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心を無にする事の出来る、素敵な癒しのラウンジです。そんなコンセプトでオープンしたのが、このラウンジ:アース。仕事に学校に、恋に遊びに、そんな日常に疲れてしまった人が、思考を停止したい人が訪れるラウンジには、無が広がっていた。
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無に出来た心、全ての思考から解放されたこのラウンジに、主だったサービスなど何も無く、その干渉しないというサービスこそが、人気の秘密だった。だけど、それは落ち着いたこの空間を壊してしまう、招かれざる悪戯妖精が現れるまでだった。
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物静かなラウンジに、いくつもの回転音が鳴り響いた。無という癒しを壊してしまうほどのその音は、予期せぬ客にだけ向けられた、ラウンジ唯一のサービス。そして、その予期せぬ客は、その音が消えた時、その存在が無かったことにされるだろう。
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ふわり、ふわり、浮かんでいたふたりの乙女。静けさを取り戻したその空間の居心地の良さに、ふたりはいつまでも昇れずにいた。いや、例え居心地が悪くなろうとも、そのふたりはきっと、昇ろうとはしないだろう。昇ることに、興味などなかった。
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極東国<ジャポネシア>からの帰り道、精神を統一する為に訪れた無の正義の処刑人は、この何も無い空間で、ただ目を閉じていた。思い出すのは誠を背負いし者達の背中。越えるべき相手を見つけた彼は、刀を握る拳に力を込め、そっと目を開いた。