かつて神と竜は争っていた。似たように天界と魔界も争っていた。だが、全ては聖なる扉が閉じられると共に、終焉を迎えた。そして今、再び聖なる扉は開かれた。やはり、歴史は繰り返されるのね。観測者は、繰り返される歴史を観測していた。
彼は、魔界の為に竜へ近づいたわけじゃない。現闇魔女王へ告げる魔界の歴史。だから私達は彼を追放した。でなければ、私達の世界は壊されていた。だからこそ、私達に今必要なのは、彼じゃなく、彼なのよ。そう、彼女の後ろには、堕精王がいた。
彼は、ただ綴られた存在だった。戦う為だけに、産まれた。そんな彼が、神になろうとした。湖妖精は、光妖精王に真実を伝える。でも、彼は私達を裏切った。そんな彼を止めるには、彼しかいないの。美宮殿の王の間、そこには堕魔王が君臨していた。
寝惚け眼を擦りながら起き上がったヴラド。おはよう、随分と眠ってたわね。覗き込む水色の前髪。冗談は止めてくれ。ついた悪態。こんなこと、冗談でしないよ。そして交わされた密約。オレ達はあの時、世界から弾かれた。でも、やり残したことがあるでしょう。そう、彼はただ、果たせなかった決着をつけたかった。
かつて、強大な力を誇る二人の王が存在していた。天界を統治する精王と、魔界を統治する魔王。二人は共に禁忌を犯し、世界から弾かれていた。そして時は過ぎ、二人の王は再び対峙する。だが、あの時と形を変えて。天界を率いるのは、堕魔王ヴラド。そして、魔界の王の席についていたのは、目覚めた堕精王だった。
可愛い女王サマだこと。天界の女王の隣りには堕魔王が。私はあなたのことを信じたわけじゃない。オレはヤツと戦えればそれでいい。なぜ彼女は彼を受け入れたのか、それは天界を滅ぼす力を持つとまで言われた彼が、悪人には見えなかったからだ。
元凶はあなたなのね。闇魔女王はその事実を知りながらも、堕精王を受け入れた。俺のこと、いつでも殺していいよ。ええ、この戦いが終わったら、そのつもりよ。互いに利用し合う二人。女王は友の復讐の為、王は自分を裏切った世界への復讐の為。
彼らは、今度こそ世界の為に戦ってくれるかな。悪戯神が口にする世界とは、どのような意味が込められているのだろうか。天界魔界のことなのか、統合世界のことなのか。それともまた別の世界のことなのか。世界って言葉は、本当に都合がイイネ。