魔物でありながら天界にその身を置いたカルネアデスは聖光才として受け入れられていた。だが、それはごく一部の間でだけ。彼女は、敵だ。歪な平和が崩れた天界に蔓延る無数の雑言。そして彼女を傍に置くと決めた光妖精王に突きつけられたひとつの報告書。彼女は、眠りから醒めた一人の男と繋がっていたのだった。
今度は何の研究でしょうか。助手兎コガネはとある研究に興味津々だった。これは、幸せになる研究だぴょん。聖光才は瞳を輝かせていた。だが、いつも側にいた存在だからこそ感じた不安。その幸せに、所長は含まれているのでしょうか。そんな問いに、輝きは途切れた。誰かの幸せの材料はね、誰かの悲しみなんだよ。
私はただの被験体だったんです。そう、彼女は統合世界では珍しい獣種だった為、拘束されていたのだった。でも、所長はそんな私を一人の助手として受け入れてくれました。偶然の出会いは少女を救った。だから私は、いつまでも所長の側にいますね。
美宮殿の近く、新たに「幸せの白兎研究所」が設立された。誰が、こんなふざけた名前を。答えは明白。所長、お客さんがいらっしゃいました。呼びかける助手兎。すぐ行くぴょんっ。笑顔で答える所長。そう、この所長にして、この研究所ありだった。
幸せが平等じゃないのなら、せめて自分の幸せを願うのは、いけないことですか。それは誰しもが思う願い。幸せの定義は人それぞれだぴょん。他人の幸せを、自分の幸せだと思えるか。自分の幸せを、他人の悲しみだと思えるか。答えはそこにあった。
世界が幸せで包まれるのなら、それはとっても幸せなことだぴょん。それは、ある種の歪んだ感情。私は、所長の考えることがわかりません。だが、聖光才は笑顔で研究を進めていた。私は完全世界を否定した。いや、そこに完全なんてなかったんだよ。
聖光才の口から語られたのは、不完全な完全世界。だから私は、みんなを解放してあげるんだ。言葉ではなく行動で示す意思。それが幼き過ちとの決別なんだぴょん。無理に浮かべた笑顔の裏側の、悲しみの心。私はずっと、所長についていきますね。