上位なる存在である神と竜が争っていたのは過去の話。だが、聖なる扉が開かれたことにより、それは昔話では済まなくなっていた。竜族を統治する古の竜王に、ごっこ遊びを続ける悪戯な神、繰り返されようとしている歴史。そして、一族を裏切り、神を呼び出した道化竜。トロンボの奏でる音色は誰へ届けられるのか。
少し探って欲しい組織があるんだ。炎奏竜トロンボにそう伝えたのは古の竜王だった。彼女が向かった先は、聖なる扉とは異なった場所だった。黄昏の審判のその裏側で動いていた一つの組織。それは統合の先の融合世界でもなく、再創世界でもなく、完全世界という、非常に曖昧でいて完全な世界を目指した組織だった。
フルトは古の竜王により、一人の人間の監視を命じられていた。人間でいながらも、悪魔であろうとした一人の人間。彼は身も心も悪魔に捧げ、そして西魔王の地位を手にしていた。何故彼を監視する必要があるのか、それは完全世界という曖昧な言葉の意味を探る為。黄昏の審判の裏側、何かが動き出そうとしていた。
水奏竜フルトが西魔王を監視するなかで知ったのはある教団の存在。東西南北に魔王を据え、完全世界を目指す組織。世界評議会の影に隠れ、目立たぬよう小国の権力者となり富を独占、歯向かう者へは無実の罪を。ある時は、アイドルという偶像崇拝による民の暴動を。そんな教団が表舞台へ立とうとしていたのだった。
古の竜王の命により、風を司る東魔王の素性を探っていたのはスネアだった。彼女が辿り着いたのは、世界評議会の影に隠れ、完全世界を目論む一つの教団。そして、彼女は一つの違和感に気がついた。教団員の集会日、そこには見覚えのある姿が。そう、評議会に属しているはずの、とある天才の姿があったのだった。
教団の調査を続けていた風奏竜スネアはとある場面に遭遇した。それは集会後の時間。なんで君が、こんな場所にいるのかな。気づいたのは天才。集会に訪れるのを知っていたかのようなタイミングで現れた道化魔。悪いけど、知られたからには消えてもらうよ。いつもとまるで雰囲気の違う天才の姿がそこにはあった。
聖なる扉が開かれ、世界は統合された。人間は常界で暮らし、妖精は天界で暮らし、悪魔は魔界で暮らしていた。では、竜族はどこからやって来たのだろうか。また、神はどこからやって来たのだろうか。古の竜の血を引くトランペは、統合世界の外側、竜界<ドラグティア>から神界<ラグナティア>を見つめていた。
竜界<ドラグティア>を飛び出した光奏竜トランペが向かった先は神界<ラグナティア>ではなく常界<テラスティア>だった。調査対象は完全世界を目指す一つの教団。その完全世界という不確かな言葉の意味を追いかけていた矢先、彼女の耳に届けられたのは、先輩にあたる文明竜達の予期せぬ全滅の知らせだった。
サクスに与えられた指令は、他の楽奏竜とは異なっていた。調査対象は教団ではなく、世界評議会に属する竜達。一族を裏切った道化竜と二体の人工竜、そして、それぞれ二体ずつ存在する混種族<ネクスト>と次種族<セカンド>の竜達。彼らは飼いならされたのか、それとも、飼いならされたフリをしているのか。
特務竜隊を追いかけ、聖なる扉へ。青年による文明竜の全滅と、主である竜王の降臨、そして堕ちた王の登場。特務竜隊はそんな主役達を取り囲み、攻撃姿勢をとりながらも、誰一人として攻撃をしようとしなかった。あの日闇奏竜サクスが感じた違和感、その正体に辿り着いた時、背後には半分の仮面の男が立っていた。
グロックが北魔王へ辿り着くのに、さほど時間は要さなかった。常界に生きる人間の価値観とは異なった言動、その全ては幸せに通じると悪魔は言う。そう魔王は言う。完全な世界とは、何だろうか。誰一人として、悲しむことのない、そんな世界なのだろうか。それとも、全ての人が幸せな、そんな世界なのだろうか。
