人の姿をしながらも黒い翼を持ち、頭に獣耳を生やした。左肩に見えるのは「000」の三文字。そう、それは次種族<セカンド>のプロトタイプを意味する三文字。手にした手袋型ドライバ【ソロウ】が壊すのは、自らが生まれた悲しみか、それとも、この世界に対する悲しみか。今、閉じていた翼は広がる。
お迎えありがとう。上品な声が聞こえてきたのは遥か彼方の刻の狭間。天上獣がお迎えに上がったのはたった一人の神様だった。さぁ、行こうか。差し出される【ソロウ:セカンド】、観測者を乗せた風は変わり始めてしまった未来の行方を目指す。彼らに背負わせるには荷が重過ぎる。大きな時は、動き始めた。
夢幻の駅が聖なる出口行きであるのなら、この無限の駅は聖なる入口行きであろう。限られた無の力、そして、そんな聖なる入口へと向かう夜汽車を走らせるのは、ノアの一族ではなく、天上から舞い降りた1人の、いや、1体の獣だった。