親子の話に水をささないで頂戴。ファティマの前に割って入ったのはリオだった。その後ろ、ヴィヴィアンを後ろから抱き止めたライル。天界の平和だとか、因果を断つとか、こんなやり方しか出来なかったのかよ。それは怒りであり、悲しみだった。
オレさ、全部知ってたよ。アイツとの出会いも。歳が近いオレを育てたのも、オレに戦い方を教えたのも、すべてはアイツを、誰かの子供を守る為だったんだろ。ごめんね、私の汚れた手で育てちゃって。それこそが、ヴィヴィアンの罪の意識だった。
だけど、最後くらいは世界の為に戦った立派なお母さんでいさせてもらえるかな。そして、ヴィヴィアンが振り払うライルの両腕。もう、頑張らなくていいんだ。えっ。そして両膝から崩れ落ちるヴィヴィアン。今まで育ててくれてありがとう、母さん。
大剣を握り直し、合図を送るライル。約束を忘れないで。共に同じ男を殺すと誓った約束。あぁ、オレは自由になるんだ。消えるリオの影。そして、なぜか目を見開いているファティマ。それはライルの背後に、更なる影が生まれていたからだった。
ひとりの女王は、光り輝く理想を掲げた。それは誰しもが幸せになる世界。誰かが言った。それは現実から目を逸らしているだけだと。だが、それでも理想だけを追い求める女王がいたとしたら。それは誰しもが出来ることではなかった。
ひとりの女王は、闇をはらんだ現実を掲げた。それは誰しもが辛さに耐える世界。誰かが言った。それは理想を諦めてしまっているだけだと。だが、それでも現実だけを追い求める女王がいたとしたら。それは誰しもが出来ることではなかった。
理想と現実、光と闇。表裏一体。だからこそ、ふたりは同じだった。背中合わせで見つめる未来で繋がる想い。もし、ふたりが手を繋いで歩くことが出来たら。それこそが、誰しもが望む未来。現実から目を逸らさず、そして理想を追い求める未来。
やっぱり、ユカリちゃんには勝てないか。すでに立ち上がることすらままならないヒカリ。だったら、負けを認めなさい。ユカリが突きつける最後の言葉。それでも、私は負けを認めることは出来ない。だって、こんな私でも天界の女王なんだから。
いまここで、アンタを助ける。それが俺なりの、王への忠誠さ。その王が、どちらの王を示しているのか。そんな質問は無粋だった。だったらワシも、王様に恩を売っとくか。そのとき、三人の目的は一致した。誰にもあのふたりの邪魔はさせない、と。
あまり、調子に乗らないほうがいい。スフィアの牽制。これは世界評議会の決定であり、世界の決定の一部なのだから。んなこと、初めから知ってたさ。オマエらの本当の目的は、この混乱に乗じて―。それ以上は、口に出さない方が身の為だ。
ヒスイの言葉を遮ったのはベオウルフだった。順調に進んでるかな。ロキが求めた報告。ええ、予定通りにコトが進めば、恐らくは。内緒話すんなって。そして、ヒスイは答えを告げる。オマエらは、いまからディバインゲートを解放するつもりだろう。
ご名答。響き渡る渇いた拍手。争うふたつの世界、力を抑えきれなくなったふたりの王。そんな力がぶつかり合ったせいで、世界の半分が消し飛びました。誰も疑いはしない話さ。例えそれが、彼らの力ではなくディバインゲートの力だとしても、ね。
満場一致、ってことでいいんだな。そしてヴェルンが腰をかけた玉座。それじゃあ、俺様からの最初の命令だ。いいか、よく聞けよ。ただ、口を閉ざして聞くことしか出来ない古神殿の竜達。いまこの時をもって宣戦布告をさせてもらう。さぁ、戦争だ。
私は勝負に負けるのが嫌いなの。投げられたサイが示した数は6。グッドラック。コスモの杵に宿る最大の力。戦う相手が悪かったね。サルバドールが上書いた未来の数は1。だったら、これでどうかしら。コスモは無数のサイをばら撒いたのだった。
あなたは、私の相手をするです。パブロが構えた筆。だが、すでに泣き出しそうなコガネ。さぁ、行くです。逃げるコガネ。待つです。それでも逃げ続けるコガネ。うーぅ、私は戦いとか苦手なんですよお。迫り来る脅威に、涙を流すしかなかった。
さぁ、これで終わるです。パブロが描いた未来に、コガネの逃げる道はなかった。だが、それでもコガネは満足そうな笑顔を浮かべた。所長、私は最後まで頑張れましたよ。そう、コガネは逃げながらも、最後の起動装置の設置を完了させていた。
都合のいい犠牲を、安売りしないでくれるかな。戦場に舞い降りたラプラス。どうして、君までここに。サフェスに生まれた疑問。どっかの誰かさんが、誰かの為に頑張ってるみたいだからさ。幼き日の友が動かしたのは聖戦の行く末だけではなかった。
早く私に掴まって。ラプラスが手を差し伸べたのは、かつて聖暦の天才と称えられたふたり。だが、そんな簡単に戦線離脱が許されるはずはない。画伯が描く未来、前へ進めば後ろへ進む。なによ、これ。そんな三人の真上に、自律の機体が現れる。