不吉な黒衣をはおり、不似合いなキャップがトレードマーク、耳元で流れるトラックにリリックを乗せながら人間観察。死刑執行人学園から課せられた三等悪魔への昇格試験は常界<テラスティア>の「罪人」を666人殺すこと。キャップもシャツも、ヘッドホンも血の様な赤を好む彼、フレイムエッジはテストも赤点。
三等悪魔への昇格を果たし、炎の剣型ドライバ【フレイムタン】と共に名前を授かったものの、未だに止まることのない赤への執着、定期試験でのきなみ叩き出す赤点。情熱の男はきっと、これからも赤への飽く無き探究心を燃やす。学園を無事卒業し、一人前の死刑執行人<エクスキューショナー>になれる日はいつか。
365日、いくら暑かろうが、マフラーに手袋、ニット帽にモフモフ耳あて、ムートンブーツを外すことのない、芯まで冷えた冷徹な四等悪魔のアイスエッジ。いつもクールなその姿は女子生徒からの人気も高い。極度の低血圧な異常体質であり、驚くほどの寒がりであるということを知ってしまった者は消された。
その手に握られているのは、昇格の際に名前と共に授けられた氷の剣型ドライバ【アイスブランド】。冷酷無残なその手に持つのが相応しいと授かったが、氷の剣は非常に冷たく、彼が気にしたのはますます外せなくなった手袋。そして、その刃で、昇格試験で唯一逃した青い瞳をした「罪人」の行方を今も追っている。
昇格試験、残り49人、見られた素顔、逃げ帰る魔界<ヘリスティア>。ウィンドエッジは誰であろうと素顔を見られることを許さない。見られた時には引き起こされる過呼吸。背中のボンベは猛毒ガス、ではなく緊急用の二酸化炭素。そう、ただの恥ずかしがり屋。クラスメイトでさえ、彼の素顔を見た者はいない。
ついにそのマスクを脱いだ彼。いや、見せた素顔は彼女だった。それは風の剣型ドライバ【ウィンドピア】と共に授けられた名前により、持つことが出来た自信の表れ。だけど今も、手放すことのない二酸化炭素ボンベ。未だに彼女を敵とみなす人間が住まう常界<テラスティア>へ赴く際に、マスクは欠かせない。
闇に生きる死刑執行人<エクスキューショナー>を目指しながらも、自分の存在を隠そうとすらしないライトエッジ。その大きさから余計に目立つ、夜であろうと外すことのないお気に入りのサングラス。交わった世界、縁起の悪い黒衣の中、フリルのシャツで決め込んで、ハニーを求めて天界<セレスティア>へと。
天界<セレスティア>でうつつを抜かして見つけたマイハニー、光の妖精は悪魔を拒んだ。いい格好を見せようと、外したサングラス、パスした昇格試験、手にいれた名前と光の剣型ドライバ【ライトブレード】。二等悪魔になろうとも、きっと彼女は振り向かない。それでも彼は、彼女を追い求めることを止めやしない。
誰よりも死刑執行人<エクスキューショナー>への憧れが強いダークエッジ。昇格試験も残り僅かたったの8人。訪れた常界<テラスティア>の死刑執行に衝撃を受け、以来、黒衣の中に好んで着るボーダー服。それが処刑される側だったということすら忘れてしまう程の衝撃は、人間の残酷性と共鳴<リンク>したから。
フードを外し現れた癖の強い髪、気にしていたその癖も恥ずかしくなくなったのは、自分だけが他の生徒とは異なる特別な闇の鎌型ドライバ【ダークサイズ】と名前を手にしたから。次に与えられた昇格試験、6日以内に6人を6回殺すこと。まずはその言葉の真意を知ることから、次の試験はもう、始まっていた。
そっと目を閉じ、心眼で相手を見定める。張りつめた空気、振り払う邪心、研ぎ澄ます無心、刃を抜く一瞬、刹那の居合、ゼロエッジは罪人を殺めた。常界<テラスティア>での試験の最中、訪れた極東国<ジャポネシア>、京の都での出会い、「誠を背負いし者達」が導いた武士道、彼は自ら信じる正義を全うする。
