なぜ、お前がここに。それは一筋の光。約束を忘れてしまったのですか。南従者が浮かべる優しい微笑み。なぜだと、聞いているんだ。その微笑みの返事にと、流れたのは大粒の涙。真っ暗な地下宝物庫で果された再会。そしてパイモンは、小さな体をそっと抱き寄せる。ずっと側にいるって、約束したじゃありませんか。
みんながね、どうしても行きたいって言うんだ。それは、言葉ではなく、心の声だった。誰かが監視カメラを壊してくれたおかげで助かったよ。牢屋の扉が開かれると共に、響き渡る竜の咆哮。救出された竜界の姫は、少し複雑な表情を浮かべていた。
聞こえてきた竜の咆哮、それは脱出の合図だった。それでも退こうとはしないアリトン。これは、僕の任務だから。だが、そんなアリトンに差し出された兄の掌。一緒に逃げよう、君は彼女の分まで生きなきゃいけない。それだけは、君が留める罪だよ。
その言葉で活気を取り戻したのは旧魔王二人だった。聞こえた竜の咆哮。チビを抱えて逃げろ。オリナ達とすれ違う人影。ここは俺達が食い止める。旧北魔王は銃声を響かせる。だから、あんたが迎えに行きなさい。旧東魔王は人影を見送ったのだった。
グリモア教団本部全域に轟く竜の咆哮。それは炎となり、辺りを紅く包み込む。もうじき、ここも崩れるだろう。その咆哮は、あらかじめ決められていた脱出の合図。私達はもう、今の時代に必要ないんだ。紅く染まる言葉。だから、共に眠るとしよう。