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アーサーたちは警備局と現場が重なることが多々あった。そんな重なった現場にいた警備局員の中にヒルダがいた。誰よりも文句を並べながら、誰よりも働いていたヒルダ。アーサーの瞳には、どこかヒルダがひとりで戦っているように映ったのだった。
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アーサーへ臆することなく不満を口にしたヒルダ。あんたの部署の男ども、がさつ過ぎんの。あぁ、うちの自慢のクズ共だ。地位が上がるにつれ、イエスしか言わない存在が増えたアーサーにとっては心地よかった。オマエに、相応しい居場所がある。
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もう、あんたにはなにを言っても無駄なのね。そして、異動と共にケイのコードネームが与えられたヒルダ。口の悪さは相変わらずだが誰よりも丁寧に仕事をこなしていた。口の悪さによる喧嘩は一部ではあるものの、それすらも微笑ましい日常だった。
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また、ケイの悪口はいつも的を得ていた。鋭い洞察力と少しの思いやり、そして多くの自己主張が心の真ん中へと突き刺さる。君を選んだことに、間違いはなかった。そう、アーサーが求めていたのは、ただの上司と部下の関係ではなかったのだから。
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口を開けば食事の文句やマナーの文句ばかり。だが、そんないつものケイの悪口も、最後の晩餐へ色を添えていた。もう、あんたたちといると、本当に疲れるわ。まぁ、飽きないけどね。ケイは肯定した。この円卓こそが自分の居場所だったんだ、と。