失恋により家出をした友人は未だ行方不明だった。奴はもう死んでるようなものだからな。そんなことを言いつつも闇の美女は心配だった。最後に友人を目撃した人の話では、隣に仮面の男がいたと言う。間違った事にならなければ良いが。心配は続く。
まだまだ、こんなもんじゃないよ。オリナが振り回す二対の棍。私だって負けないんだから。ミドリが振り回す大きな棍。ふたりは戦いの中にいた。楽しそうにも見え、辛そうにも見える。ふたりとも、互いの感情を戦うことで上書きしていたのだった。
ミドリは葛藤していた。アーサーが世界の敵であること。そして、アーサーがミドリの大切な人たちの大切を壊している事実。私だって、アーサーさんを処刑したいわけじゃない。だけど、私たちが止めなきゃ、他に誰がアーサーさんを止められるの。
その言葉が聞けて安心したよ。だが、オリナは知っていた。アーサーのすぐ側で活動してきたからこそ、アーサーの処刑に意味があるということを。だからこそ、アーサーを渡したくはなかった。最後の力を振り絞ってでも、決して渡したくはなかった。
潮風が気持ちのいい極東国の南の離島。オリナは二対の棍を手に、真っ白な砂浜で汗を流していた。いい動きをしている。オリナに話かけたのは査察に来ていたアーサーだった。お兄さん、本島の人かな。これはこの島に伝わる伝統の武器と武術なんだ。
手合わせを頼めるか。アーサーの好奇心。別にいいけどさ、怪我しても知らないからね。純真無垢で迷いのないオリナの拳。そして、その拳を楽しそうに受けとめるアーサー。勝敗が決めたオリナの未来。外の世界には、こんなに強い人がいるんだね。
与えられたラモラックのコードネームと、新しい世界。ラモラックにとってはすべてが新鮮だった。自分よりも強い仲間たちと共に鍛練し、切磋琢磨する日々はラモラックに充実を与えた。そう、ラモラックにとって世界が広がり始めたのだった。