少女は幼き日々を、どうしても思い出すことが出来なかった。忘れたくても忘れられない思い出。思い出したくても思い出せない思い出。だけど、私は知りたい。知ったうえで、どうするかを決める。それがユカリの想いだった。ねぇ、教えて。私は誰。あなたは誰。それは夜の夢のもう一人の少女への問いかけだった。
これから、いっぱい思い出をつくりましょうね。少女は笑いかける。だから、ほら。少女は少年の銀色の前髪をポケットから取り出したピンで止めた。新しいの、あげるね。それは聖なる夜の贈り物。それじゃあ、こっち向いて。あの日の私、少女エリザベートが覗いたレンズの向こう側、そこにはあの日の二人がいた。
クリスマスイブの夜、それは冷たい雪がくれた暖かな出会い。少年達はいつも一緒だった。沢山遊んで、沢山笑った。沢山喧嘩して、沢山笑った。そして、いつしか少年達は大人になり、別々の道を歩き始める。これは、そんな少年達の永遠の思い出。少年アーサーと少年サンタクローズ、あの日の僕らがそこにはいた。
夜は優しかった。それは一日の終わりだから。それは心落ち着くから。全てが正解であり、不正解だった。なぜ、夜は優しいのか。それは大好きだったあの子と過ごす時間だったから。例え記憶からは忘れ去られても、心からは忘れ去られていなかった。
私はね、きっとあの二人の間には入れないの。それは少女だったから。でもね、こうして眺めているのも好きなんだ。優しい瞳に映る二人。だから、私はこれでいい。あの二人が喜べば、それは私の喜びでもあるから。少女はずっと二人を見守っていた。
美少女ユカリは12位という結果に驚きを隠せずにいた。なぜ、こんなにも。彼女が求めていたのは、たった一人からの、たった一票だけだった。もしかして。そう、集まった票は全部、みんながその一票の代わりにと、思いを込めて投票した票だった。
美少女ヴィヴィアンは7位という結果に満足していた。うん、やっぱり7っていう数字は素晴らしいねっ。だって、私は永遠の17歳だし。だが、そんな喜ぶ彼女を白い目で見つめる青年が隣にいた。そういうのさ、恥ずかしいから止めてくんねーかな。
美少女クロウリーは5位という結果に不満をこぼしていた。別に興味はないが、なぜ私が1位じゃない。そんな少女の元に、温かなミルクの注がれたマグカップを持った女性が。教祖様は、私の1位ですよ。クロウリーは大きな胸に沈んだのだった。
キミの為の王都に、ようやく民が辿りついたみたいだよ。ロキは堕王に語りかける。ねぇ、彼らはキミに縋りたいみたい。だからさ、キミはもっとボクに縋ってくれていいんだ。さぁ、みせてあげよう、大いなる希望を。そして、キミはただ選べばいい。
アカネとレオラが辿り着いた王都ティンタジェル。それは常界の廃棄地区に存在していた。これはまやかしです。その場所に王都があるはずはなかった。だが、確かに存在していた。そして、閉ざされていた王都への入口。だったら、こじ開けりゃいい。
入口に突き刺さった無数のドライバ。こじ開けられた入口。アカネとレオラは顔を見合わせ、そして同時に振り返る。プレゼントを届けに来た。そこに立っていたのはサンタクローズだった。アカネとレオラが浮かべた笑顔。取り返そう、俺達の王様を。
私は嘘をついていた。ミレンは隊員達に告げる。聖王の奪還、それはきっと彼は望んじゃいない。だからこれは代理としてじゃなく、副官としての命令なの。だが、そんなことなど全員気付いていた。さぁ、行きましょう。私達の王様は、彼しかいない。
メビウスは足元で大破しているヨトゥンを見つめながら呟いた。今のあなたなら、きっと大丈夫。見送った一体の機体。直後、現れたのは無数の評議会警備局員。あなたを拘束します。だが、メビウスは満足げな笑みを浮かべた。希望が、聞こえるよ。