なぜ、そんなに悲しい瞳をしているんだい。教団本部の研究室、堕風才に問いかけたのは執事竜だった。君らしくないじゃない。だが、一向に返事はなかった。黙っていたって、わからないよ。そして、ようやく返ってきた返答。私にその女を受け入れろと言いたいのね。黙って頷くそのすぐ横に、サマエルは立っていた。
これはね、僕と君との秘密の約束だよ。だが、頷かない堕風才。だったら、君の居場所はないよ。それは約束ではなく、一方的な脅迫。東魔王サマエル、彼女こそ四大魔王に相応しい。悲しい瞳は、深みを増した。翼をもがれ、手足まで縛られる気分はどうだい。それでも、堕風才は悲しい笑顔を浮かべていた。けひひ。
私達に、居場所なんてなかった。歪な平和が生んだ犠牲。だから私達は、居場所を求めた。妖精の涙をさらう風。やがて見つけた居場所。なんで、私達なのかな。誰も教えてはくれなかった。そんな居場所さえ、新しい風はさらおうとしていたのだった。