一途な想いは淡い恋。今はまだつぼみ、花咲くことない叶わぬ願い。薄れゆく希望に、悲痛な顔を浮かべたプチモネ。開かれた扉により、出会えたふたり。始まった審判により、引き離されたふたり。それでも彼女は胸に誓った。いつまでも、あなたを愛すから、と。二度と出会うことのない、緋色の瞳をした最愛の人を。
叶った願いは、彼女に迷いを与えた。向けられた銃口、もう、あの頃には帰れないふたり。再び出会わなければ、素敵な思い出のままでいられたのに。淡い恋は、悲恋へと、その痛みが、ひとりの少女をアネモネへ。緋色の瞳は、真っ赤に咲き誇った花を見つめ、そして、ふたりの関係に、サヨナラを告げようとしていた。
図太そうに見えて繊細なプチゼツランは、いつも悩んでいた。もっとおしとやかでいられたら、あの子みたいにみんなが振り向いてくれるのに。羨みの対象は四つ葉のクローバーを追いかけていた風の妖精。優しさの風よりも、厳しさの風を吹かせる彼女は、自分の持って生まれた力の意味がわからず、花開かずにいた。
天界に忍び寄る魔の手、それは空へと落とされたひとりの悲劇の妖精の悪意。次々と力を失う仲間達を前に、花開く時を迎えたリュウゼツラン。一度咲いたが最後、それが最期になると知りながら吹かせた厳しさの風は、多くの命を救った。厳しさが、本当の意味での優しさだと知った時、彼女はもう、目を閉じていた。
天界<セレスティア>の海岸線、彼女はそっと、耳打ちをした。彼女にとって、それはちょっとした悪戯。だけど、それはひとりの天才の心に穴を空けてしまうほどの悪戯。時に、愛は憎しみへと変わる。まだ、花開くことのない妖精プチオラは、すれ違ってしまった恋によりもたらされる災いを、知る由もなかった。
男女のすれ違いが、こんなことになるなんて。天界<セレスティア>へと向けられた悪意を前に、自らの悪戯を精算すべく、常界<テラスティア>の闇才の元へと急いだのは、少しだけ大人になった花の妖精ビオラ。彼女は自らの悪戯を悔み、そして、大人の男女の恋のすれ違いによる恐ろしさを、この時初めて知った。