桜が咲く時、それは何かが始まる時、出会いの時。だが、桜が咲く時、それは何かが終わる時、お別れの時でもあった。始まりがあるから、終わりがあるのか。終わりがあるから、始まりがあるのか。今日もまた出会いと別れは繰り返されるのだった。
極東国<ジャポネシア>には、とある言い伝えがあった。一年中枯れることなく咲き続ける桜の下には、桜の神様の死体が眠っていると。そして、そんな神様は、春になるとその桜の木の枝に座り、行き交う人々を羨ましそうに眺めているのだと。まったく、勝手に人の死体を埋めないで欲しいわ。サクヤは笑ってみせた。
舞い散る桜。だが、再び花開く桜。そう、一年中枯れることのない桜。別に、春にだけ咲くわけじゃないのにね。そう、桜花神サクヤはその桜から一年中、行き交う人々を眺めていたのだった。あれ、あの子は確か。桜の下、おめかしをした猫の様な子と、不機嫌な顔の少年がいた。悪い、やっぱり俺、我慢出来ねぇわ。