クロウリーは言った。世界は完全であるべきだと。完全という言葉が何を意味しているのか、それは団員でさえも確証を得てはいなかった。ただ、その真っ直ぐな瞳が見つめる未来を見たい、見てみたい、そんな想いが集まっていたのだった。神に救いを求めよ。だが、そんな言葉を発した少女は、紛れも無く人間だった。
創られた神格は彼女を苦しめ続けていた。でもそれが、私という人格なのだから。教祖クロウリーが右を向けば右を向く。あぁ、なんて健気なんだろうか。そして込めた皮肉。完全世界など、夢のまた夢。終わらせるのも、また私の役目か。砂上の楼閣に気付かない、愚か者達め。彼女の苦しみに、気付く者はいなかった。
着替えごとき、一人で出来るといつも言っているだろう。朝から紅茶などいらん、水で十分だ。それは教祖にとっての当たり前の朝。だがそれを受け入れることは出来なかった。鳥籠の中の教祖は目を開けて夢を見る。砂上の楼閣がいつか崩れ去る夢を。