世界評議会の施設である訓練場から、一匹の竜が姿を消した。鳴り響くサイレン、下りたシャッター、だが、極楽竜ジョーイを止められる者はいなかった。あはは、あはははは。夜の街に響き渡る楽しげな笑い声。あはは、あはははは。加速する竜の血は止められない。竜なんかよりも、よっぽど楽しい人間がいたじゃん。
なぜ、あのとき彼らは攻撃をしなかったのか。その答えは簡単だった。どうせ、世界は変わらない。だが、そんな世界に疑問を持つ一人の竜は考えた。だったら、楽しんだもの勝ちじゃん。だから彼は一人、動き出した。もっと、楽しませてくれるよね。
極楽竜が引きずり出したのは、首筋に埋め込まれた生体管理チップだった。だって、見つかったらやっかいだもん。あの時、あの場所、一人の人間は竜に立ち向かっていた。僕はね、あの光景を忘れることが出来ないんだ。だから、今度は僕も混ぜてよ。
あそこに行けば、もう一度彼に出会うことが出来るよ。そう、それは悪魔の囁きだった。だから極楽竜は施設を抜け出した。これで、まずは一匹の竜が消えてくれたね。悪魔の囁き、それは人であり、竜である男の囁き。すべては、屠竜者の描く未来へ。
どんなことして、楽しもうかな。極楽竜の頭の中は、彼への興味でいっぱいだった。殴り合いがいいかな、駆けっことかどうだろう、少しならお話してもいいかもね。だが、最後の行き着く答えは一つだった。でも、やっぱり、殺し合いが一番だよね。
知ってるよ、この匂い、知ってるよ。極楽竜は興奮していた。あの時のだよ、血が染みた、あの時の匂いだよ。極楽竜は興奮を抑えられなかった。さぁ、早く、もっと、早く。始めようよ、僕達の楽しいことを。極楽竜は興奮を解き放とうとしていた。