うチャッピー。安心シテ、チャッピーハトモダチ。シオンノコト、守ルダヨ。いつも、ありがとう。ふたりの時間を壊した第三の言葉。忘れないでね、君は「聖人」という一種の生き物だということを。
もちろん、わかってます。闇聖人は声の主を確認することなく、落ち着いた口調で答えた。私が聖人としての責務を果たすことこそ、私をこの場所へと育ててくれた恩返しなんです。たとえ、大切な家族を傷つけることになったとしても、それらも受け入れてくれる、大切な家族たちなんです。だから、私は裏切りません。
しばらくぶりだが、大きくなったな。背後から呼び止めた無聖人ニコラス。もっと驚いてくれよ。振り向いた顔が証明する血の繋がり。いまさら、父親面してんじゃねぇ。青年の瞳に映るのは自分へと突きつけられた銃口。たまには父親らしくさせてくれよ、だから、オマエにプレゼントだ。鳴り響く銃声。グッドラック。
無事に、任務を果たしてくれたようだな。ダンテが賞賛を送ったのはグライフ。二択の三択かと思っていたが、まさか一択だったなんてな。そして、グライフが開いた神界への道を歩むダンテ。なんか物騒な場所だな。その少し後ろにはフォルテがいた。
だけど、なんでわざわざこんな場所を進むんだよ。その開かれた道は、他者からは観測出来ない特別な道だった。神であるアンタが、どうして隠れる必要があるんだい。そんなフォルテの疑問を解決したのは、無数の見えざる人影による襲撃だった。
悪いが相手をしてやってくれ。ダンテは立ち止まることなく、ただひたすら歩き続ける。そんなダンテを守るように、無数の人影へ大きな炎の拳を打ち込むフォルテ。いいね、準備運動かい。いいや、争いは終わりだ。そして、扉へ辿り着いたのだった。
開き始めた扉からこぼれだす光。その奥には玉座があった。高みの見物とは、いい身分になったものだな。歩み寄るダンテ。だが、こうしてようやく落ち着いて話をすることが出来るな。引き抜かれた刃に映る鋭い眼光。俺が問おう、貴様の見解を。
そして、刃を首元へ突きつけられようと、その玉座の主は動じることなく、ただ余裕の笑みを浮かべるのだった。俺を殺したところで、なにも変わらないさ。すべては世界の決定なんだ。そして、玉座の主、アーサーは立ち上がる。さぁ、時代は変わる。
常界遠征から戻った五色の魔将が踏み入れた部屋。真ん中に置かれたテーブルと、並んだ六つの椅子。そう、そのテーブルには六つの椅子が用意されていた。そして、すでに埋まっていた一席。もう、待ちくたびれたわよ。雪無魔将シラユキの帰還。待ちくたびれたのは、私たちの方よ。再会の涙は、次の戦いの力へと。
その機体が金色の光に包まれているのか、それとも金色の光を放っているのか、その機体は金色の光と共に存在していた。どうして君が金色なのか考えたことあるかな。オリジンへの問い。いつも金色の輝きに抱かれたい。だから、君には私のすべてを込めたんだ。そしてまた、聖なる扉も金色に輝いていたのだった。
聖常王についてきたのは従者たちだけではなかった。これが償いと言うのなら、俺も共に歩もう。流れ着いたショクミョウ。そして、彼の耳に届いた意外な言葉。誰だっけ。北従者の言葉。どちら様かな。首を傾げる東従者。無言の西従者と南従者。だが、そんな彼へ、聖常王は懐かしい眼差しと共に手を差し伸べていた。
演炎奏竜トロンボが呼び出されたのは、かつての主君が鎮座していた王の間。だが、いまその場所に鎮座していたのは異なる男。俺をどう思おうと、知ったことじゃない。だが、いまここは俺のものだ。だから、俺の言うことを聞いてもらおう。乱暴でありながら、その言葉を口にした意味に、彼女は親しみを覚えていた。
真夜中に鳴り響いたのは空を斬る音。演水奏竜フルトは慌てて部屋を飛び出し、その音へと近づく。ダメですよ、まだ安静にしてないと。その音の主は、彼女の言葉に耳を傾けなかった。ただ、無心に振り下ろされる刀と、前だけを見つめる瞳。そう、流水竜はただ、前を見つめていた。遠ざかる兄へと近づけるように。
演風奏竜スネアに命じられた仕事は竜道閣の見張りだった。異常を観測次第、すぐに報告せよ。その異常がなにを指すのか、答えは伏せられたまま。だが、ごく僅かな竜王家の竜たちだけへは知らされていた。竜道閣に存在するとされる幾重にも連なった綴られし間。その間から、いまも竜界の姫が戻らないという事実を。
演光奏竜トランペが訪れたのは、文明竜たちが眠る安息の地。次第に目を覚まし始めるも、行方不明のかつての竜王へと想いを馳せるばかり。だけど、私は思うんです。きっと、かつての竜王さまなら、後任に紅煉帝を指名したんじゃないか、って。求めたのは自分にない力。だから、私は少しだけ安心しているんです。
演闇奏竜サクスが興味深く眺めていたのは、人工、次種族、混種族の異なる五匹の竜たちだった。聖常王の登場により、変わった世界評議会の体制。新しい王様は、いったい彼らをどうするつもりなんだろう。そして、その裏で糸を引く、竜を殺さんとする屠竜者を。うーん、やっぱり仕事は盛り沢山みたいですね。
