ねぇ、どうしてふたりが争わなきゃいけないの。一歩も引くことのないふたりの女王を見つめる人影。アイツらは、小さいけれど、立派な女王様だってことだよ。だから全部が終わったとき、オマエが慰めてやれよ。いままでお疲れ様、ってな。
きっと、ユカリちゃんなら大丈夫かな。ヒカリが差し出した小指。どういうつもり。私とは、きっと手なんか繋げないよね。だから、指だけ繋いで欲しい。そして、約束をしよう。ユカリちゃんが、この世界のみんなのことを、幸せにしてみせる、って。
だったら、その目論見は外れさ。リイナに届く隠者の報告。そして、同時にロプトへ届く堕闇卿からの報告。そんな、まさか。そして、リイナはヒスイへ告げる。そっちの方は任せとけ。だから、オマエは目の前の邪魔者を、こっから追い出してやれ。
どっちが勝つかな。ヒスイは両手を伸ばしていた。どっちでもいいか。ヒスイは両足を伸ばしていた。だからオマエら、好き勝手暴れろ。ヒスイは空を見上げていた。俺は、今度こそ守れたんだ。ヒスイは誰もいなくなった戦場で、瞳を閉じたのだった。
カゲロウの色の無い瞳は、ただカルネアデスを見つめていた。絶体絶命ってやつじゃない。ラプラスの額に滲む汗。ううん、きっと違うぴょん。そして、カゲロウが差し出したデータディスク。そのディスクに書き記されていた言葉。炎才の息子より。
不完全なリブートながら、任務を遂行したカゲロウ。マスターハ、先ニ未来ヘ進ミマシタ。ダカラ、ソノ道作リオ願イシマス。カゲロウの炎は偽りの未来を燃やし、デオンは王への忠誠を燃やす。コガネは所長の為に最後まで立ち続けたのだった。
そろそろ教えてもらえるかしら。画伯の攻撃をかわしながら、サフェスへと詰め寄るコスモ。じきにわかるさ、その時が訪れれば。やっぱり、あんたはくえないわね。だが、そんなコスモも、いまの自分達がここで戦う意味に喜びを感じていたのだった。
みんな、待っていたよ。そこは幸せの白兎研究所の常界支部。そこにはメビウスがいた。偶然か必然か、集いしは聖暦の天才。そして、そこにいない天才が解放したディバインゲート。だが、その解放が予定より数刻遅れたのもまた、聖戦の因果だった。
早く席について。それ以上の説明は必要なかった。モニターに映し出されるのは各地へ設置された起動装置。中央には無数のコードに繋がれたレプリカが。シンクロ率、240%を突破。お願い。対ディバインゲート用守護防壁キュリケイオン発動。
しばらく見ないうちに、随分といい女になったじゃねぇーか。ただその場所で立ち尽くすことしか出来ないライルの側を通り過ぎ、そしてファティマへと歩み寄るのは現れた現天界の王、堕魔王ヴラド。いまでも俺の命令がきけるのなら、すぐ避難しろ。
ヴラドが口にした避難勧告。それがなにを意味しているのか、ファティマは瞬時に理解した。直後、背中越しに感じたのは憎悪の力。それがいまの、オマエなんだな。現れたのは、現魔界の王、堕精王オベロン。こうして、ふたりの王は再会を果たした。
見詰め合うふたりの王。そして、そのふたりの姿を見れば、互いに決めた覚悟は明らかだった。本当のことを、伝えなくていいのか。ライルが開いた口。いまさらコイツに、なにを伝えても、信じてもらうことなんか出来ねぇんだよ。それが天界の罪だ。
オマエらも、さっさとここから避難しろ。ふたりの王を前に、自分達ではどうすることも出来ないと悟ったライルとリオ。そして、いまだに言葉すら発することの出来ないファティマ。それじゃあ、始めようか。あの日の続きを、オレ達の戦いを。
向かい合うふたりの王。元魔界の王、そして現天界の王、堕魔王ヴラド。対するは元天界の王、そして現魔界の王、堕精王オベロン。そんなふたりを大切に想う竜神が守り抜いた、神も竜も、誰も邪魔することの出来ない最後の戦いが始まるのだった。