美宮殿の王の間。ただ静かに語りだしたオベロン。自らの体に流れる禁忌の血。かつての聖戦の真実。俺は過ちを犯した。沢山の家族を、天界を傷つけた。だから、どうかその償いをさせて欲しい。左手に握られた対のネックレス。右手に抱えられた王の証。いまここに誓わせて欲しい。誰よりも、この天界を愛し抜くと。
晴れ空の下、行われた合同演習。違う世界に生まれ、違う未来を目指し、そして同じ道を歩むことになったふたり。やっぱり、私の予感は間違ってなかった。ぽつり漏らした真晴精将サニィ。だって、友達になることが出来たんだから。互いに傷つけ、取り合った手と手。それは聖戦があったからこそ、生まれた絆だった。
真雨精将レイニィが訪れたのは、天界の海原にほど近い丘の上。降り出した雨が濡らす頬。愛とは、なんなのでしょうか。見つめたのは大切な人の名前が刻まれた永遠の石碑。強くなる雨音。そして、彼女の頬を濡らしたのは雨だけだった。いまなら、少しだけわかる気がします。そうして小さな笑顔を浮かべたのだった。
その部屋にはちゃぶ台がひとつあった。ちゃぶ台の上にはコンロが置かれていた。綺麗に溶かれた卵のよそわれたお椀が三つ。そして、ぐつぐつと煮立つ甘い匂い。今夜は歌うぜ、ベイベ。真風精将ウィンディが奏でるギターの音色。そんな音色を無視しながら、真嵐魔将と風通神は目の前のすきやきに夢中になっていた。
真眩精将シャイニィが案内したのは綺麗な花々に囲まれた石碑の立つ庭園。ここで、あいつは眠ってるよ。ただ、その石碑を見つめることしか出来ない聖精王。あいつは、あんたの子供を守る為に俺たちを集めたんだ。伝えられた空白。だから、どうか忘れないでやって欲しい。あいつも、最期まであんたを愛してたんだ。
私は彼らとは仲良く出来ない。クラウディが申し出た天候術部隊からの脱退。だが、それを引き止めたのは天界の女王だった。だからこそ私はあなたにいて欲しい。理想の裏側に存在する現実。そう、あなたのような人が必要なの。ひねくれた彼女は、その真っ直ぐな言葉を疑い、真曇精将の役を引き受けたのだった。
どうして、そんなにみんな一生懸命なんだろう。真雪精将スノウィはその役に就きながらも、不満を口にしていた。テメェにも、いつかわかる日がくるさ。そう諭したのは真絶魔将だった。だから、いまは長いものに巻かれたっていいじゃねぇか。そういうものなのかな。それは、真っ白な雪が色づき始める瞬間だった。
幻想の果てに残った現実。だが、その現実をファティマは少しずつ受け止め始めていた。そして、そんなファティマの心をもう一度立ち上がらせたのは聖魔王の言葉。これは命令だ。もう一度、このオレについて来い。本当のオレの生き様を教えてやる。
私はただ過去をなぞったに過ぎない。だけど、こうして新しい道が生まれた。違う未来が広がり始めた。だから、もう少しだけ頑張ってみようと思う。どうか、最後まで見守っていてね。ユカリはひとり、お揃いのストールを抱きしめていたのだった。
聖戦の果てに生まれた新しい道。それは、天界と手を取り合い、肩を並べて歩く道。そして、オレたちの目的は、あのときも、いまも変わらない。だから、あのときの続きを始めよう。聖魔王ヴラドが睨んだのは神界。これからのオレたちなら、必ず―。