知ってるよ、完全世界なんて存在しないって。ぶつかり合う風と風。だけど、私はあの子を信じた。あの子の目は真っ直ぐだった。私は、完全が欲しかった。そう言ってもらえるだけで嬉しかった。溢れる本心。心安らげる居場所を求めて、何が悪いの。
こんなの、聞いてねーよ。あはは。左足に突き刺さる極楽竜の槍。勝ちだ。右足を打ち抜いた北魔王の弾丸。オレ、格好悪ぃ。崩れ落ちるライル。だが、そんな傷だらけの体を支えたのは火竜を連れた竜だった。人間にしては、なかなかやるみたいだな。
だけど、王様を追放したのはあなたたち自身じゃない。賞賛を浴びることなく、堕ちた妖精王。そうする以外に、方法がなかったの。あの日のヴィヴィアンはすべて気づいていた。オベロンが天界を愛し、そして天界の為に戦っていたということを。
だから、私達は嘘をついた。嘘をつき続けることで、彼の守りたかった平穏を守ってみせた。彼には、もうすべてを忘れて、ただ静かに生きて欲しかった。なのに、あなた達がまた彼を戦場へ連れ出した。だから私達が勝利を掴み、そして彼に平穏を。
繋がる過去と今。互いに否定するのは今。そして、肯定するのは過去。想いが交わることはなく、交わるのは刃ばかり。いくら血を流そうが、いくら骨が折れようが、一歩も引くことのないふたり。だが、ひとつだけふたりが共にする想いがあった。
それは、例え自分が今に散ろうとも、過去が肯定されるならそれでいい、と。あがる息と熱を持つ傷口。きっと、次が最後の一撃。みんな、未来の天界をよろしくね。そして、ヴィヴィアンが込めた最後の願い。だが、それを打ち砕いた一言。待てよっ。
私ね、いまとっても幸せだよ。ヒカリが弾くユカリの鎌。だって、こうしてユカリちゃんとぶつかり合うことが出来たから。ヒカリは自分が飾りであることに気がついていた。だけどね、いまの私は、誰がなんて言おうと、天界を守る女王なんだから。
くだらない話に付き合う気はないわ。ユカリの鎌がさらうヒカリの前髪。ただ私は女王の責任を果たすだけ。ユカリもまた、自分が飾りであることに気がついていた。だから、私は天界を壊す女王になるの。そして、その先の未来で私は―。