私ってば、天才。道化嬢が施した装飾、とある兄弟物語に出てくる鎧を纏ったブリキは完成の白煙を上げた。すぐ隣、眠そうに欠伸を浮かべた道化獣と、何も言わず、ただお茶を注ぐ道化魔。そんな光景を眺めながら、道化犬を抱きかかえた道化竜は楽しそうに微笑んでいた。一つ屋根の下、そこには家族の幸せがあった。
それはいつかの休日、温かな午後のひと時。オズが家族と共に訪れたのは、緑の生い茂る公園。澄み渡った青空の下、広げられた色とりどりのお弁当。さぁ、今日は家族サービスです。種族の異なる六体の家族は、言葉は交わせずとも、気持ちを交わしあっていた。そして、気が付けば、まどろみへと落ちていたのだった。
ここはどこなの、私は誰。ドロシーはまどろみの中、必死に走り回る。あなたは、今日からドロシーです。それは、いつかの出会い。再び巡り合った六人は、家族という絆で結ばれ、安らかな寝顔を浮かべていた。きっと離れていても、家族は家族です。二度と会えなくても、家族だったことに変わりはありませんから。
真教祖の討伐、囚われた姫の奪還、奪われた鞘の奪還、それぞれの目的の為、本館に集った者達は再び、散り散りとなった。そして、誰もいなくなった本館へ、北館からの通路を通り現れた人影もまた、自らの目的の為に、動き出していたのだった。
きっとここにも、沢山の想いが集まっているんだね。友達の弟の言葉を頼りに、地下牢への道をひたすらに走るミドリ。だが、そんな彼女の行く手を塞ぐように現れたのは堕風才だった。こうして会うのは、初めてね。でも、初めて会った気がしないよ。
これは、僕の戦いだから。刀を構えたアリトン。だったら、これは僕の戦いでもあるから。傷ついた体で刀を構えたアオト。目的は違えど、想いの交差する蒼き兄弟。そして、そんな二人に切りかかる堕水才と水波神。再び、初恋が始まろうとしていた。
オリナとライルは、鞘が格納されているという地下宝物庫への道を急いでいた。ちゃんと走りなさいって。遠慮しないオリナ。うっせーな。強がるライル。そして、そんな二人が気にしていたのは、鞘だけではなく、行方不明の一人の仲間のことだった。
教団本部地下祭壇へ向かうノアの表情は、いつにもなく硬かった。きっと、これが最後なんだろうな。そして、行く手を阻む二人の水の魔物。ここから先へは、行かせない。だったら、僕が相手をするよ。ノアの背後、教団の裏切り者は姿を現した。
たまには、こうやって過ごすのも悪くないですね。道化竜は青空の下、芝生に体を預けていた。そのすぐ近くには、温かなひと時を過ごす無数の家族が。そして、そんな家族達を見渡し、道化竜がぽつりとこぼした言葉。僕達は家族になれたでしょうか。
今日の風は、なんだか気持ちがいいわ。道化嬢は、嫌いだったはずの風を全身で受け止めていた。みんなが一緒だからかしら。見つめた先は温かな家族達。そして、そんな風に乗せた独り言。どうか今日だけは、風に消えないで。届けてね。ごめんね。