まさか、あなたが直々に乗り込んで来るとはね。ええ、みんなが道を作ってくれたのよ。ファティマが辿り着いた美宮殿。そして、そんなファティマに対し、ヴィヴィアンは落ち着きをみせていた。さぁ、私達は私達の戦いの続きを始めましょう。
あの棺は、あなたの仕業なのね。ファティマは問う。例え否定してたとしても、あなたはそれを信じるかしら。それがヴィヴィアンの答え。私としたことが、愚問だったわね。そう、誰かが私達に口実を与えてくれた、それだけで十分だったのよ。
だから私は、ずっと機会を伺っていた。もう一度、あなた達と戦争をすることを。その為に女王様を逃がしてあげたんだから。そして、私達は新たな女王を受け入れた。本当はそれで十分だった。だけどね、人質が欲しかったのよ。そう、王様よ。
すべての駒が揃った。だけど、それをあなたは壊した。それは堕魔王の復活だった。ねぇ、どうしてかしら。どうして彼はあなた達と一緒にいるの。だから、私が正してあげるのよ。あの日の彼は王様だった。だから私は、あの日の続きを始めるの。
美宮殿の玉座にひとり残されていたヒカリの元へ現れた訪問者。そして、ヒカリはその訪問者と初対面であるにも関わらず、それが誰なのか瞬時に理解した。そして吐き出されたのは、ふたりの体に流れる血を肯定する言葉。はじめまして、お姉さん。
そのすべてを受け入れたような顔、気に入らないわね。玉座のヒカリへと近づくモルガン。当然、知っているのよね。それはふたりの体に流れる妖精王の血。私はあの男が生まれる前に、創られた。そして、私は兄が生まれた後に創られたんだよね。
すべては禁忌の血の研究の為。そして、その研究の為に生まれたふたりに、禁忌の血が受け継がれることはなかった。だから私は必要とされなかった。そして父を憎むことで自分の存在を肯定したモルガン。あなたは、いったいどう思っているのかしら。
私は、ありがとう、と伝えたい。だから、私はいまここにいる。父が目指した世界を創る為に。それは堕ちた妖精王への肯定。父がいたから私が生まれ、沢山の友達と出会えたんだもん。そして、そんなヒカリに会いに、「友達」がやってきたのだった。
俺に出来ることなんて、初めから決まってたんだ。ヒスイはただ天界でひとり、そのときを待っていた。そして、そのときは訪れる。やっぱり、君が邪魔をしに来たんだね。いいや、違う。オマエらが邪魔をしに来たんだ。今も、そして、あのときもな。
勘違いしないで、あれはボクの仕業じゃないよ。ロキが否定した在りし日の聖戦を左右した神の悪戯。もっと大きな意志が働いたのさ。竜でありながら、神の血を引く君ならわかるだろう。すべてはそう、ボクたちの創醒の聖者の気の向くままに。
ねぇねぇ、私達を敵に回したいのかな。ロキのすぐ側には、シャルラ、マダナイ、スフィア、ロプトの4人がいた。誰からでもかかって来いよ。棍を構えたヒスイ。どうして、そんなにムキになるのかな。俺はただ、あのふたりの邪魔をさせたくない。
それはヒスイが抱いていた後悔。不本意な形でついてしまったかつての聖戦の決着。だから俺は、思う存分、あいつらに好き勝手戦わせてやりたいんだ。世界の行く末なんか、そんなのどうでもいい。それがヒスイのたったひとつの願いだった。
足手まといなら言ってね。懐かしい声。一緒にいてくれるだけで、嬉しいよ。ミドリは満面の笑みで返す。もう、戦うことは出来ないかもしれない。だけど、まだ彼にこの命の恩返しが出来てないんだ。ふたりは竜王家の力が眠る祠を目指していた。
ドロシーは長い眠りから目を覚まし、竜王家に伝わる伝承を追い続けていた。竜界のどこかにあると伝わる祠に滴る最古の竜の血。その血が決める未来。もし伝承が真実なら。踊る胸。だが、ふたりの長い旅路の果てに、俯いた少女がいたのだった。
よっし、ここにも設置完了だぴょん。慌しく常界を駆け回っていたのは助手兎を連れて天界を離れたカルネアデスだった。助手君、助手君、次はどこへ行ったらいいぴょん。子供の落書きのような地図を辿り、二羽はぴょんぴょん行脚を続けるのだった。
ここで最後ぴょん。二羽のウサギが地図に記されたバツ印に辿り着いたとき、もう一羽のウサギもその場所へ辿り着いていた。こそこそ隠れて、なにしてるのかしら。杵を振り上げたコスモ。常界でもまた、妖精と魔物が争いを始めたのだった。
黒い兎と白い兎、互いに生まれた世界とは異なる世界の為に戦う二羽。ウサギは幸せの象徴なんだぴょん。それなら私は、その裏側の不幸を届けてあげるわ。表裏一体の世界と戦い。だけど、いまこの戦いは僕に預からせてもらえないかな。
二羽のウサギの戦いを制止したのはデオンだった。王の秘密機関が、こんな場所でいったいなんの用かしら。取引をさせてもらいたい。それは王の為であり、王ではない男から与えられた任務。きっと、君たちは彼を必要としているんじゃないかな。
デオンの呼び声と共に現れたのは、口を布で覆った男だった。久しぶりだな。カルネアデスへ、懐かしい声をかけたサフェス。かつて互いに教団にいた者同士。そして、そんなサフェスが連れていたのはもう一人の懐かしい男、シュレディンガーだった。