-
足音一つ無い第六監獄チャコールが与えていた罰は無。一度でも収監されたが最期、その囚人が生きてきた証は全て消され、一生、何者でもない人生を歩ませ続けさせられる。そんな監獄の、何の変哲も無い場所に、何の理由もなく、無の悪魔はいた。
-
一度無を与えられた者が次に何に興味を示すのか、また何者かになろうとするのか、無の監獄での過ごす様を監視し続けるのは無の自立型ドライバ。蓄積されたデータは何者かに送られ、何かに利用されている。ただ、今は何もわからないままだった。
-
生きる理由を持つことが罪とされた無の監獄で、罪を犯してしまった囚人は、無のドラゴンにより再び無に帰されていた。監獄の銀竜そのものに意味はなく、第三者がいて初めて、その存在に意味が生まれた。ただ、その意味すらも、意味はなかった。
-
幽霊を見た。無の囚人達は口を揃えてそう言った。目撃された時間は決まって丑三つ時、足のない少女、あどけない顔、何もない監獄に現れた幽霊。ただ迷い込んで来た無心のその少女の霊にとって、この何もない第六監獄は居心地が良かった。
-
監獄からの脱獄者はひとりもいなかった。脱獄に成功したという事実はひとつも残っていなかった。そう、全てを無かった事に出来たのは、監獄の出口に待ち受ける無の成竜がいたから。無の連鎖を終わらせるには、無を超えるしかない。