二人の少女はいつも一緒だった。だがある日、些細なことでしてしまった大喧嘩。離れてしまった距離、しばらくして少女が一人、姿を消した。伝えることの出来なかった四文字の言葉。残された少女は、ただその言葉を伝える為に走り出したのだった。
何度も繰り返す四文字。それは、私のセリフよ。解ける三つ編み、閉じゆく瞼。絶対に、許さない。そして少女は一人、神へと抗う。その時、神が力を失っていたのは、瞼を閉じた少女を大切に思う、もう一人の存在が最後の力を振り絞ったからだった。
全てを出し切った少女の頬を撫でた優しい風。傷ついた愛弟子を、放っておくわけにはいかないネ。巻き起こる竜巻。戦いの中で風に還った風精王、そんな風の起源を纏い、少女は駆け出す。置き去りの昨日を忘れる為ではなく、共に明日を迎える為に。
みんな、風に乗って。塔の最上階、少女が巻き起こした竜巻は、四人を開かれた扉の神の元へと。風向きは変わり、そして、その風は戦局を変えた。吹き続ける追い風。激しい嵐が過ぎ去った時、四人の少年少女は束の間の喜びを分かち合ったのだった。
竜王により逃がされた竜界。私の知り合いが、君の元を訪ねるだろう。でもどうか、責めないでやって欲しい。そんな少女の元を訪ねたのは、力失き初老の男性。そして少女は気が付く。彼こそが、共に一人の少女を思い続ける存在だったということに。
辿り着いたグリモア教団本部本館。地下から響き渡る歓声。これは、あの日の私の責任だ。ノアの口から語られる神話。竜が神に敗れた時、そこに存在していた例外。だから私は、奴を許すわけにはいかない。そして、ノアは火竜と共に、地下祭壇へと。
別に恥ずかしくたって、いいじゃない。少女はTシャツに袖を通し、心の中でそう呟いた。人の目を気にしていたって、生きづらい世の中よ。それは少女の想い。だが、少女は部屋からでるとき、かならずTシャツの上に一枚羽織るのだった。
私はあの日から、ずっと間違えていたみたいです。これが本当のあなたの選択なんですね。ヴラドが選んだのは、王としての責務を全うすることではなく、たったひとりの友を救うことだった。だからオレは、王失格だ。失望してくれて構わないぜ。
その言葉をそのままお返しいたします。私は、なにもわかっていなかった。王の臣下失格です。こうして、ファティマが奏で続けた幻想は終わりを告げた。そう、あの日のファティマが想い描いた魔王など、初めから存在していなかったのだった。