審判の日へと向け、世界評議会の指示により開発された世界で唯一のワンオフ機、自立兵器型ドライバ【サラマンダー】の出現は常界<テラスティア>を恐怖へと陥れた。どんな軍事兵器も凌ぐその圧倒的な破壊力が人々へ向けられたら。そしてその本当の力が、今はまだ制限されている事実に気付く者はごく僅かだった。
発動されたバーストモード、何者かに外されたリミッター。【サラマンダー:バースト】は自制を忘れ、全てを焼き尽くす。恐れていた事態、常界<テラスティア>への脅威へと成り代わった破壊力。最悪の事態こそ、黄昏の審判の始まりに過ぎなかったことに気付いたのは、神の悪戯を目撃出来た者だけだった。
水中戦に特化した第五世代のワンオフ機、自立兵器型ドライバ【リヴァイアサン】の開発には海洋生物学者までもが参加した。サメの遺伝子構造がプログラムされ、攻撃的な人工知能を持ち、最も補食に適したフォルムを有している。今はただ、その攻撃性能が常界<テラスティア>へと向かないよう、祈るばかり。
外されたリミッター、バーストモードの発動、暴走した【リヴァイアサン:バースト】はどこまでも深く潜り続ける。その目的地が魔界<ヘリスティア>であるとわかり、安堵をこぼす人間達と総攻撃を開始する悪魔達。始まろうとする黄昏の審判、それは統合世界<ユナイティリア>全てを巻き込んだ戦争となる。
自立兵器型ドライバ【ヨルムンガルド】が踏み鳴らす常界<テラスティア>の大地。量産型自立式ドライバ数千体に匹敵するとも言われる世界で唯一の機体は希望の象徴であり、また恐怖の対象にもなった。ゆっくりと、だけど確実に進み出す足、その行き先が、向かう先が、約束された未来ではないことを人々は願った。
その歩みを止めることのないリミッターが解除された【ヨルムンガルド:バースト】。発動されたバーストモード、希望の象徴は一瞬にして絶望の象徴へと成り代わり、辺りを巻き込み、被害を増やしながら、約束された未来へ向かい出した。始まろうとする黄昏の審判の影で笑う、悪戯な神の手のひらの上で。
その長い身体をくねらせて、空から地上を監視する自立兵器型ドライバ【ファーブニル】は、世界評議会に名を連ねた絶対的ボスが君臨する理想郷<アヴァロン>のすぐ側で待機していた。異常事態が起こればすぐ現場へと、送り届ける為に。ただ、この待機自体が既に異常事態だということに気付く者は少なかった。
急降下を始めた【ファーブニル:バースト】の背中に絶対的ボスの姿はなかった。悪戯に外されたリミッター、暴走した光の力は全てを浄化せんと魔界<ヘリスティア>へ。異常事態は常界<テラスティア>だけでなく、この統合世界<ユナイティリア>全土を巻き込んだ戦争へ。そう、全ては黄昏の審判の序章。
【ニーズヘッグ】は旧約聖書に刻まれた黄昏を生き延びたと言われる魔界の蛇の名を冠した唯一無二の自立兵器型ドライバ。全ては黄昏の審判へと向けて、審判の日を無事に乗り越える為に世界評議会により開発が進められた。何故ここまでの兵器を、その真意を知る者は監査会以外には現存しない。
各地で突如暴走を始めた自立兵器型ドライバと時を同じくして、解除されたリミッター、【ニーズヘッグ:バースト】は天界<セレスティア>へと羽ばたいた。解き放たれた闇の力に、恐怖に怯え、混乱する精霊達。発動されたバーストモードは人間だけでなく、統合世界<ユナイティリア>全ての脅威となった。
古来より無限の象徴である【ウロボロス】の名が与えられた自立兵器型ドライバ。名前に込められた想い、それが何を意味するのか、始まりがなければ、終わりも存在しない。破壊と再生の歴史を辿ってきた世界の行く末は、黄昏の審判による破壊の未来か、聖なる出口<ディバインゲート>による再生の未来か。
穏やかな天界<セレスティア>に突如として出現した脅威、リミッターの解除された【ウロボロス:バースト】が始める暴走。そして繰り返される破壊、いつかは訪れるであろう再生、発動されたバーストモードは無限の、終わりでも、始まりでもない、黄昏の審判の、終わりの始まりのトリガーとなった。