美宮殿<コロッセオ>の寝室、ジュリエットは宝石の散りばめられたソファに腰をかけていた。あの方との約束、覚えているわよね。問いかけた先は妖精王。もちろん、わかっているわ。浮かべた不敵な微笑み。アナタが殺せないのなら、私が殺すわ。追い詰める一言。あの子だけは、私が。笑みを眉間のしわへと変えた。
光戯竜ジュリエットが手渡されたのは短剣型ドライバ【デッド・マキューシオ】だった。演じるだけの人生なんて、既に決められた未来が待っているだなんて。自ら首筋に当てた刃、閉じた瞳、次の瞬間、背後に聞こえた二種類の高い声。だったら、背けばいいんだぴょん。にんじん咥えた天才は、助手と共に現われた。
赤い月が昇った夜、ロメオは短剣型ドライバ【マキューシオ】を腰に携え、背の高い木の枝から女王の間を覗き込んでいた。その日不夜城に起きた一つの改革、新たな歴史の始まりの瞬間を見届けた彼は、そのまま魔界を後にした。だけど、そんな彼は自分に数多の銃口が向けられていたことに、気が付いてはいなかった。
無戯獣ロメオに手渡されたのは仮死毒ではなく、嘘偽りの無い本物の毒だった。もう、演じるだけの人生には疲れたよ、どうせ私は彼女と結ばれない運命なんだ。自らが生まれた理由に気付き嘆く無戯獣ロメオ。君はどう思うんだい。それは、たった一人の名前を永遠に呼び続ける虚ろな目をした一人の青年に向けられた。