産まれたてのドラゴンが吐いた炎が村を一つ焼き尽くした。そんな伝承は昔の昔。進化した科学、化石修復、DNAの塩基配列分析、適合母体による遺伝操作。そして再び、炎の中から産声を上げた統合世界<ユナイティリア>の産物、ドラゴン。それは誰が何の為に。レヴァは何も知らず、今日も夢中に火を吐いた。
産み出されたドラゴンは炎を食べた。その事象すらも、交わった世界による産物として受け入れ始めた頃、ドラゴンは進化を遂げた。レーヴァンは産声と共に炎を吐き出す。研究所の一室をわずか数秒で灰にする程の、以前とは比べ物にならない熱量を誇る赤い炎。常界<テラスティア>にドラゴンが君臨する日は近い。
炎と炎の共鳴<リンク>は更なる姿、レーヴァティンへと。吐き出された炎は刃となり、人々へ襲いかかる。偶然にもドラゴンが産み落とされた統合世界<ユナイティリア>で生きていくには少し大きくなりすぎた体。そして現れる、その持て余した力を解放する者。約束された未来に、君臨するのは人間かドラゴンか。
ドラゴンの力はやがて、解放せし者に握られる。それこそが炎のドラゴン【レーヴァティン】がこの統合世界<ユナイティリア>に産み落とされた理由。裏切りの刃は神々の悪戯に向けられるのか、約束された未来を壊す為に向けられるのか。今はただ、審判の日へ、その姿を変えながら、灼熱の炎を燃やし続けた。
深海に眠るロマン、海にはまだ誰も目にしたことのない、新種の生物が沢山生息している。ただ、近年危険種として指定された深海の生物、たてがみの様な背びれ、発達した腕に鋭い牙と爪、フロスと名付けられた生物。それは魚類でも哺乳類でもなく、交わった統合世界<ユナイティリア>が産んだドラゴンだった。
最初に発見された深海よりもさらに深い海、優雅に泳いでみせるフロスト。研究の結果によりわかったことは、水のドラゴンの進化を遂げた姿だということ。母なる海の底、水に包まれたドラゴンは力を増した。その力は津波となり、決壊する防波堤。海岸沿いに暮らす人間は皆、この時ドラゴンの恐ろしさを知った。
新たなる姿への進化、それは水と水の共鳴<リンク>がもたらした事象。大海原の支配者として君臨したドラゴンは、神のみぞ起こせる天災を引き起こした。それは何者かに解放された力。水のドラゴン、フロッティはその力を発揮させてはなるまいと、再び深い海の底へ、深海よりも深い海へと帰っていった。
進化を遂げた深海の刃【フロッティ】の共鳴<リンク>は母なる海そのものへと。清らかな水の流れが、激しい海流へと飲み込まれると共に地上へ見せた姿、それは自然を生きる生物としてではなく、戦う為に生まれたかの様な姿。その獰猛な姿は、他のドラゴン同様、解放せし者の訪れと最悪の展開を予感させた。
昔はこの空を恐竜が、空を見上げ呟く科学者。「あの鳥」のような姿なのか、東の空を飛ぶ「あの鳥」を目で追いかける。第一発見の声、「あの鳥」はまるで恐竜の様な姿だった。開かれた扉、交わった統合世界<ユナイティリア>が産んだドラゴン、空を自由に飛び回る「あの鳥」ミストの捕獲計画が動き出した。
再び発見された自由に空を翔るドラゴン、その姿はかつての姿を上回る大きさへと成長していた。ミスティルと名付けられたドラゴンは、気持ち良さそうに風を切る。邪魔するものなど何一つない、広がる空に起こした風。その小さな風は、やがて大きな風へと、そして集まる風、気が付いた頃、既に竜巻は生まれていた。
天空の覇者、ミスティルテイン。解放された力が巻き起こす無数の竜巻。風と風の共鳴<リンク>は、交わった世界の偶然の産物であるドラゴンを、ここまで大きく育ませた。これは誰のせいでもない、全て神の悪戯だと、人間は研究することを止め、常界<テラスティア>の空は、風のドラゴンの狩り場と化した。
優雅に空を飛びまわる天空の覇者。そこが、この空が、自分の居場所だと、それが当たり前のことだと主張するかの様に。やがて飛びつかれた【ミスティルテイン】が求めたのは宿り木、それは解放せし者の腕。羽を休める場所を見つけた時、ドラゴンはその姿を更なる姿へと、本来の姿である風の刃へと変える。