グリモア教団に属し、波形を操る六波羅と呼ばれる人物の一人、トラングル。その正体は第四世代でありながら自律の心を持った第四世代自律兵器型ドライバだった。生まれた時から自律の心を持っていたのか、それとも後で植えつけられたのか、その答えを知るのは一人の天才であり、天才にしか成しえない所業だった。
グリモア教団には六波羅と呼ばれる六人の団員が存在していた。それを六人と呼ぶのが正しいかは定かではないが、便宜上、そう呼ばれていた。教団のシンボルとされた目は皆で完全世界を目指すという意味が込められており、炎波機トラングルも例外ではない。自律の心には、完全世界はどう捉われているのだろうか。
人と竜の次種族<セカンド>が存在するのであれば、悪魔と神の次種族<セカンド>も存在する。それは誰しもが考えられることであり、誰しもが考えたくないことであった。人が神に近づく、人が神の力を手にするというのは一体どういうことを意味するのか、それは六波羅であるサフェスの行動にあったのだった。
久しぶりだね。向き合った二人の男。一人は布で口元を隠し、一人はドライバで口元を隠していた。君は神に裏切られ、そして捨てられたんだよ。舞台は絶海の孤島。君が追いかけた初恋の続きをしようか、君の居場所はそこじゃない。続く言葉。さぁ、共に完全世界を目指そう。水波神サフェスは水才へと手を伸ばした。
なかなか悪くない出来ね。第四世代自立兵器型ドライバであるトラピゾイドに自律の心を、エレメンツハートを取り付けた天才は満足げな笑みを浮かべていた。笑ったその目は幸せそうに見え、また、悲しそうにも見えるのだった。そして浮遊する自律兵器を見て、天才は呟いた。あなたは、翼がなくても飛べるのね、と。
自律の心は考える。何故自分に心が与えられたのか。自律の心は悩む。何故自分に心が与えられたのか。自律の心は苦しむ。何故自分に心が与えられたのか。自律の心はやがて、考えることも、悩むことも、苦しむことも止めた。風波機トラピゾイドは自律の心に疑問を感じず、さも当たり前かの様に、風を集めていた。
悪魔と神の次種族<セカンド>であるサインは、ひとりぼんやり空を眺めていた。この空の向こうにあるのは、幸せな世界でしょうか、それとも悲しい世界でしょうか。それは子供の頃からよく聞かされていた言葉だった。私はいつまで、神のフリを続ければいいのでしょうか。それは、次種族<セカンド>の運命だった。
ぴょんぴょん、揺れるツインテール。お久しぶりです。光波神サインの目の前に現われたのは、幼い頃、一緒に遊んでくれた一人の悪魔だった。キミは辛くないのかぴょん。そう彼女は問いかける。もう、辛いという感情がわからなくなりました。その言葉に光の悪魔は答えをくれた。だったら、背けばいいんだぴょん。
次種族<セカンド>になることを望んだのか、それとも望まれたのか、人でありながら獣になることを望んだのか、それとも望まれたのか。目を覚ました時の彼女の満面の笑みをみれば、それはどちらも前者であることは一目瞭然だった。力を得たサトスが見つめた一枚の写真、そこには自分と同じ笑顔の闇の獣の姿が。
やっと同じ力を得ることが出来たわ。グリモア教団の力を借り、そして六波羅と呼ばれるまでに力をつけた闇波獣サトスは自由を手にした。やっとあなたに会えるわ。幾人からの話を頼りに向かった先は天界<セレスティア>の深い闇の洞窟。出迎えたのは解放された闇の妖精王、その隣、写真の獣は首輪を繋がれていた。
与えられた名前、引き換えに失った過去。場所はグリモア教団生態科学支部。沢山の視線を感じながら覚えた絶頂。おめでとう、次種族<セカンド>への改造実験は成功したよ。スクェアは目を覚ました。いや、正確には目を覚まされた。そして開かれたばかりの狂気に満ちた目、直後、辺りには血の海が広がっていた。
無波獣スクェアが訪れたのは破要塞<カタストロフ>だった。封鎖されたはずの要塞に灯った光。鍵のかかったドアをこじ開けた先、一体の自律兵器と天才が。それ、修理されちゃあ困るんだよね。力を解放しようとする獣。あなたの傷は、力に変わるから。そう、第五世代最狂の自律兵器が再び目を覚まそうとしていた。