安心して、アタシはアンタたちの敵じゃない。ただね、もうちょっと器用にやりなさいよ。って、こいつの隣りでそんなこと言えないか。ジャンヌの横、そこにいたのは派手な爆撃の張本人だった。名前くらいは聞いたことあるわよね。そう、彼女が―。
出会ってしまった炎と炎、彼は言った、大きく育ちやがったな。少年へと向けられた義腕型ドライバ【エルプション】は、59回目の起動実験の末の爆発事故の傷跡。炎に包まれた研究施設、死んだとされた彼は生きていた。そう、世界評議会の一員として、そして、パブロフという天才の名前を背負い、生きていた。
常界に溢れかえった甘い悪意の正体を確かめに、足を向けたのは魔界に位置するハロウィンランド。そこは光と闇と無で彩られた空間。待ち構えているであろうは、お菓子工場のマスター、収獲魔。一刻も早く、楽しいハロウィンを取り戻せ。
戦いの混乱に乗じて行方をくらましたマダナイは、イマもどこかで爪を研いでいるだろう。
いつの時代も、手のかかる人達だ。だが、悪戯な神様は喜びの笑みを浮かべていた。でも今はまだ、その時じゃないから。鼻へとかざす人差し指。聞こえるかい、かすかな希望が。見つめる手のひら。大いなる絶望の為には、大いなる希望が必要なのさ。
ついにそのマスクを脱いだ彼。いや、見せた素顔は彼女だった。それは風の剣型ドライバ【ウィンドピア】と共に授けられた名前により、持つことが出来た自信の表れ。だけど今も、手放すことのない二酸化炭素ボンベ。未だに彼女を敵とみなす人間が住まう常界<テラスティア>へ赴く際に、マスクは欠かせない。
私はいったん避難します。その場を離れようとしたタシン。だが、そんなタシンの背後に音もなく現れたサフェス。言葉を発することもなく、タシンの意識は失われた。アンタは、初めから裏切ってたのよね。怒りを露にしたのはイヴァンだった。
キーンコーンカーンコーン。金色の光が止んだとき、鳴り響いたのは放課後を告げるチャイムだった。雨上がりの校庭に立っていたアオトとアリトン。いったい、僕たちは……。そして、そんなふたりに走り寄る少女。久しぶり。そこにはロジンがいた。
一夜にして666人の人間が殺された。2年前の冬、あまりにも悲惨な出来事は「蒼のクリスマス」と呼ばれた。シュレディンガーが覚えた初恋、交流という名の大量虐殺。逮捕された水才は【ディラック・ポール】で言葉を、口を閉ざした。そんな彼が再び姿を現したのは、世界評議会主催の新型ドライバ発表会だった。