59回、それは第三世代自立型ドライバ【フィアトロン】の起動実験の数。動力源に悪しき炎を利用した実験は成功した。直後、機体を中心として発生した大規模爆発、炎に包まれた研究施設。凍結された計画、封鎖された施設、動力源に関する詳細な情報は伏せられた。そう、実験は失敗という嘘の真実を残して。
封鎖されていたはずの施設から漏れ出した橙色の明かりは燃える炎。その炎が溶かした計画の凍結。更なる強化が施され、牢獄を模した【フィアトロン:ツヴァイ】は開発された。その檻に囚われたのは、科学者が燃やした飽くなき探求心。全てを超越した動力源に魅せられて、願っていたはずの平和は忘れ去られた。
人間の過失、悪魔の所業、精霊の悪戯、あらゆる火種から発生する火災。街中に配備された自立型ドライバ【ウォタトロン】はいち早く現場へ急行し、消火作業を遂行する。扉が開かれたその日から、増え続ける火災の件数は消しきることの出来なかった争いの火種。もう、水だけで解決出来ることはなくなっていた。
増え続ける火災、その火種を消すために強化された自立型ドライバ【ウォタトロン:ツヴァイ】は追加の製造を中止された。裏社会で行われていた取引、戦闘兵器としての利用価値、動いてしまった不透明な外貨、自らがなってしまった争いの火種。そして、聖暦の天才の元へ舞い込んだのは、次なる世代の開発資金。
風の力を動力源へ変え、自立型ドライバ【ウィンドロン】が上げた悲鳴、響き渡るサイレンは風に乗り、遠く離れた街まで届く。危険と隣り合わせの日常、起き続ける事故、守るべきはずの人間が上げた悲鳴、膨れ上がる自立型ドライバへの不信感。音も無く崩れさろうとする日常、そこには不穏な風が吹きつけていた。
第三世代の自立型ドライバ【ウィンドロン:ツヴァイ】、交わった世界は科学までをも急激に進化させた。だけど、その技術は全て開かれた扉がもたらしたもの。そう、人類の進歩でさえも約束された未来に。次第に科学者達は抗うことを止め、手を休め始める。ただ6人の、「聖暦の天才」と呼ばれた科学者達を除いて。
怖いよ、暗いよ、痛いよ、みんなどこにいるの。明りを失くした夜、被災地にもたらされた僅かな光、自立型ドライバ【ライトロン】が発した光は多くを失くしてしまった人間の希望。だけどまだ、明けない夜。だけどそれは、明けて欲しくない夜。目の前の現実を、その悲劇の跡地を、浮かび上がらせる光は拒まれた。
絶望の光と忌み嫌われた光。進化した自立型ドライバが姿を見せるのは、決まって明りを失くした夜。辺りを照らす光は、自らが正義だと言わんばかりの眩しさ。そして、いつも悲劇の夜を終えた被災地に昇る太陽が最初に照らし出したのは、汚れひとつ見当たらない【ライトロン:ツヴァイ】の無傷な姿だった。
辿り着いたひとつの答え、負の感情により闇の力は増幅する。それはひとりの天才が行なった実験の結果。新たな発見に物議をかもしだす世間。ニュースが知らせる多数の行方不明者、研究所付近で見つかった身元不明の無数の抜け殻。その全ては闇の力を動力源とした自立型ドライバ【ダクトロン】の開発の礎となった。
繰り返された闇の力の増幅、強化の施された【ダクトロン:ツヴァイ】は罪のない人間の命を奪った。負の感情により増幅される闇の力、それは正しくも間違った答え。一時的に増した闇の力は制御出来ず暴走し、闇に魅入られ、そして収縮する。繰り返された罪、それこそが、辿り着いたひとつの、本当の答えだった。
各地で目撃された所属不明の自立型ドライバ【ノントロン】。その開発経緯は不明であり、行動理由も不明である。唯一判明した開発コードでさえも、存在しないことを示す「ノーン」が与えられていた。人畜無害な機体でありながら、稀にとる攻撃態勢は決まって、約束された未来を壊そうとする者達へ向けられた。
少しだけ判明したその存在理由、それはこの統合世界<ユナイティリア>の監視役。交わってしまった世界の、より近くで、より正確に、その全てを監視し、記録し続ける為に生まれた自立型ドライバが進化した姿が【ノントロン:ツヴァイ】。この世界が無に帰すその時まで監視を続け、そしてその妨げを排除する。