僕のことを捕まえてごらんよ。僕はみんなのモノだから。一番最初に捕まえた人のお願いを、何でも聞いてあげるよ。だから、ほら、早く僕を捕まえてよ。そんな平和な昼下がりを壊したのは一人の男だった。捕まえた。そう、彼を捕まえたのは想定外の男だった。言うこと、何でも聞くよ。そしてトニングは生まれた。
今の暮らしも、悪くはないね。偽光精トニングは、新しいもう一つの自我に飲み込まれないでいた。でもね、不思議なんだ。気がついたら羽が生えていた。やっぱり僕は妖精さんだったのかな。喜びの微笑み。あぁ、君は妖精だよ。そしてね、もう少しで完全な妖精になれるんだ。あはは、やった、やっと忘れられるよ。
反発する血には制裁を、受け入れる血には祝福を。そして次種族<セカンド>の運命は二つに別れる。どちらが幸せなのだろうか。それは人により、様々だろう。だが、それは自力で選ぶことが出来た時の話。そう、自由など、そこに存在しなかった。
『あぁ、俺こそが聖門学園の王だ。聖学のルールは俺が創る』 聖学の風紀を乱さんと、ついに「聖学の王」を名乗り始めたアーサー。そして『聖学バトルロワイヤル』の幕が開かれようとしていた。どよめきだす聖門学園。だが、そんなイベントは早速中止された。その理由には、彼の身近な二人の人間が関係していた。
『みんな、頑張ってね! 私は、みんなを応援するからね!』 聖学の一大イベントへ向け、チアリーディング部を設立したヴィヴィアン。聖学の全生徒を平等に扱う彼女だが、唯一、ひとりの生徒だけひいきしているとの噂が。そしてその噂の真相は、そのひいきされていると噂の生徒のお弁当を見れば一目瞭然だった。
まどろみの淵、そこにはパブロフと子供がいた。俺は俺の人生を生きた。あぁ、知ってる。だが、最後に言わせて欲しい。聞きたくない。子供はわかっていた。その言葉がなんなのか。俺の父さんは世界で一番格好いいんだ。だから、そんな言葉は聞きたくない。それでこそ、俺の自慢の息子だ。それじゃあ、行ってこい。
最後にまた会うことが出来て嬉しいよ。水溜りに手を伸ばしたロジン。映りこんでいたのは双子の顔。いつまでも、いつまでも見守っているよ。君たちがいたから、君たちがいる。そんなふたりを独り占めしてる、いまの私は幸せ者だね。だけど、私はもう行かなくちゃ。力いっぱいの笑顔。それじゃ、行ってらっしゃい。
私とあの人は同じ筆先から生まれた。あなたは、そんなあの人から生まれた。そして、ティターニアはいつかの言葉を否定する。あなたは「私の愛した人の娘」ではありません。あなたを「私の愛する娘」と呼ばせてください。子供の頬を伝う涙。子の旅立ちは、親にとって嬉しいことです。だから、行ってらっしゃい。
そこにはお揃いのストールがあった。暑すぎた日差しを遮る紫。冷たすぎた風を遮る紫。そして生まれた心地良いふたりだけの空間。もう、いいんだよ。私は後悔してないよ。ヴァルプルギスの声。それでも、ユカリは行くんだよね。小さな体が抱きしめたのはひと回り大きな体。ずっとだいすきだよ、行ってらっしゃい。
父は幼き息子を残し姿を消した。父は父の道を進んだ。そこに後悔はあっただろう。だが、そんな父を唯一肯定してあげられるのは他ならぬ息子ただひとりだった。決して過去を否定せず、イマを肯定し、未来を信じる。それが炎の親子の形だった。
これはお守りよ。まだ言葉すら話すことの出来ない幼子に渡されたドライバ。いつかきっと、導いてくれるから。託した願い。そして、その願いは呪いでもあった。そして、幼子は常界のとある夫婦へ。あなたが歩む道に、沢山の幸せがありますように。