武士道を進むその姿は、彼だけにと無の刀型ドライバ【ムミョウガタナ】と共に名前を与え、そして魔界<ヘリスティア>への絶対なる忠誠を誓わせた。自らの正義こそが、この交わってしまった統合世界<ユナイティリア>を元に戻す鍵と信じて、今はただ無心に、目覚めたその正義を貫き通す為に刃を振るう。
遂に二等悪魔へと昇格を果たし、炎刑者の二つ名を名乗ることが許されたフレイムタン。罪人を焼き尽くすのは魔界<ヘリスティア>の悪しき炎。瞳に映る赤は、彼が追い求めていた真紅の赤。卒業試験まであと少し、最後に課せられた課題は自らを666回殺すこと。死刑執行人は罪人を殺すと共に、自らを殺し続ける。
昇格試験、6回殺すべき相手に選んだ青い瞳の男は、すでに罪人ではなくなっていた。罪人以外を殺めてはならない、それが死刑執行人学園の規則。追い続けた目標を失くしたアイスブランドの心は更に冷たく、そしてその冷たい心はいとも簡単に罪人を6日以内に6人、6回殺め、氷刑者の二つ名を背負うこととなった。
二等悪魔に昇格しようともマスクを手放せないでいたのは、まだまだ人見知りで恥ずかしがり屋なウィンドピア。そんな彼女も今や風刑者を名乗り、穏やかな風すらも罪人を切り裂く刃に変える風の死刑執行人<エクスキューショナー>となった。卒業まであと少し、優しい彼女は自らを666回殺すことが出来るか。
止まることを知らないマイハニーへの想い、咥えたバラは求愛の証。種族を超えた愛が、立ち塞がる壁が彼を夢中にさせた。自らを高め、二等悪魔への試験も一発合格。だけど、光刑者の二つ名を得たライトブレードは知らない。追い求めていたマイハニー、光の妖精が求めていたのは、性別を超えた愛だということを。
次なる昇格試験の真意に触れた時、その手は震えていた。一つ、対象の心を殺す、二つ、対象の世界を殺す、三つ、対象を殺す、四つ、対象を知る者を殺す、五つ、対象の記録を殺す、そして、六つ、対象を殺した者を殺す。完了する6回の殺し。自らの命を6回絶つことと引き換えに、ダークサイズは闇刑者となった。
罪人へ無の刑を与えることこそが自らの正義と信じ、そして貫いた武士道は彼を無刑者へと、二等悪魔へと導いた。だけど、卒業試験の束の間の休息、訪れた極東国<ジャポネシア>の京の都の鴨が泳ぐ川の隣、石畳が続く街の片隅で、枯れることなく咲き誇る桜を前に、聞こえてきたのは諸行無常の響きだった。
燃え上がる炎に引き寄せられて、昇格試験のことなど忘れてしまった炎刑者の姿が。悪しき炎や光を求め、悪魔達は幾重の鉄壁を突破していた。止まることのない赤への好奇心。燃え上がる赤こそ至高の色だと、炎刑者は満面の笑みを浮かべていた。
あぁ、また来てしまった。涼しいラウンジを無事に抜け、二等悪魔への昇格を果たした氷刑者は、次に凍える氷水研に迷い込んでいた。溢した白い吐息、かじかむ手で刃を握りしめ、震える唇を噛みしめる。少しにじんだ血に、次こそはと誓うのだった。
風の力を使用した重罪人がいるという情報を聞きつけ、極風研へと足を踏み入れた風刑者。ただ、この施設は予想以上に風が強く、もしもの時にと頭に乗せたガスマスクが、風に吹き飛ばされてしまわないかということだけを気に病んでいた。
予期せぬ恋敵の出現に求愛を阻まれた光刑者は、どうしたら振り向いてくれるのかを考えていた。統合された世界とはいえ、魔界よりも常界の方が科学の進歩が速い。そう、光刑者は科学の力を頼りに、ひとり幻光研へと訪れたのだった。全ては愛の為。
常界こそ、悪意の塊ではないだろうか。脳裏から離れることのない常界の罪人への執行風景。闇刑者は一等悪魔への昇格を前に再び常界を訪れていた。多くの抜け殻の噂を頼りに訪れた漆黒研、そこでは彼の想像以上の異常事態が日常と化していた。
常界へと降り立っていた無刑者にも、新たな白の女王の即位の話は届いていた。何故このタイミングで。何が起こるのかはわからない。ただ、何かが起ころうとしていることだけは確実だった。何かを知る為に、未来を知る少女の元へ、無刑者は急いだ。