自分が人間なのか、それとも機械なのか、既にイージスには判断がつかなかった。彼女にとって種族など第三者が差別する為に設けた記号でしかなく、彼女にとって大切なことは、まだ戦える、たったそれだけのことだった。戦い続けさえすれば、きっと守ることが出来る。彼女にはそこまでして、守りたいものがあった。
最期まで戦い抜いた彼女に与えられた六聖人の肩書き、風聖人イージスがそれを受け入れたのには理由があった。戦いの果てに失った君主、そしてその君主の名を未来永劫忘れられぬようにと願ったからだった。そして、その血筋に迫る脅威。貴方様の血を、汚させるわけにはいかない。彼女は誰の盾になるのだろうか。
鍛練を怠らないのは、守りたいものがあるから。では、鍛練をしない人は、守りたいものがないのだろうか。決して、そんなことはなかった。ただ、自分の体を犠牲にすることでしか、愛情を表現することの出来ない不器用な存在がイージスだったのだ。