神に選ばれた獣と、神に捨てられた獣。俺が正しいということを、その身をもって教えてやろう。翼を広げたグライフは、一直線にグリュプスの許へ。そして、その体ごと地面へと叩き潰されるグリュプス。なにが正しいか、オマエが決める話じゃない。
咆哮と共にグライフを押しのけたグリュプス。あぁ、オレは失敗作かもしれない。いいや、失敗作だ。そう、刻一刻と蝕まれるグリュプスの体。オレのこの悲しみは、オマエにはわからないだろうなぁ。そして、悲しみこそが、グリュプスの秘策だった。
口答えをするな。そう、グリュプスの翼をもぐなど、グライフにとっては造作もなかった。だが、次の瞬間、赤黒い翼が生まれた。続いてもがれた腕。だが、次の瞬間、赤黒い腕が生まれた。そしてグリュプスは笑う。ここがどこだか、忘れたのか。
そう、もがれたグリュプスの体を補っていたのは無数の憎悪たち。ここのみんなは、どうやらオレの悲しみに気づいたようだ。そして、グライフの顔は歪み始める。きっと、オレはこのまま飲み込まれるだろう。だが、それはそれで幸せってもんだ。
失敗作のグリュプスを理解者として認めた憎悪たち。教えてやるよ、セカンドの悲しみを。化け物と化したグリュプス、その圧倒的な力に飲み込まれたグライフ。終わる戦い。色々、ありがとな。そしてグリュプスは自らの生に終わりを与えたのだった。
憎悪を取り込んだ扉の君。ダンテの合図を待たずして飛び掛ったフォルテ。だが、いくらフォルテが実力者であれ、いまの扉の君は人間が敵うような相手ではなかった。だからこそ、フォルテが語りだした自分のこと。俺、明日が誕生日だったんだよね。
ダンテの手を煩わせまいと、すべての攻撃をその身で受け続けるフォルテ。俺の26年間、結構楽しかったな。そしてフォルテは願う。どうせ死ぬのなら、あと1日生きたかった。常界のポップスター、27歳で死去。俺は歴史に名を残せるのにさ。
フォルテの右腕の炎は消えかかっていた。刹那、フォルテを襲う闇の波動。そんな簡単に諦める男を、俺は使徒に選んだ覚えはない。波動とフォルテの間、割って入ったのはダンテ。共に奏でよう、俺たちの狂想曲を。教えてやろう、最高の二重奏を。
ダンテが振るうレイピアは、まるで指揮棒のよう。勢いを取り戻したフォルテ。そしてレイピアを振るうたびに、一音、一節ずつ変わり始める戦況。壊れるトリオと壊れる光の翼と闇の翼。そうだ、叩き込んでやれ。フォルテの炎拳は、残された本体へ。
消えていく扉の君。横たわったふたり。約束、覚えているか。問うフォルテ。なんの話だ。誤魔化すダンテ。だが、しばらくしてダンテは言葉を続けた。俺はきっと、羨ましかっただけなんだ。天国でも地獄でもない、イマを自由に生きるアイツらが。