何でみな争うのかしら。オリエンスは疑問を抱いていた。魔界も天界も、仲良くすれば良いのに。妖精である彼女は優しさや厳しさの風に吹かれ育った。四人の風の妖精達はいつも一緒だった。ねぇ、あなたはどう思うの。語りかけたのは共に育った一人の天才。よく言うわね。視線の先、そこに囚われのある家族がいた。
そいつらを返してもらう。教団本部、単身で乗り込んだのは永久竜。満面の笑みを浮かべる東魔王オリエンス。コイツらにもう用はないの。乱暴に解放される四体。喋れないコイツらは、永遠にあの日のお父さんを待つのね、けひひ。怒りを隠せない永久竜、一触即発の状況を制止したのは世界評議会を抜けた風才だった。
その薄い唇で何度儚げな言葉を囁いただろうか。何度儚げな夢を浮かべただろうか。何度儚げな希望を紡いだだろうか。そしてその薄い唇で、何度儚げな言葉を塞いだだろうか。何度儚げな夢を壊しただろうか。何度儚げな希望を壊しただろうか。
来客だ。教祖は告げる。どうすんの。アマイモンは問う。殺さずに、連れて来い。彼はその意味が理解出来なかった。冗談は止めろ。多銃砲型ドライバ【ベルセルク】に詰める弾。ここは僕が。水通者と共に現れた西魔王。女連れがしゃしゃんなよ。向けた敵意。君には、特別な任務を与えよう。教祖は言葉と共に消えた。
道化竜の家族は解放された。だが、その裏には北魔王アマイモンが存在していた。手を上げてもらおうか。永久竜の背後、突きつけられた多銃砲型ドライバ【ベルセルク:ゴア】と、更にその背後に潜む無数の教団員。けひひ。笑顔を浮かべる東魔王。そいつらと、交換といこう。鳴り響く無数の銃砲。レッツ、ハッピー。
そこに無は存在していた。それは悲しみでも、幸せでもない感情。人は悲しみを感じるからこそ、幸せを感じることが出来る。だったら、多くの幸せは、多くの悲しみから生まれんじゃね。それが北魔王の持論であり、決して間違った理論ではなかった。