演無奏竜グロックが同伴したのは秘密裏に行われた会合。よく来てくれた。それは世界評議会の本部からは遠く離れた小さな小屋だった。俺を持て成すには、随分と寂しい場所じゃないか。だがまぁ、たまには悪くはないな。向かい合った聖常王と紅煉帝。先に言っておく。俺に指図はするな。それが互いの為ってやつだ。
どっちの方が楽しめるかな。炎調神クランチは闇調神へと問う。アタシが彼と共に戦うのか、それとも敵として目の前に立ち塞がるのか。もうこの世界は、とっくの昔から歪んじゃってんのよ。その証拠に、刻の狭間には誰ひとりとして存在していなかった。世界は終わりへと向かってる、だからアタシは好きにしたいの。
闇調神ファズは退屈そうに常界を見下ろしていた。ぜんぜん僕好みの選択じゃないよ、あの頃のキミはどこへ行っちゃったの。聖戦を終わらせた闇魔女王への興味は薄れていた。だけど、僕の担当はキミなんだ。だからさ、もうちょっと狂ってくれたほうがいいんだ。うん、そうしよう。丁度いい子がひとりいたよね。
死刑執行人学園に存在する開かずの間、それは薬学部による実験室。なぜ、実験室が開かずの間と呼ばれているのか、その理由はただひとつ、常に危険な実験が行われているからだった。そう、あまりに危険なため、普通の生徒には扉を開けることすら禁じられていたのだった。そんな部屋にスパジローは篭っていた。
ぐふふ、ぐふふふふ。実験室からもれる気持ちの悪い笑い声。悪いが、もう少し普通になってくれないか。実験室に立ち込める瘴気に臆することなく、学園長は薬学部特別顧問スパジローへと歩み寄っていた。いまのうちに特効薬を作っておいて欲しいんだ。そう、きっと俺たちは、アイツと戦うことになるだろうからな。
いつまで探してるつもりなの。ここは最古の竜の血が滴る伝承のほこら。あなたは、誰。道化嬢が振り向くと、そこにはハムがいた。だから、いつまで探してんのって聞いてんのよ。それはすなわち、諦めを促す言葉だった。だとしたら、私の答えはただひとつよ。両手に集められたのは、道化竜に教わった魔法だった。
そう、私は見つかるまで探す。道化嬢が放った闇をいとも簡単に消し去った古詛竜ハム。アンタ、戦える体じゃないんだから止めときなって。だが、道化嬢の瞳は輝いていた。じゃあ、どうして私を止めに来たの。そう、障害の出現と結びついた希望。私、あなたの話も調べたの。一族を裏切り神に加担した、元お姫様ね。
良薬は口に甘し。それは死刑執行人学園薬学部の実験室に掲示されていた言葉。苦い薬なんて、誰も飲みたくないに決まってます、馬鹿なんですかね。だが実際には違っていた。そう、実験室の主が定義する良薬は、毒薬のことを指していたのだから。
王の間を出た六人。そして、アカネがギンジへと述べた感謝。色々、ありがとな。だが、次の瞬間、アカネは眉間に皺を寄せ、ギンジを見つめた。全部知ってたんなら、なんで先に話さなかった。行き場のない想い。どうして、話してくれなかったんだ。
ギンジはその視線を交わそうとはしなかった。俺には俺の、俺にしか出来ないことをしたまでだ。それは正論だった。ただ我慢を続け、評議会の犬であり続けたギンジの後ろ盾なく、聖常王の誕生はありえなかった。だけど処刑するって言ったアイツは。
ありがとう、アカネくん。優しく声をかけたヒカリ。そして、そんなヒカリを見つめる五人。どうしてだろう、やっぱりこうなるって、わかってた。溢すひとり言。だけど、やっぱりちょっと複雑だよね。それは女王としてでなく、妹としての言葉だった。
だけど、ヒカリはわかっててここへ来た。そういうことなのよね。にこりと笑い返したヒカリ。ユカリの言葉は真実だった。きっと悲しみの結末をみんなが望んでる。そこには幸せな世界が待っている。だから、私はこのまま進み続けることに決めたよ。
僕にも、少しだけわかる気がするよ。口を開いたアオト。きっと、兄弟ってそういうものだと思う。例えその道が間違っているとわかっていても肯定をする。そして、いつか真正面から否定する。だから、僕たちは迷わずに進み、そして、彼を否定する。
アカネも、それで文句ないね。ミドリは問う。文句もなにも、俺は初めからそのつもりだ。そして解かれた不穏。ギンジ、悪かったな。俺のほうこそ悪かった、もっとオマエたちを信じるべきだったな。再び集いし六人。それじゃあ、場所を移そうか。
ギンジが案内したのは常界のとある地下施設。ここなら評議会の連中に聞かれねぇ。そして語られた評議会への不信。だが、統合世界の平和は評議会の手により守られてきた。だから、評議会を失えば民は混乱する。そう、まだ犬である必要があるんだ。
だから、聖常王は。ミドリのついた相槌。そう、あえて世界評議会の形式にのる形で即位した。アイツだって、わかってる。やるべきことはひとつじゃねぇ。聖神のいる神界、六聖人のいる世界評議会、そのすべてが、いまの俺たちにとっての敵なんだ。
でも、それじゃあどうして聖神討伐なのかな。アオトの抱いた疑問。きっと、六聖人の出方を伺うためよ。代わりに答えたのはユカリ。聖神の処刑を助長するのか、阻止しようとするのか。それと、もうひとつの可能性。その両方の動きがあるとしたら。