少年には何もなかった。周りが羨ましかった。だが、少年は旅を続け、自分の存在の理由に気がついた。そして、そんな少年と友達になってくれた五人がいた。友達ってヤツも、悪いもんじゃないな。だから少年は、一人、別の道を進んで行くのだった。
仲間達と旅する極東国。出会い、別れ、目指すべき終着点。この旅が終われば、自分の役目は終わる、少年はそう思っていた。やっと、無に帰れるんだ。だが、少年は少し寂しかった。何も持たなかったはずの少年に、大切な友達が出来てしまったから。
悲劇を塗り潰す力に辿り着こうとした矢先の突然の襲来により消えゆく仲間達。無くした心、流れない涙。残ったのは無神と少年の二人。そして、消えたはずのもう一人の存在。安心しろ、我は姿無くとも傍にいる。それは、存在しえない証明だった。
少年の旅は終わり、無事に辿り着くことの出来た聖なる入口。だが、揃ったのは四人だけだった。きっとアイツらも、自分の戦いをしているんだ。その場の敵に、開かれた扉の神へと意識を集中する少年。例え、全てを、無に帰すことが出来なくても。
新生世界評議会最高幹部の席に就いた少年は全てを知っていた。あの時あの場所で、何が起きたのか。だが、少年は何も語らなかった。今のうちに、どうかあの二人を。それは現れなかった二人。あの三人なら、きっと。それは咎人の三人のことだった。
姿を現さなかったのは、アスルだけではなかった。無事だといいんだけど。漏れ出した不安。僕なら、無事だから。更に遅れて現れたアオトの服は赤色に染まっていた。そして、そんなアオトに肩を貸す、一人の男の姿があった。紹介するよ、僕の弟だ。
いいか、よく聞け。不夜城の王の間、響き渡るのは聖魔王ヴラドの高らかな声。オレはオマエらを裏切った。その事実を変えることは出来ない。だが、オマエらはこうして、再びオレを信じてくれた。だから、オレはオマエらを信じる。もう、ひとりで背負い込んだりはしない。だからどうか、このオレについて来てくれ。
それじゃあ、始めよっか。魔界の真焔隊はみな、刀を構える。どっからでもかかってきて。対するは、杖を構えた天界の真晴隊。うん、こっちからいくよ。天界、魔界の合同演習。すべては、来るべき日の為に。そして、誰よりもこの演習を楽しみにしていたのは、真焔隊を率いた大将、真焔魔将ヒメヅルだった。
これで少しはゆっくり出来そうね。少し透けた天蓋の奥のふたつの影。互いに舐め合うのは聖戦により生まれた傷跡。いまだけは痛みさえも愛せるわ。甘い甘いふたりの時間。跨った真蒼魔将ムラサメとその妹、ふたりはそんな時間を永遠のものにする為に、来るべき日の為に、最後の愛の確かめ合いをするのだった。
俺さ、お前らのこと忘れないよ。聖戦に吹き荒れた風が止んだとき、そこを訪れたのは風通神だった。おい、勝手に殺さないでくれよ。冷静な反論。っていうか、どこに座ってんだよ。風通神が腰をかけていたのは、傷だらけの体だった。うわ、クッションが生き返った。こうして、真嵐魔将ヤスツナは生まれたのだった。
鳴り響いた銃声、そして弾丸が打ちぬいた光刑者の胸。覚悟を貫くことが出来ず、友の手を汚し、友を失った。僕は、変わらなきゃいけない。二度と立ち止まらない為に、真閃魔将ライキリは鍛練を重ねるのだった。そんな彼を見守る二つの影。いいのかな、顔を見せなくて。いいんだ、オレのことは黙っておいてくれ。
いつまでも、一緒にいましょう。少し透けた天蓋の奥のふたつの影。互いに舐め合うのは聖戦により生まれた傷跡。いまだけは痛みさえも愛せるわ。甘い甘いふたりの時間。跨られた真妖魔将ムラマサとその姉、ふたりはそんな時間を永遠のものにする為に、来るべき日の為に、最後の愛の確かめ合いをするのだった。