心地よい波の音。いい香りだ。注がれた葡萄ジュース。やっぱ夏はリゾートだな。イッテツは夏休みを満喫していた。ガチャリ。あれれ、だったらどうして、ここは涼しいのかな。ピ。止められたエアコン。カチャ。止められた波の音。バサ。剥がされた砂浜のカーテン。夏休みごっこを終わらせたのは、光妖精王だった。
目の前に作られた砂のお城。いつかは波にさらわれ、崩れちゃうんですよね。スピカは少し寂しそうな笑顔を浮かべた。私へのあてつけかしら。闇魔女王が浮かべる退屈な表情。ち、違います。これは、女王様に壊して欲しいんです。だから今日だけは、普通の女の子でいてください。それが魔界の最後の夏休みだった。
あーぁ、むかつく。そんな苛立ちを夜の海に溶かしていたモルガン。っていうかさ、アンタなんで帰らないわけ。私は彼を殺す、それは今も変わってないから。ふーん、そう。そんな二人きりの時間に訪れた人影。だったら、オレと手を組まないか。そこには大剣を携えた男が。随分と懐かしいものを持ってるじゃないの。