長く伸びた首を、水たまりへと下し、乾いた喉を潤わせる。それは動物園でもよく見なれた光景。ただひとつだけ、その光景と違っていたこと、それはキリンではなくドラゴンだった。綺麗なたてがみに鳥の様な大きな翼、そして大きな蹄。グーンの現れと共に差す後光、幸福をもたらすドラゴンが産まれた。
幸福をもたらすドラゴンの成長に、歓喜する人々。常界<テラスティア>に災いをもたらすことのない光のドラゴンは、グングの名で呼ばれた。時おり見上げる空はいつも決まって曇り空。降り出した雨、雲の隙間に僅かな光。音より先に届いた光は、光のドラゴンの成長した力。落ち始めた雷は、もう後光ではなかった。
荒れ狂った空、解放される力、天災を呼んだドラゴン、グングニル。それは光と光の共鳴<リンク>がもたらした新しい姿と力。明日世界が終わるのかも知れない、そう錯覚させる程の強い光の連続。遅れた音が届き終わった頃、割れた雲間から差し込む日差しを浴びて、羽ばたかせた大きな翼、北の空へと姿を消した。
絶対勝利、それは光の刃【グングニル】に与えられた二つ名。帰還率100%のドラゴンがその重い身体を空へと投げた時、標的とされた者は終わりを知る。ドラゴンにより次々と崩落を迎える都市、その都市全ては黄昏の審判への抵抗を表明していた。何者かが力を解放し、約束された未来の訪れを望んでいた。
とある村では、満月の夜が訪れる度に、神の使いと崇められているドラゴンへと特産品のブドウを献上していた。しかし、ドラゴンなど現れる訳もなく、それは月に一度の祭り行事として村人の楽しみと化していた。祭りの後、献上品を回収しに赴いた祭壇、そこには美味しそうにブドウを頬張るダーンの姿があった。
とある村ですくすくと育つ闇のドラゴンは、ブドウ以外は口にしなかった。それなのに段々と大きさを増していくその体。とある村人がある時気付いた異変。そう、徐々に短くなっていった夜の時間。夜を、闇を食べ終えたドラゴンが遂げた成長、変わる姿。ダーインへの進化と引き換えに、とある村は夜を失った。
夜を食べたドラゴンは、次に夜を産み出した。暗闇に覆われ始めた常界<テラスティア>に明けない夜が訪れる。闇と闇の共鳴<リンク>はより強い闇となり、そして闇のドラゴンを第三の姿、ダインスレイヴへ。解放された力が収まった頃、明け始める夜、昇り始める太陽。既にドラゴンの姿はそこにはなかった。
夜を食べ、そして夜を生む、それは悪意に満ちた世界。呪われし闇の刃【ダインスレイヴ】は次に世界中の闇を食べ始めた。その勢いは、まるでこの世界の闇を、全てを食べ尽くすまで、止まることを知らない。何の為に闇を食べるのか、それはその食べ尽くされた闇の力が解放された時、知らしめられることとなる。
進められていた湾岸沿いの埋め立て工事。網目上に組まれた鉄骨に、次々と流し込まれる強化コンクリート。順調に進んでいた建設は、ある日を境に途絶えた。埋立中の地面から這い出す一体の姿。雄叫びを上げたのは、無から生まれたドラゴン。そして次々とコンクリートから這い出す、無数のティルの姿が発見された。
無から生まれたドラゴンが、気が付けば食べ尽くしていたのは埋立地。ぽっかりと空いた穴に取り残されたのは姿を変えた新たな無のドラゴン、ティルファ。早すぎた成長は辺りに何も残さず、ただ衝撃だけを残した。崩れだす地盤、僅かとはいえ沈みだした常界<テラスティア>はドラゴンを無に帰す為に動き出した。
無のドラゴン、ティルファング。何一つ無い場所で、誰も知らない間に起きた無と無の共鳴<リンク>が引き起こした進化。そこには初めから何も無かったのか、それともドラゴンが無に帰したのか、知る者はいない。いや、知る者すらも無に帰されたのか。初めて無の恐ろしさを知った時には、その姿は無に帰していた。
生きる理由も、生きる意味も、何も持たない無のドラゴンが望んでいたのは、悪しき3つの願い。その全ては無の刃【ティルファング】の力を手にした「解放せし者」により叶えられようとしていた。解放せし者すらも叶えた際には無に帰すと言われるその3つの悪意は、統合された3つの世界へと、それぞれ向けられた。