黄金色の昼下がりに、おいでなさいませ不思議の国へ。自立型ドライバ【チェシャ】が刻む時間さえ忘れさせるお茶会。スペードのスプーンにクラブのカップ、ハートのクッキーにダイヤのシュガー、女子の嗜みは世界共通。跡継ぎ問題なんて、角砂糖と一緒に溶けちゃえばいいのに。アリスは午後の紅茶に手を伸ばした。
青いドレスに身を包み、青い瞳を輝かし、青い春を終えたばかりの、青の女王はカップへと手を伸ばす。走る緊張、静寂の間。【チェシャ・クロノ】の刻む秒針だけが王広間に鳴り響く。審判の日へと、集結した不思議の国の全兵力は思い出にふけ、家族を想い、最期の覚悟を胸へ問う。そう、アリスの紅茶が空く前に。
黄金色の昼下がりに、迷い込んだワンダーランド、一面氷の世界を抜けた先に待っていたのは青き城。覚悟を決めた全兵力、その力の使い道を誤らせない為にも、青い春を終えたばかりの青の女王が、最後の紅茶を飲み干すその前に。
崩れ落ちた砂上の楼閣を見下ろす旧教祖。そして、再び集った四人の従者は、それぞれの想いで思い出に手を振る。私達は、不完全な世界に生きるんだ。風になびく金色の髪。さぁ、ここからもう一度始めよう。そこには、黄金の夜明けが訪れていた。
ファティマの元に届けられた報告書には、グリモア教団本部の崩壊が記されていた。その報告内容は詳しく、旧教祖、旧魔王の離反、さらには真教祖の目覚めまでもが記されていた。そして、報告書の作成者として水波神の名前が記されていたのだった。
なんだ、みんな楽しそうじゃないか。お兄様には、是非これを。シオンがどこからか手に入れたのは在りし日の魔王の正装。お兄様のご友人も、ご招待させていただきましたよ。どこからともなく取り出された棺から、聞こえたのは優しい寝息だった。