みなみまおーは、ずっといっしょにいてくれますか。それは、幼き日に交わした何気ない約束。だが、少女は幾つ歳を重ねようと、その約束を忘れることはなかった。そして、そんな約束を交わした相手もまた、二人の約束を忘れることはなかった。
なぜ、お前がここに。それは一筋の光。約束を忘れてしまったのですか。南従者が浮かべる優しい微笑み。なぜだと、聞いているんだ。その微笑みの返事にと、流れたのは大粒の涙。真っ暗な地下宝物庫で果された再会。そしてパイモンは、小さな体をそっと抱き寄せる。ずっと側にいるって、約束したじゃありませんか。
南館からの侵入者は、再び旧教祖の手を引いた。そこには旧教祖と旧南魔王という関係ではなく、一人の少女と南従者という関係が存在していた。さぁ、ここから抜け出しましょう。そして、この日、旧教祖は本当の意味での外の世界を知ったのだった。
私はもう、教祖ではないのだ。旧教祖は涙ながらに訴える。ええ、存じております。だから私は、南魔王ではなく、南従者なのです。そして、私だけではなく、きっと彼らも同じはずです。二人は崩れ行く教団を眺めながら、かつての三人を待っていた。
教団を後にした旧東魔王の後ろ、ふと姿を現した堕風才。全部知ってたのね。口を閉ざしたままの堕風才。今更、ごめんなさいだなんて聞きたくない。遮られた言葉。私とあなたは、選んだ居場所が違った、それだけの話よ。いつかまた、会いましょう。
兄に別れを告げた旧西魔王は流水獣の待つ浜辺へ。そこで待っていたのは、流水獣だけではなかった。もう一人の待ち人を抱きかかえ、そっと海へ。さよなら。水面に浮かぶ体。最高の現世はまだ終わらないよ。そして、繋いだ手は解かれたのだった。
旧北魔王は左腕に残った傷跡に、もう一筋の傷を足した。これで、お別れだ。そして首輪に手を伸ばし、自らの手でベルトを締めた。これは服従の証なんかじゃない、忠誠の証だ。これから始まる未来、振られた尻尾は、振り止むことを忘れていた。
ほら、見てください。南従者の一声は、旧教祖の視線を誘導するに十分だった。西から男が一人、北から男が一人、東から女が一人、装いを新たにした三人が、再び一つの場所へと集まろうとしていたのだった。そしてほら、もうじき、夜が明けますよ。
崩れ落ちた砂上の楼閣を見下ろす旧教祖。そして、再び集った四人の従者は、それぞれの想いで思い出に手を振る。私達は、不完全な世界に生きるんだ。風になびく金色の髪。さぁ、ここからもう一度始めよう。そこには、黄金の夜明けが訪れていた。