魔界<ヘリスティア>の深い黒の森の中心に聳え立つ御城に席を構えた赤の王女、アカズキン。使役するのは自立型ドライバ【ヴォルフ】。思春期の少女は願っていた。そう、普通でいたいと。繰り返されるありきたりな、だけど楽しい日常。しかし、そんな彼女の日常は、審判の日が近づくにつれ、崩れ去っていく。
666議会により、新たな王として選出されたアカズキン。賑いを見せる黒の森。きっとこの宴が最後の宴。そう、皆気付いていた。審判の日を阻止出来ない限り、選べる未来はないと。赤の女王は玉座で待っている。自分を超えてゆく、共に審判の日に立ち向かう人間を。ドライバの【ヴォルフ・シザー】と共に。
魔界に位置した黒の森の奥深く、人知れずそびえ建った赤き城がみせた賑わい。それは新たな赤の女王が666議会により選出されたから。さぁ、生まれたばかりの赤の女王を、共に審判へと抗う仲間へと。女王は玉座でその時を待っている。
遠く離れた丘の上から、崩れる教団本部を見守るミドリ達。そして、いつの間にか鳴き止んでいた竜の咆哮。そういう、ことなのね。ただ、悲しい瞳で見守る永久竜。見届けてやれよ。ミドリ達のすぐ横には竜神がいた。見届けたら、俺について来い。
崩れ落ちる教団本部を背に、蒼き兄弟は約束を交わした。僕はこれからも、アオトとして生き続ける。それは弟の自由の為に。僕はこれからも、アリトンとして生き続ける。それは罪を償う為に。僕はもう、戻れない。だから行くよ。さよなら、兄さん。
傷だらけの仲間を抱えながら教団本部を脱出したオリナ達は、教団本部が崩れ行く様をただ見つめていた。果たせなかった任務を、悔いてる暇なんてないぜ。その裏側、既に他の隊員達は動き始めていた。夜明けが昇るのは、いったいどっちなんだろう。
鳴り止んだ竜の咆哮、いつまでも燃え盛る炎が照らし出したのは夜明け。この日、グリモア教団本部は全壊した。そして、一夜明けようとも、五夜明けようとも、十夜明けようとも、古竜王ノアと、従えた道化の火竜が竜界の玉座に戻ることはなかった。
みなみまおーは、ずっといっしょにいてくれますか。それは、幼き日に交わした何気ない約束。だが、少女は幾つ歳を重ねようと、その約束を忘れることはなかった。そして、そんな約束を交わした相手もまた、二人の約束を忘れることはなかった。
ヨウキヒに届いたのは悲しいけれど、嬉しい知らせ。そっか、彼女は元気だったんだね。聖戦の裏側でディバインゲートの解放を阻止し、そしてそのまま姿を消したラプラス。大丈夫だよ、いつ帰ってきても大丈夫なように、これからも守り続けるから。
この勝負預けておくぜ、ベイベ。終わりを告げた風の戦い。ふたりの将の言葉を理解できるものはいない。だが、ふたりの実力は、その場の全員が認めていた。そして、その場の全員が思っていたこと。それは、ふたりとも残念な将だということだった。