いいか、よく聞け。不夜城の王の間、響き渡るのは聖魔王ヴラドの高らかな声。オレはオマエらを裏切った。その事実を変えることは出来ない。だが、オマエらはこうして、再びオレを信じてくれた。だから、オレはオマエらを信じる。もう、ひとりで背負い込んだりはしない。だからどうか、このオレについて来てくれ。
それじゃあ、始めよっか。魔界の真焔隊はみな、刀を構える。どっからでもかかってきて。対するは、杖を構えた天界の真晴隊。うん、こっちからいくよ。天界、魔界の合同演習。すべては、来るべき日の為に。そして、誰よりもこの演習を楽しみにしていたのは、真焔隊を率いた大将、真焔魔将ヒメヅルだった。
これで少しはゆっくり出来そうね。少し透けた天蓋の奥のふたつの影。互いに舐め合うのは聖戦により生まれた傷跡。いまだけは痛みさえも愛せるわ。甘い甘いふたりの時間。跨った真蒼魔将ムラサメとその妹、ふたりはそんな時間を永遠のものにする為に、来るべき日の為に、最後の愛の確かめ合いをするのだった。
俺さ、お前らのこと忘れないよ。聖戦に吹き荒れた風が止んだとき、そこを訪れたのは風通神だった。おい、勝手に殺さないでくれよ。冷静な反論。っていうか、どこに座ってんだよ。風通神が腰をかけていたのは、傷だらけの体だった。うわ、クッションが生き返った。こうして、真嵐魔将ヤスツナは生まれたのだった。
鳴り響いた銃声、そして弾丸が打ちぬいた光刑者の胸。覚悟を貫くことが出来ず、友の手を汚し、友を失った。僕は、変わらなきゃいけない。二度と立ち止まらない為に、真閃魔将ライキリは鍛練を重ねるのだった。そんな彼を見守る二つの影。いいのかな、顔を見せなくて。いいんだ、オレのことは黙っておいてくれ。
いつまでも、一緒にいましょう。少し透けた天蓋の奥のふたつの影。互いに舐め合うのは聖戦により生まれた傷跡。いまだけは痛みさえも愛せるわ。甘い甘いふたりの時間。跨られた真妖魔将ムラマサとその姉、ふたりはそんな時間を永遠のものにする為に、来るべき日の為に、最後の愛の確かめ合いをするのだった。
そろそろ、来るころだと思ってたぜ。赤く染まる滝に打たれていた真絶魔将ナキリの元を訪れた無刑者は両膝をついていた。そんな姿、見たくねぇって。そして、言い渡された破門。これでテメェを縛るもんはなくなった。だから、テメェはテメェの道に生きろ。握手を交わさずとも、そこには確かに愛が存在していた。
オマエはいつだって、優しすぎるんだ。だって、せっかくのプレゼントなんだから着てあげないと。これのどこがプレゼントだよ、ただの嫌がらせだろう。それでも、プレゼントには変わりないからさ。平行線の会話、だが、それも平和な証拠だった。
これで、良かったんだ。ヒスイはひとり、固く結ばれた王と王の右手と左手を、女王と女王の右手と左手を見つめていた。聖戦の終結。そして、新しく生まれた共に歩む道。その道の先には、未来へと進む神々の後姿が浮かび上がっていたのだった。