だが、ミドリに残された体力は限界を迎えようとしていた。なによ、偉そうなこと言ったって、所詮は人間ね。棍を握る力は抜け、立つことに精一杯だった。そろそろ、死んでもらおうかしら。雷帝竜の最後の一撃が轟く。やっぱり、心は一緒なんだ。
そして、そんな二人を前に堕水才の動きは止まっていた。どうしたんだ。水波神の問いに、答えようとしない堕水才。堕水才の瞳に映し出されていたのは、あの日の瞳ではなかった。そう、蒼き兄弟の瞳は、共に濁ることなく、澄み切っていたのだった。
現れた旧東魔王。私はあんたらを助けたいんじゃない、こいつらが許せないだけ。続く攻防戦。君たちはもう、過去なんだ。思い出に消えてくれ。何度倒れようとも、立ち上がり続ける四人。いくら頑張ったって無駄だよ、ここに鞘なんてないんだから。
始まった攻防戦。君は、王に相応しくないよ。だが、ノアは動じなかった。あぁ、知っている。その言葉の込められた意味。僕が、統べる者になる。無数に湧き出る教団員。私は王様失格だからな。古の竜王は、古へと帰る覚悟を決めていたのだった。
美宮殿の王の間。ただ静かに語りだしたオベロン。自らの体に流れる禁忌の血。かつての聖戦の真実。俺は過ちを犯した。沢山の家族を、天界を傷つけた。だから、どうかその償いをさせて欲しい。左手に握られた対のネックレス。右手に抱えられた王の証。いまここに誓わせて欲しい。誰よりも、この天界を愛し抜くと。
晴れ空の下、行われた合同演習。違う世界に生まれ、違う未来を目指し、そして同じ道を歩むことになったふたり。やっぱり、私の予感は間違ってなかった。ぽつり漏らした真晴精将サニィ。だって、友達になることが出来たんだから。互いに傷つけ、取り合った手と手。それは聖戦があったからこそ、生まれた絆だった。
真雨精将レイニィが訪れたのは、天界の海原にほど近い丘の上。降り出した雨が濡らす頬。愛とは、なんなのでしょうか。見つめたのは大切な人の名前が刻まれた永遠の石碑。強くなる雨音。そして、彼女の頬を濡らしたのは雨だけだった。いまなら、少しだけわかる気がします。そうして小さな笑顔を浮かべたのだった。
その部屋にはちゃぶ台がひとつあった。ちゃぶ台の上にはコンロが置かれていた。綺麗に溶かれた卵のよそわれたお椀が三つ。そして、ぐつぐつと煮立つ甘い匂い。今夜は歌うぜ、ベイベ。真風精将ウィンディが奏でるギターの音色。そんな音色を無視しながら、真嵐魔将と風通神は目の前のすきやきに夢中になっていた。
真眩精将シャイニィが案内したのは綺麗な花々に囲まれた石碑の立つ庭園。ここで、あいつは眠ってるよ。ただ、その石碑を見つめることしか出来ない聖精王。あいつは、あんたの子供を守る為に俺たちを集めたんだ。伝えられた空白。だから、どうか忘れないでやって欲しい。あいつも、最期まであんたを愛してたんだ。
私は彼らとは仲良く出来ない。クラウディが申し出た天候術部隊からの脱退。だが、それを引き止めたのは天界の女王だった。だからこそ私はあなたにいて欲しい。理想の裏側に存在する現実。そう、あなたのような人が必要なの。ひねくれた彼女は、その真っ直ぐな言葉を疑い、真曇精将の役を引き受けたのだった。