続く演説。そして、ここに、旅立たれた教祖様の残した一通の推薦状があります。教祖様の意志を継ぐ、真教祖様の名が記されているのです。全ては落日の後に。さぁ、みなさん、その目に、完全を焼き付けるのです。そして、日は沈み始めるのだった。
ライルと別れ、向った西館。入口で待っていたのは、ただ一人の教団員だった。連れて来ましたわ。流水獣が駆け寄ったのは優しい笑顔の水通者。安心して、私は君の敵じゃない。ただ、会わせたい人がいるの。そしてアオトは、無言で頷いたのだった。
行って来いよ、目を覚まさせたいんだろ。アオトを見送ったアスルは、一人で西館を進み始めた。辿り着いた大広間、待ち構えていた無数の教団員。いいか、オマエら、オレが全員ぶっ潰す。そして、振り上げた槌は、無数の心を打ち砕こうとしていた。
炎と炎は混ざり合い、空を茜色に染める。そうよ、あの日の出会いはこんな茜色の夕暮れだった。それはまだかつての聖戦が始まる前の出来事。ヘレネが語りかけるあの日の出会い。だから、それがどうしたっていうの。アカズキンの炎はより燃え盛る。
あのときだって、私達の日常を奪ったのはあなた達じゃない。かつての聖戦で侵略された魔界。そして、アカズキンの日常は奪われた。あのとき、私はすべてを失った。私の日常も、あなたと出会ったあの街も。だから私は、永遠の日常を取り戻すだけ。
キミたちは本当に浅はかだよ。アリスの猛攻に耐える一方のオノノコマチ。だが、そんな戦況を変える一太刀。なんで、キミがそこにいるのかな。体勢を崩したアリス。一瞬の隙を突いた小さな一太刀。それはアイスブランドの裏切りの一太刀だった。
さっさと殺しなさいよ。アリスの体を縛るオノノコマチの艶やかな水。それは出来ない。否定するオノノコマチ。やっぱ気に入らない、キミたちは。それでも止めをささないオノノコマチ。だって、私は約束したの。もう、誰も死んだらいけない、って。
起きているのか、眠っているのか。そのどちらに関わらず、イバラを守るように無数の蔦が覆う。あなたはいったい、なにがしたいっていうの。襲いかかる蔦をヨウキヒは問う。私はただ、眠りたいだけ眠りたいだけよ。それはただの寝言だった。
寝言は寝てからって、あなたにぴったりな言葉ね。そして寝言の会話は続く。だから私は、別に勝つことに興味はないの。だったら、いますぐ出ていきなさい。ヨウキヒの抗戦は続く。私達が出ていったら、そこに安らげる眠りは訪れるのかしら。