-
あなたのよく知る、あの子だよ。ドロシーたちの背中へ近づく足音。まさか、あの子っていうのは……。ハムの瞳には近づく足音の正体が映し出されていた。そして、その正体の手には、一冊の分厚い本が握られていた。辿り着いたっていうの……!?
-
それじゃあ、先に行ってるね。ドロシーはその足音の正体を確認することなく、奥へと歩き始めた。そして、足音の正体はハムの正面で立ち止まる。久しぶりね。言葉を発した足音の正体。やっぱり、私に会いたくなかったのかしら。ねぇ、お母さん。
-
何年ぶりだろうか、何十年ぶりだろうか、何百年ぶりだろうか。果たされた再会。大きくなったじゃない。顔をあげたハム、瞳に映し出されたカナン。この竜界に、あなたの居場所はない。だけど、居場所は作れるの。それを、あの人は教えてくれた。
-
それじゃあ、行ってくるね。ハムへと向けられたお別れの言葉。決して振り返ることのないカナン。そして、カナンを呼び止めることの出来ないハム。そう、ハムはただ下を向き、後悔の涙を流していたから。それもまた、ひとつの家族の形だった。
-
お待たせ。ドロシーたちの横に並んだカナン。ドロシーはブリキに抱えられ、少し高い位置からありがとうを伝えた。ううん、お礼を言うのは私のほう。私じゃ、最奥を見つけることは出来なかった。そんなふたりの瞳には、希望だけが満ち溢れていた。