南魔王はもういない。その事実は、教団員達に伏せられていた。奴の仕事、絶対嫌だかんな。そう言い放つ北魔王。私、自信ないよぉ。続く東魔王。僕は僕のやるべきことが。最後に西魔王。教祖は肩を落としながら自室へ。だがその矢先、教祖の元を訪ねる二人が。彼女が、新しい南魔王だよ。そこにはアザエルがいた。
お初にお目に掛かります。だが、教祖はアザエルを認めはしなかった。私にとって、南魔王は奴だけだ。今も昔も、これからも。高ぶる感情。それでいいんだよ、君にとっての、南魔王は。崩れたのは砂上の楼閣ではなかった。そしてその日、教団全体にとある通達が。教祖は誰よりも先に、完全世界へと旅立たれました。
右も左もわからない毎日、少女は気がつけば崇められていた。だが、そんな少女のすぐ傍にいつもいた一人の女性。みなみまおーは、ずっといっしょにいてくれますか。もちろんです、教祖さま。そんな幼き日の思い出を、新南魔王は踏み躙ろうとした。
私はいつまでも、傍にいますよ。そう囁きながら注いだ紅茶。僕が君を、助けてあげよう。そう囁きながら撒いた飴。オレに指図するな、キミは消えろ。そう囁きながら弾いた障害。本当に幸せです、教祖様が一人で先に旅立たれてしまうなんて。ティルソンは続ける。ここからは、完全世界の翻訳をしてもらいましょう。
完全世界の為に、教団員の心を一つにします。執事竜ティルソンは続ける。人は、悲劇に心を動かされる生き物です。上がった口角、下りた睫。ですから、彼らには、華麗に散ってもらいましょう。見つめたのは四大魔王の椅子。そして、悲しみの夜が訪れた後には、黄金の夜明けが訪れるのです。全ては、あの方の為に。
子守から解放された執事竜は、一人きりで朝の紅茶を堪能していた。ようやく、黄金の夜明けが訪れる。全ては、教祖の為であり、教祖の為ではなかった。僕が信じていたのは、最初から教祖様だけさ。教祖は偶像であり、象徴でしかなかったのだった。