かつて、聖王アーサーという存在は間違いなく世界の中心に存在していた。だが、その心はその世界には存在しているようで、存在していなかった。創醒の聖者が世界そのものを形創るのだとしたら、アーサーが形創ろうとしていたのは、世界の外側。
理の外側、そう、唯一の世界の外側の存在であるアーサー。彼が成すべきこと。それは世界の外側から、世界の理に干渉すること。すなわち、世界の内側を司る聖なる扉への干渉。消滅。いまの俺なら、それが出来るだろう。そう、俺は成すべきことを。
かつて、堕ちし王が選んだ神への道。それは決して絶望の道ではなく、希望の道だった。やはり、この世界にディバインゲートなんて必要ないんだ。だからこそ、俺がこの繰り返された崩壊と再生の歴史に終止符を打とう。イマを生きる命をかけて。
入口が存在するから出口が存在するかのように、内側が存在したからこそ存在した外側。ならば、私は君を喰らうことで、完璧な存在になれるのだろう。そして、俺はその言葉をそのまま返させてもらう。そう、共にひとつになろう。聖なる扉として―。
アカネたちが辿り着いた王の間への入口。重い扉から溢れ出した金色の瘴気。そう、この奥にアーサーがいる。意を決して開かれた扉。置かれていた玉座。たった「ひとり」の人影。ようこそ、聖なる扉の間へ。君たちを歓迎しよう、そう―この私が。