光り輝く太陽の様な笑顔、少女はいつも笑っていた。楽しい時も嬉しい時も、哀しい時も苦しい時も、笑うことしか出来なかった少女は「光」を宿していた。両手で持つのも大変な大きな剣型ドライバ【リュミエール】の剣先は開かれた扉から溢れた光を指し示す。ヒカリを導く様に、決してその笑顔を曇らせない為に。
格別な「光」の資質を見せるヒカリ。その宿した光を「あの方の様」と言い表した光の精霊との出会いを経て、進化を遂げた【リュミエール:ドゥ】は天界<セレスティア>を指し示した。戸惑いながらも今はただ、光が指し示す方へ。それが本当の自分と、知りたくない真実と、向き合う事になると気が付きながら。
光を司る精霊は告げる、お帰りなさい、と。それはヒカリが混種族<ネクスト>であると共に、皆とは異なる本当の人間ではないという証明。気付いていた真実、用意していた笑顔、新たなドライバ【リュミエール:トロワ】を手に笑ってみせる。だけどそれは、自分の為じゃなく、皆の笑顔を曇らせたくはなかったから。
訪れたのは天界<セレスティア>に浮かぶ、誰もが光溢れる笑顔をこぼす永遠郷<シャングリラ>。本当の笑顔を、その意味を探す為に。生まれ変わったドライバ【リュミエール:ナユタ】と共に、誰かの為じゃなく、自分の為の笑顔を浮かべるヒカリ。けれど、それでもその笑顔は、審判の日を前にした皆を笑顔にした。
天界<セレスティア>の皆が楽しみにしていたのは、月に一度の光の大精霊のコンサート。乙女親衛隊は今日も警備に忙しい。光の妖精プチキューレは白い軍服に袖を通し、自らが仕える大精霊の安全の為に、その身を挺する。そして誰よりも近くで、その歌声を聴く為に、その光輝く力を分け与えてもらう為に。
親衛隊長へと昇進を果たし、その姿を変えたワルキューレ。これからも、命に代えても光の大精霊をお守りする、それが光の妖精の務めだからと言い放つ。だけど、それは果たして忠誠心か。いや、それは恋にも似た感情。彼女はその芽生えてしまった気持ちを、その気持ちの正体を、決して認めることはなかった。
光輝く天界<セレスティア>のアイドル、光の大精霊ウィルオウィスプ。その歌声は聞くもの全ての心を明るくする。交わった世界に不安を感じる精霊達は皆、彼女の歌声を心の支えに、希望の笑顔を浮かべる。本当の笑顔を無くした剣士は、彼女の歌声で笑顔を取り戻せるのだろうか。彼女は剣士に届くように歌う。
自らの遺伝子を継いだ光を宿した少女の、その偽物の笑顔を輝かそうと、永遠郷<シャングリラ>へ。溢れた沢山の笑顔は皆、心からの喜びに満ちていた。辛いことがあれば泣けばいい、楽しい時だけ笑えばいい。光と光の共鳴<リンク>、取り戻した笑顔から溢れた光はウィルオウィスプを光精王へと生まれ変わらせた。
私は、あなただけを見つめているわ。唐突に言い放たれた告白、それは、光の戦乙女へと向けられていた。これは憧れかもしれない、だけどきっと、私にとってはこれが愛なの。真っ直ぐ過ぎるその瞳に、動揺を隠せないでいる戦乙女を見て、花の妖精プチワリは、笑顔を見せることもなく、ただ答えを求めていた。
自分の気持ちに、何の迷いもなかった。恥ずかしがることも、隠すこともないその一途な想いは光輝き、そして、花開いた彼女はヒマワリへと進化を遂げた。今もまだもらえない答え、それでも彼女は、ただひとりだけを見つめていた。そんな一途な想いの邪魔をする光の悪魔に対し、彼女は軽蔑の眼差しを向けていた。
やっぱり息抜きは大切、今日は女子だけでお買いもの。光を宿した少女と、常界の案内をしてもらう光精王、そんな主の身を守る戦乙女と、一途に見つめる太陽に咲く花。午後三時、川沿いのベンチ、並んだ四つのクレープ。せーの、で口にするはずだった甘さは、目にも止まらぬ速さで【ライコウ】の手へとさらわれた。
大切なものを取り返すため、四人の乙女は立ちあがる。優しい種族のはずの妖精達がみせた本気、それは一瞬の出来事だった。先走った三つの光に続き、眉間にしわを寄せた怒りの笑顔のままに振りまわされた光の大剣。再起動<リブート>を終えた【ライコウ:ナユタ】、ベンチにはクレープを持つ手が五つ並んでいた。
光精王への想いを隠しながらも、使命を全うする戦乙女ワルキューレ。度重なる危険に遭遇しようとも、自らが盾となり命に代えてもお守りする、そう決めていたはずだった。天界<セレスティア>の成り立ちを、歪な平和の片鱗を知ってしまった時、彼女の中で何かが、信じていた大切な何かが崩れ去ろうとしていた。
少女がみせた嘘偽りのない笑顔は皆に笑顔をもたらした。人間だとか、妖精だとか機械だとか、そんなこと、少女にとってはカフェラテとカフェオレくらいの違いにしか感じていなかった。沢山の仲間達と手をとり、きらきら笑顔と共に、聖なる扉へと。