幼き少女が手にした羽筆型ドライバ【ハサウェイ】が書き綴ったのは、数多の悲劇だった。綴られた戯曲は現実となり、対象へと襲い掛かる。誰がこの少女に書かせたのか、それとも自発的に書いたのか、どちらにせよ、シェイクスピアと呼ばれた少女は笑顔で悲劇を書き綴っていた。そう、それが喜劇であるかのように。
上手に書けたね。少女の頭を撫でたのは仮面を外した一人の男。戯曲は楽しいだろう。風戯者シェイクスピアは笑顔で答える。一度裏切った者は二度裏切る、だから彼も今のうちに殺してしまおうか。少女には意味がわからなかった。もう少しだけ今の世界を手のひらで見ていたくなってね。男は再び仮面に手を伸ばした。